【インタビュー】俳優・村上虹郎「稽古は苦しいし、いら立つこともある。でも、そこが面白い」

 2014年、映画『2つ目の窓』(河瀨直美監督)で主演デビューした村上虹郎。その圧倒的な存在感で、その後も映画やドラマなどで活躍、数々の賞を受賞してきた。演技派俳優として映像だけではなく、舞台にも挑戦すると、さらにその才能を開花。9月には、所属事務所の俳優陣が出演する映画『AMY SAID エイミー・セッド』に出演。映画についてのほか、デビュー作や転機となった作品について語る。
撮影・蔦野裕
 所属事務所の設立25周年記念映画『AMY SAID エイミー・セッド』に出演。

「事務所設立20周年記念に製作した『Playback』という作品には事務所に入る少し前なので参加していませんが、今回、25周年の記念として作られた『AMY SAID エイミー・セッド』が公開されます。今回の映画は、ずっと同じシチュエーションの会話劇で、舞台のような雰囲気があります。個人的には“時間”というのも一つのテーマなのかなと思いました。僕が以前に出演した『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』というドラマに似ている気がします。『AMY SAID』はトラウマを抱えた大人たちが、時間を経てもそれをぬぐいきれず…というストーリーなのですが、それぞれの時間の流れが『あの花』のよう。僕自身は、大学時代の仲間が再会する場面には登場しないのですが、映画好きという共通点を持つ仲間が集うというシチュエーションは、緊張感が漂いつつ、ほっこりしたものを感じました」

 演技派ぞろいの事務所の先輩たちとはこれまでも共演経験がある。

「以前、大橋トリオさんのミュージックビデオに親父や中村優子さん、(渡辺)真起子さんたちと一緒に出演しました。ストーリー仕立てで撮ったので、今回の映画とちょっと雰囲気は近いかもしれません。その前のデビュー作では、真起子さんが母親役でした。自分としても初めて演技をさせていただいた方で、ある意味、監督の河瀨直美さんとともに、俳優村上虹郎の母でもあると思っています。真起子さんはほとんどの作品を見てくれていて、昨年シアターコクーンで小泉今日子さんと共演させていただいた『シブヤから遠く離れて』という舞台を見に来てくれた時は、“決して100点じゃないけど、悪くはなかったわよ”と言って下さいました。真起子さんが悪くないと言うのは、だいぶほめていることだよと周りの方が言っていたのを聞き、やっとスタートラインに立てたと思いました。もちろん、たくさんの周りの方々に支えられて舞台に立っているのですが、自分からもやっと一歩踏み出せたのかなって」

 デビューは2014年。映画初出演で主演を演じた『2つ目の窓』で、一躍注目を集めた。

「俳優になりたいと思っていたわけではなく、たまたまお話があり、そこに飛び込んだ感じです。もちろん、周りからの勧めもありましたし、オーディションも受けましたが、最初は単なる好奇心。映画に出る機会を与えられた10代の男の子が、自分にできるのかという不安と、未知数の好奇心で挑みました。映画って何だろう、どんな世界なのかなというただ純粋な気持ち。親父は俳優ですが、仕事場に付いて行ったことはありませんでした。母親(ミュージシャンのUA)のライブには行っていて、音楽のほうになじみがあったぐらいです。親父の知り合いで、何人か俳優の方を知ってはいましたが、映画の現場では何をしているんだろうと思っていました」

 最初は好奇心からという村上。しかし、そのデビュー作で、俳優に“ハマった”と言う。

「良かったところは、苦しかったところ。全然楽しくないじゃんって。もちろん楽しさはありましたが、正解がない。お芝居にも映画にも正解がない。単純に、こんなに難しいのかと思いました。撮影は奄美大島で1カ月ぐらいだったのですが、初めての仕事だったので、どうしたらいいのか手探りで。役として生きろと言われたから、仕事としてやっている感覚を捨てたら、怒られたり(笑)。でもカンヌへ行かせていただいたり、共演者の方たちだけではなく、それぞれの持ち場で多くのスタッフさんが苦労して作っている姿を見て、面白いと感じました」

 さらに、転機となったのは舞台への挑戦だ。

「僕はすごく飽き性なので、何回も同じことをやるのが苦手なんです。舞台は何度も稽古を繰り返し、繰り返しやる。そりゃ、もう辛いです(笑)。苦しいし、いら立つこともあります。何にとか、人に対してではなく、僕の性格上いら立つ。でも、それは自分に対してのもので、自分自身にそのいら立ちを向けることで、プラスになったりするんです。そこが面白いなって。舞台って、すごいアバンギャルドだなと思います。戯曲やシェイクスピアのように、時代を超えて続いているものがある。そういう古典はなかなか映像化できない。でも舞台だとそれができるんですよね。僕は1回だけギリシャ悲劇をやらせてもらったのですが、その時にそう感じました。また、舞台の稽古は約1カ月ありますが、映画は自主トレがメインになってくる。自主トレしたものを現場に持っていき、お互いのものをぶつけ合うのは、ある意味セッションに近い。そういうところが映画は、すごい刹那だなと思います。例えば映画の現場では、ワンテイクで決まったらそれで終わり。あれだけ用意したのにって。もちろん、シーンとして成立していればOKなのでそれでいいのですが。それに比べて舞台は作りに作りこみ、磨きに磨きこんだものを提供するという部分において、アルバムに近いように感じます。生でお客さんの前に披露するので、ある意味ライブではありますが、セットリストがちゃんとあるアルバムですよね。僕自身は今はありのままに、自分の意志でここにいるという感じです。お芝居が楽しいと思えるまで時間はかかりましたが、最近は楽しいです」


(本紙・水野陽子)
©2017「AMY SAID」製作委員会
『AMY SAID エイミー・セッド』9月30日(土)よりテアトル新宿ほか全国公開
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