楽しいけどしんどい、ツラいけどおもしろい。『結婚』【著者】末井昭

 『自殺』などの著書で、自らの半生を赤裸々に明かしてきた名物編集者・末井昭の最新作。実母が若い男と不倫し、ダイナマイト心中をするという壮絶な過去を持つ著者。そんな彼自身も、W不倫の末に、写真家の神藏美子と再婚。そこに至るまでには、複数の女性と浮気し、嘘を重ね、妻に内緒で3億円以上の借金を作るというダメっぷりを発揮。あげくの果て同棲時代も含めると29年間連れ添った前妻に「好きな人がいる」と言って家出、そのまま離婚するという、ゲスっぷりだ。

 しかし、神藏と結婚するにあたり、1つ「嘘をつかない」ことを約束。生まれも育ちも、金銭感覚も全く違う2人が、取り繕うことなく、真正面からぶつかるのだから、些細なけんかもあるし、大きなすれ違いも。例えば、末井はある日、神藏から「恋愛したい」と告げられる。相手も見当がついている。嘘をつかないという約束だから、そんな普通なら隠しておくような気持ちまで、話してしまうのだ。

 お互いに隠し事がないばかりか、この本にもいろいろなことが赤裸々に描かれている。母親の自殺、前妻との離婚の生々しい話もそうだが、神藏との不妊治療のことなど包み隠さず明かしている。その躊躇のなさには、表現者である2人の覚悟が感じられる。聖書との出会いもあり、日常の中のふとした時に“しあわせ”を感じられる“結婚”にたどり着いた著者の言葉は、既婚者だけではなく、独身者にも優しく響く。
【定価】本体1400円(税別)
【発行】平凡社