シッティングバレーボール 座ったままでバレーボール

 子どもたちが夢や目標を持つためのきっかけづくりを目指す『夢の課外授業』の特別版『CHALLENGED SPORTS 夢の課外授業』(主催:CHALLENGED SPORTS 夢の課外授業プロジェクト実行委員会)が2月23日、千代田区立昌平小学校で行われた。真野嘉久シッティングバレーボール女子日本代表監督、竹田賢仁選手、高砂進選手、齊藤洋子選手、長田まみ子選手が講師を務め、全校生徒が人気上昇中のこの競技に挑戦した。
講師を中心に輪になってオーバーパスの練習。大きな声でカウント!
「1、2、3、4、ゴオッ〜!」。体育館中にカウントの声が響き渡る。子供たちが挑戦しているのは、座った状態で行うシッティングバレーボールの基本、オーバーパスを練習するためのパスゲーム。制限時間のうちに最大何回続けることができるかを競う。手をうまく使って体を前後左右に動かしてボールを追いかけ、他のチームメイトへボールをつなぐ。ゲームをコントロールするのは、日本を代表する選手たちだ。円の中心にポジションを取り、想定外の方向や勢いで飛んでいくボールの下に、ささっと入ってレシーブしたり、高くパスを上げ、何事もなかったようにパスの回数を増やしていく。選手たちの動きは素早く的確で、どんな難しいボールも受け取りやすい動きに変えてしまう。気づくとカウントは「94、95、96…」と記録更新も目前の三桁へと迫ったが、97でストップ。「キャーッ!」「あ〜っ、惜しいっ!」。周りで応援する児童たちも残念な表情を見せた。ゲームを始める前、講師が「気持ちを込めてパスすると続きます」といった、その言葉通りになった。

 この日の特別授業は、日本のシッティングバレーボールを代表する面々が講師を務めた。シドニーパラリンピックで全日本男子のコーチ、アテネパラリンピックで同監督を務め、現在は日本パラバレーボール協会会長と全日本女子チームの監督を兼任し、チームを北京パラリンピック初出場へと導いた真野監督、そして第一線で活躍する選手。監督の親しみのある口調や、選手が義足をぐるぐると回して見せるなどユーモラスな自己紹介に、児童たちは一気に親しみを持ったようだった。

 授業は、とにかく自分自身で体験し、挑めるスタイル。講師も児童も一緒になって、コーチの掛け声に合わせて、体育館の床におしりを付けたままで前後左右に動く基本動作を練習。さらに児童たちを代表して6年生が、パス、試合など実際にボールを使ってのシッティングバレーボールに挑戦した。試合は6年生が2つのチームに分かれての全員参加。コートは児童たちで埋め尽くされて身動きも取れず、動かなくてもボールには触れられる状態での試合だ。何度ボールに触ってもいいという特別ルールを導入したにもかかわらず、ボールはお互いのチームを行ったり来たりで、ラリーを続けて最後に気持ちよく得点するという流れにはなかなかつながらない。児童たちは、競技の難しさと先生たちの技術のすごさを改めて体感したようだった。

 シッティングバレーボールの選手たちと昌平小学校の先生たちの対戦試合も行われた。昌平小学校チームには、この日、特別ゲストとして参加した元Jリーガーの水内猛さん、元バレーボール選手の高橋みゆきさんも参加。スピード感と迫力のある展開で、水内さんも高橋さんも試合にのめり込んだ。水内さんに至っては得意の足技が出るほどだった。児童たちはボールを真剣に追う自分たちの先生を見て、声をあげて喜んだ。もちろん、試合はこの日の講師を務めた選手たちが勝利した。

 授業のはじめ、シッティングバレーボールは、競技を知っている児童は一桁に過ぎず、車いすバスケットボールや車いすテニスと比べ、関心度も高いとはいえなかったが、わずか数時間の特別授業で全校児童が夢中になった。パスゲームや試合に参加した児童たちは「初めてシッティングバレーボールをしたのですが、立ってやるバレーボールよりも大変だなと思いました。ついつい腰をあげちゃったりする」「使う体の部分が違うので、今とっても腕が痛いです」と、にっこり。「立ってやるのよりも楽しかったです。普段の体育の授業でやってみたいです」と前のめりだった。ユニークで親しみのあるトークで盛り上げた真野監督が「2020年のパラリンピック、応援に来てくれますか?」と尋ねると、あちらこちらで元気よく手が上がった。

 真野監督によれば、競技への興味は日々大きくなっているという。今回の特別授業のような学校訪問のオファーが増えており、「もっと子供たちにシッティングバレーボールに触れてほしい」と話す。

「シッティングバレーボールは、障害を持つ人も持たない人も一緒に楽しくプレーできるスポーツです。高齢化社会を迎えるうえでは座ってもできるシッティングバレーボールはご老人でもできます。人との接触もなくできるので日本人に合っていると思います」と真野監督は話した。

『CHALLENGED SPORTS 夢の課外授業』では今後も、さまざまなパラスポーツを広める活動に協力していく。
元Jリーガーの水内猛さん、元バレーボール選手の高橋みゆきさんも参加