7・30 RIZIN 堀口が1RKOで所を粉砕

堀口(右)のストレートが所を襲う(撮影・小黒冴夏)

堀口は優勝宣言「自分が優勝しないとRIZINが盛り上がらない」
「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017 バンタム級トーナメント 1st ROUND -夏の陣-」(7月30日、さいたまスーパーアリーナ)のメーンで同トーナメン1回戦、堀口恭司vs所英男が行われ、堀口が1R1分49秒、レフェリーストップによるTKOで勝利を収めた。

 カード発表時、衝撃を持って受け止められた2人の対戦。タイトルに挑戦するなどUFCで最も成功した日本人ファイターの堀口、片や所は2005年のHERO’Sでメジャー戦線に躍り出て以降、日本の総合格闘技界で重要なピースであり続けてきた。

 戦う場も違えば階級も違う。今まで交わることのなかった2人の対戦が今年、堀口がRIZINに電撃参戦したことから実現した。

 26歳の堀口に、若い若いと思われていた所ももう39歳。所はRIZINでは才賀紀左衛門、山本アーセンといった若い選手の前に立ちはだかり、常に“世代交代”というワードとともに戦いを展開。勝つことで自らの存在価値を高めてきた。

 今回、RIZIN側から1回戦での堀口戦をオファーされた時に、10年来、所のセコンドを務める勝村修一朗をはじめ周囲は反対した。しかし所は熟慮の末、対戦を決意。それは「グランプリに挑戦するのはこれで最後。そのグランプリで今一番強い選手に挑戦したい」という考えのもとの決断だった。

 会見で所自身が「100人いたら99人が堀口が勝つと思っていると思う」というように下馬評では堀口が圧倒的に有利。しかし「その1回をここに持っていきたい。自分ならそれができるはず」という所の言葉に「そういえば、所ってそういう選手だったよな」と思い返したファンも多かったはず。

所をKOし、堀口は勝利の雄叫び(撮影・小黒冴夏)

所は進退について「まだちょっと分かんない」
 所はこれまで格上のファイターに果敢に挑み、負けてはいけない試合で負けても最後の最後に取り返し、日本の格闘技界で生き残ってきた。その中で練習仲間だった宮下トモヤ、ZSTでしのぎを削ったレミギウス・モリカビュチスといった選手たちが鬼籍に入り、所は彼らを念頭に「格闘技を長くやっていると、頑張る理由がいっぱい出てきて、なかなかやめられない」と話す。

 この日、オープニングの入場式では所はモリカビュチスのタオルを掲げた。勝村、ZSTフライ級王者の伊藤盛一郎らと並び、モリカビュチスもチームメートの一人なのだ。

 そこからメーンまでは長い時間が開く。その間、勝村のツイッターではリラックスした表情の所の姿がアップされていた。

 そして試合の時がやってくる。ともに種類は違えど多くの修羅場をくぐってきた男たち。入場する所の表情は何か吹っ切れたような、気負いのないもの。一方の堀口は自信に満ちた、こちらも平常心を思わせる落ち着いた表情だ。

 試合は堀口の打撃vs所の寝技というのが大方の見方。ゴングが鳴るとプレッシャーをかけて前に出る堀口。所は足を使って交わすや右フックで反撃する。独特の遠い間合いからパンチを打ち込む堀口をさばく所が堀口の前蹴りに左フックを出したところで、堀口がカウンターの右フック。ダウンした所は昨年大晦日のアーセン戦を思わせる蹴り上げを狙うが、堀口のスピードが上回りパウンド。所は本能的に足を取りにいくが、堀口が構わずパウンドを落とし続けたところでレフェリーが試合を止めた。

 堀口は試合後、リングで「今日はメーンの仕事ができましたかね? 久しぶりにKOしたんで。RIZINのトーナメント、優勝するので期待していてください」と優勝宣言。会見でも「しっかり優勝しないとRIZINが盛り上がっていかないので優勝します」と改めて語った。試合については「(試合前の)プランだともっと組み付いてくると思っていた。でも、打撃に付き合ってくれてありがたいなというのと、プレッシャーかけて、パンチで仕留めるというシナリオを書いていたんで、その通りに動けた」と振り返った。

 所は堀口について「本当に強かった」と語り、試合については「自分が打って返そうとしたところを食らっちゃったんで、見えてなかったですね。自分の攻撃に夢中になってしまったというか。圧倒的にやられてしまいました。強かったです。悔しくないと言ったら嘘になりますけど、あまりにも強すぎて。試合が決まってから2カ月必死に練習できて、凄いきつかったけど楽しかった。だから、堀口選手に感謝している。やれてよかった」と振り返った。

 また今後について問われると「ちょっと近々、そういう方向でっていう感じですかね。まあ、まだちょっと分かんないです(笑)」と話した。

石橋(右)は無念の逆転負け(撮影・小黒冴夏)

逆転負けの石橋「続けたい気持ちと辞めたい気持ちが半々」
 トーナメントはこの日「石橋佳大vsカリッド・タハ」「大塚隆史vsアンソニー・バーチャック」の2試合も行われた。石橋は現修斗環太平洋フェザー級王者、大塚は現DEEPバンタム級王者と団体を背負っての参戦となったが、タハと大塚が勝利を収め、年末のFinal Roundに駒を進めた。

 石橋は左インローから組み付くと難なくテイクダウンに成功し上のポジションを取る。強引に立つタハだが、組み付いたままの石橋は再度テイクダウンに成功するやマウントを取ってパウンド。バックマウントに移行しスリーパーホールドを狙うが、タハは石橋の腕をキープし極めさせない。残り2分を切り、石橋は下から左腕を十字固めに取りにいくが、タハは立ち上がり腕を抜いて、長い劣勢から脱出。スタンドの攻防に戻り、打撃戦となるがタハのフックで石橋がダウン。タックルに行った石橋にタハがヒザ蹴りの連発からパウンドのラッシュ。石橋が失神し、1R4分52秒、レフェリーストップによるTKOでタハが勝利を収めた。

 石橋は試合後の会見で「今回、修斗代表として負けてしまったので、修斗のほうにも、今まで修斗で試合をしてきた人にも申し訳ないなという感じですし、これからのことは分からないです。続けたい気持ちと辞めたい気持ちが半々。もともと自分は一度格闘技から身を引いたようなものなんで、1回1回負けたら終わりだという覚悟でやって来たつもり。実際負けてみて、ちょっと自分の覚悟に嘘がないなというのを実感している。とりあえず今は終わったばかりなので整理はついてない」などと話した。

大塚(右)がきわどい判定をものにした(撮影・小黒冴夏)

DEEP王者の大塚は消耗戦をしのぎ勝つ
 大塚vsバーチャックは3R判定にもつれ込み2-1とジャッジが割れたものの大塚が勝利を収めた。大塚は1Rこそバーチャックのパンチとミドルキックからタックルでテイクダウンを許すなどやや押されたが、2Rは終盤にややスタミナの切れたバーチャックに右ストレートを連発。テイクダウンにも成功し盛り返す。3R、大塚はパンチからタックルでテイクダウンを狙うがはっきりしたポイントはなかなか奪えない。しかしバーチャックは防戦一方で大塚が消耗戦をしのぎ勝った。

 大塚は試合後の会見で「自分のいつもの試合というか、自分が勝つのならこれしかないというパターンだった。向こうがすごく疲れていて、自分が押してるかなというのはあった。あとは気持ち。前に出ていたんで、それが印象になったのかな」と振り返った。

トーナメントへの参戦を表明した石渡

パンクラス王者・石渡が参戦表明
 トーナメントは10月15日に開催されるRIZIN福岡大会で3試合が行われ、ワイルドカードの2名を加えた8人で年末にFinal Roundが行われる。この大塚の試合後にバンタム級キング・オブ・パンクラス王者の石渡伸太郎がリングに上がり、10月大会への参戦を表明した。

 石渡は2013年に「VTJ 2 nd」で堀口と対戦し、5RTKO負けを喫したが、白熱の好勝負を繰り広げ、2014年にはDEEPのリングで大塚にも勝利を収めている実力者。年末まで勝ち上がれば興味深いカードが実現することになりそうだ。