東出昌大 × 窪田正孝 × 小松菜奈 Special Interview

 人気漫画家・福満しげゆきの代表作「生活【完全版】」を『花宵道中』『森山中教習所』の豊島圭介監督が実写映画化した話題作がいよいよ公開。ヒーローチームを結成することになった個性の強すぎるヘタレたちを演じた、東出昌大、窪田正孝、小松菜奈が、劇中さながらのチームワークで本作の撮影秘話を語る!
東出昌大 ヘアメイク・勇見勝彦(THYMON Inc.)スタイリスト・檜垣健太郎(little friends)/窪田正孝 ヘアメイク・糟谷美紀 スタイリスト・大石 裕介(DerGLAN Z)衣装協力・シャツコート:Manual Alphabet(1万4800円/M・K SQUARE)、カットソー:TIGRE BROCANTE(8000円/092-761-7666)、パンツ:WACKO MARIA(2万円/PARADISE TOKYO/03-5708-5277)/小松菜奈 ヘアメイク・吉田 佳奈子(mod's hair) スタイリスト・飯田珠緒/撮影・神谷渚
 今もヒーローチームの絆は健在

 さびれた地方都市・堂堂市。サラリーマンをリストラされ、コンビニでバイトしながらうだつの上がらない日々を送っていたフリーター中津は、あるとき“格闘マニア”の下着泥棒・土志田と出会う。その身体能力を見込み、中津は土志田と組んで街の悪に制裁を下すヒーローチームを結成。やがて“計画マニア”の女子高生カオリ、“カナヅチマニア”の通称・おじさんもメンバーに加わり、謎のヒーロー“吊るし魔”として活動するのだが…。

 ヘタレなキャラクターたちが、それぞれのマニアックさを生かし街の“悪”に戦いを挑むという本作で、見事なヘタレ&マニアを演じた3人。


東出昌大(以下:東出)「以前にも豊島監督とはドラマでご一緒させていただいたことがあったので、豊島監督とまたできるなら、ぜひやらせていただきたい、と最初に思いました。役どころについても、僕が演じる中津は本当にサエないフリーターなんですけど、こういう“ヘタレ”役を演じることがこれまであまり無かったですし、コメディー作品ということもあってすごく楽しめるんじゃないかな、と。撮影に入るのが楽しみでしたね」

窪田正孝(以下:窪田)「僕も豊島監督とご一緒するのは今回が2回目なんですけど、また新しい役どころで新たな挑戦をさせてもらえるな、という気持ちでした。僕が演じる土志田はニートの下着泥棒なんですけど(笑)、台本を読んだら土志田だけじゃなくみんなが変人でマニアックで、変人の基準がぼやけてくるんですよね。その、ある意味すっとんでる感じが爽快でした」

小松菜奈(以下:小松)「私もこれまでコメディー作品に出させていただいたことが無かったので、お話を頂いたとき、すごく楽しみだなと思いました。それに、豊島監督や共演の皆さんが一緒にお仕事をしてみたいと思っていた方ばかりだったので、すごくうれしくて、撮影が楽しみでした」
撮影・神谷渚
 今回共演してみて、お互いの印象は?

東出「窪田くんの作品を見ていて、寂しげな表情がすごく印象的だったんですよね。そういう表情や色気みたいなものをこんなふうに出せる役者が同年代にどれだけいるだろう、と思っていました。繊細な役が似合うというのは本人もそういうところがあるのかなと思っていたんですけど、実際は、もっと硬派でしたね。撮影中、窪田くんにも言ったんですけど、職人っぽいね、と。もちろん柔和な面もあるんですけど、すごく男らしいというか筋の通ってる人だな、と思っていました。小松さんは『渇き。』で世間に衝撃を与えましたけど、僕自身もすごく衝撃で、どえらい女優さんだな、と思っていたので、まさかこういう役で共演できるとは(笑)。小松さんは今回、カオリを通していろいろな表情を見せてくれるんですけど、改めて、すごく幅のある天性の女優さんだと思いましたね」

窪田「僕は、東出さんの雑誌の写真なども拝見していて、そこから来る印象としてモノトーンのイメージがあったんですけど、実際はいろんなカラーを持っている気さくな人でした。現場でもよくお話ししましたし、ご飯も一緒に行ったり。陽気で明るい方なので、その明るさで現場を引っ張ってくれていました。小松さんは、作品を拝見していて、不思議ちゃん、というか、独自の世界観を持っている女優さん、という印象がありました。小松さんが演じるカオリは、三つ編みをして眼鏡をかけると普通に高校生にしか見えないのに、突然大人の表情を見せたりする。もしかして僕より年上かなと思うくらい(笑)。かと思えばケラケラとよく笑うし。ちょっと謎なところが、すごく魅力を感じさせる女優さんだな、と」

小松「私も、窪田さんのお芝居をドラマや映画で拝見していて、繊細な演技に引きつけられていました。今回、その演技を間近で拝見させていただいたんですが、窪田さんは普段は変人なのに…」

窪田「フツーに変人なんです」

小松「…なんですけど(笑)、役に入ると圧倒されますね。どんな作品でもそうなんですけど、窪田さんの演技は思わず見入っちゃいます。ここまでガラリと変わるというのも、本当にすごいと思います。実際に会ってみたら、変なところもあるけど話しやすいし、いい人でした(笑)」

窪田「変人が、さらに変人になっただけということですね」
小松「東出さんは、すごく天然です」
東出「よしよし、話を聞こうか(笑)」

小松「(笑)。普段は、気配りもすごいし真面目だし、すべてのことに全力に挑む方。純粋でまっすぐな方だなと思いました。でも、現場でお話をしているときも人の話を聞いているようで聞いていなくて、会話にならないことがあるんですよ(笑)。この間は肯定してくれたことを、次は否定されたり。あれ、この間は味方してくれたのに…って」

東出「全然心当たりが無いなあ(笑)」

小松「マイペースなんですよね」

東出「28年生きてきて、自分で天然だと思ったことは無いんだけど(笑)。でも2人もけっこう変なところはあるよね。小松さんは朝から焼き肉を食べられますとか言うし、窪田くんは“そんなに肉ばかり食べてたら肉出さない”と焼き肉店の人に言われるくらい肉ばかり食べるし。一方で片岡さんは3000年前のインドの気功法について現場でとうとうと語ってくださったり。みんなどこかしら変態性を持っていたと思います。そのなかで僕が一番マトモだと思うんですけど(笑)」
撮影・神谷渚
現場では、すぐに打ち解けあったという。

窪田「小松さんは東出さんのことを“お兄ちゃん”とか“でー兄(にい)”って呼んでたよね」
小松「最初、東出さんに、なんと呼べばいいですかと伺ったときに“デニーロ”と、おっしゃったんですよ」
東出「全然覚えてない! なんでだろ、僕にデニーロ要素なんか一つもないけど(笑)」
小松「それで、でー兄とお呼びすることにしたんです」
東出「へーえ(と、他人事のように)」
窪田「こういうところが天然といわれるゆえんですね」
小松「窪田さんのことは…」
窪田「まったく名前を呼ばれたことがないです」
小松「クボクボ、という案を出したらセンス無いなって否定されたから(笑)」

 ヘタレなのにヒーローという役作り


 これまで見せたことの無いような、それぞれの衝撃演技も必見だ。

窪田「カオリが“ママのおっぱいでも吸ってろ!”と啖呵を切る場面はすごく好きですね。女優・小松菜奈史上に残る場面じゃないですか」

小松「最初、カオリはけっこう不思議な人物だなと思っていたんですけど台本に、そのセリフが書かれているのを見たときに“よっしゃ!”と思いました(笑)。そのシーンを撮影するのが楽しみでしたね」

窪田「あれがアドリブだったらそれこそ歴史に残るよ(笑)」

 そう言う窪田は、盗んだ下着を嗅ぐというアドリブ演技をしたとか。

窪田「…はい(笑)。確かにあれは僕のアドリブでしたけど、監督もなかなかだと思いますよ。部屋のセットとして置いてある土志田の下着コレクションは、一つひとつ包装されているんです。監督のマニアックさが現れていると思います」
東出「僕も小松さんのあのシーンが好きです(笑)。同じ人物かと思うくらい、いろいろな小松さんを見ることができる作品でもあるので、そこも楽しんでもらえると思いますね」

小松「私はチームみんなで買い物をしているシーンが好きです。撮影をしているときもすごく楽しかったんです。セリフのない場面だったので、みんな好きなように話しながら、自由に楽しんで撮影していて、チームだな、という実感が持てました」

 東出も、初めてのヘタレ役を楽しんだようだ。

東出「中津は履歴書の懲罰欄の部分を一度は書くけど修正テープで消してしまっているという話を監督から聞き、自分のことを認めきれていない一方でいろいろなことにイライラしている人物だなと思いました。また、修正テープで消すというズボラさも、なんとも至らない人物だな、という感じがしましたね(笑)。久しぶりに贅沢して刺し身を食べても、汚い部屋でパックのまま食べたりして全然おいしそうじゃない。中津の部屋での撮影も多かったので、その部屋に寝っころがって、汚ねえなあとか思いながら、もんもんとした感じを楽しむというか、しみこませようと思っていました」

窪田「僕の場合はいかに女性のお尻を見るか、ですかね。カオリが中津の家に来たときの場面では、土下座しながらも、どうにかしてカオリの足を見ようとしたり。あのときは、どのシーンよりも眼力を意識しました(笑)。アクションでは、ワイヤーアクションをするのは初めてだったんですが、信頼しているアクションチームについてもらっていたので、なんでもやるつもりでいました。台本では1~2ページほどのバトルシーンが、どんどん膨らんでいったんですよ。飛んだり跳ねたりいろいろ大変でしたけど、楽しかったです。格闘シーンで見せるストイックさと、ニートの下着泥棒という変人ぶりのギャップが土志田らしさだと思います。いや、何に対してもストイックなんでしょうね。お尻の見方一つにしても(笑)」

小松「私は監督と、カオリは(『ルパン三世』の)峰不二子みたいな感じがいいねというお話をしていて、それを意識しました。カオリもチームのメンバーだけど、計算高いところがあるというか。中津たちのことも、ちょっと小馬鹿にしながら見ているので、そういう眼差しも意識して演じていました」

 ちなみに自分のヘタレな部分は?

東出「自分に甘いところ(笑)。例えば、トレーニングの後に走ろうと思っていたのに、ジムから帰ってきて犬たちに迎えられると、そのままソファに転がって犬たちと遊んじゃったりします(笑)」

窪田「ぼくは…虫全般がすごく苦手なんです。一番は“G”ですね。奴らとは戦えないです。自分ひとりのときに遭遇したら、まず逃げます。部屋に出たときは、2時間ベランダに出ていました(笑)」

小松「私はけっこう緊張するタイプなんです。なるべく顔に出さないようにはしているんですけど、撮影前になるといつも、現場になじめるかなとか、お芝居もまだまだ下手だしできるかな、なんてあれこれ考え込んでしまうんです。でも現場に入ると毎回、スタッフさんや共演の役者さんたちと夢中で頑張って、結果的に楽しかった、と思うんですけどね。そういうところを早く直して、最初から最後まで楽しめるようになれればいいんですけど(笑)」
撮影・神谷渚
3人とってのヒーローとは?

窪田「僕は、子供のころからずっと変わらず1つ上の兄がヒーローなんです。1つしか違わないのに、偉大な人なので。超えたいとは思いますけど、なかなか越えられないですね」

小松「私も、ずっと変わらず母です。2人で旅行に行ったりもするんですけど、会うとよくケンカするんです。常に反抗期みたいな感じで(笑)。でも、なぜか元気がないときにちょうど電話がかかってきたりするんですよね。それで他愛のない話をしていると元気をもらえる。心の支えになってる。お母さんってやっぱり強いな、すごいなと思います」

東出「子供のころはサイレンススズカという競走馬が僕のヒーローでしたね。最初はそこまで走る馬じゃなかったんですけど、すごい快進撃を続けて、当時の僕にとってヒーローとなっていました。今、僕にとってヒーローは、コンビニの店員さんに“ありがとうございます”と言われたらちゃんとお礼を返すとか、電車で席を譲るとか、本当に些細な事でも、濁ったモノを浄化できる人。中津も、これからはそうなるんじゃないかなと思います」

 ヘタレな彼らを見ているうちに、自分の中のヒーローが目覚めるかも!(THL・秋吉布由子)
©福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア−生活−」製作委員会
『ヒーローマニア−生活−』

監督:豊島圭介 出演:東出昌大、窪田正孝、小松菜奈、山崎静代(南海キャンディーズ)、船越英一郎、片岡鶴太郎他/1時間49分/東映、日活配給/5月7日より全国公開http://heromania.jphttp://heromania.jp