希望の党・小池代表がアベノミクスに強烈なダメ出し

ひげを剃ってすっきりの若狭氏(撮影・神谷渚)

希望の党・若狭氏は元検事の視点で加計問題を批判
 第48回衆議院議員選挙(10月22日投開票)が10月10日告示され、10日午前には各候補者が第一声を上げた。

 希望の党代表の小池百合子東京都知事が第一声に選んだのは、東京都内でも屈指の注目選挙区となる東京10区。ここは希望の党からは前職で小池氏の側近ともいわれる若狭勝氏が立候補している。

 多くのメディアが駆けつける中、まず若狭氏が「今回の解散総選挙には600億円の費用が掛かっている。自民党は今ここで解散すれば議席が取れる、あるいは減らす議席が少なくて済むという思いだけで理由のない解散をした。600億円あれば保育園が600個作ることができる。それにも関わらず自分たちだけの利益だけで解散をした。これは国民のための政治ではない」と今回の解散を批判。そして「私たちと自民党との違いは“しがらみ政治”。私は特捜部の検事として自民党政治を奥深いところからずっと見続けてきた。しがらみ政治というのは国民のための政策を打ち出しても、そこに利権とか既得権といった大きな高い厚い壁が立ちはだかって、いい政策が実現できない。一部の団体、一部の人間のためにだけやっているのがしがらみ政治。それが続いていけば、日本は国民のための政治ができない。今ここでしがらみ政治から脱却しなければならない」と訴えた。また「加計学園問題は加計孝太郎さんという一部の人間に、利権・利益を与えるための案件。今まで国会であまり問題にされていなかったが、実は今回の問題で一番の問題は獣医学部を開設する時期。当初は平成31年4月だったが、1年前倒しにされた。それは大きな問題。それによって加計学園の資金繰りが良くなる。授業料と入学金が入る。補助金が入る。そしてライバルだった京都産業大学が来年4月では間に合わないということで、あきらめてドロップする。一石四鳥の効果が1年前倒しにすることで出てきている。それは誰によって決められたか。これは安倍総理と加計孝太郎さんの2人、友達である2人がゴルフをしたり会食をする中で水面下で決められた話なんです。ここが今回の加計学園問題の一番の争点。そうした一部の人間の利益を考え、国政が捻じ曲げられる、不正が行われる。それこそがしがらみ政治。加計学園問題はそういうしがらみ政治の象徴的な案件。ずっと続いてきた自民党のしがらみ政治を断ち切らなければいけない。それが希望の党の大きな主張です」などと元特捜検事独特の視点も交えて安倍1強体制を批判した。

“地元”で第一声の小池代表(撮影・神谷渚)

小池氏は東京都での予算720億円削減の実績をアピール
 そして10時になると、濃いグリーンのジャケットをまとった小池氏が駆けつけ、第一声。「希望の党の代表として初めて取り組む大型選挙。この東京10区で私の後を受けて、地元の声の受け止め役を務めてきたのが若狭勝候補。今回、希望の党を立ち上げるにあたり、主任弁護士のように党の規約や会則を作ったり、事務作業や法律のチェックも、とお世話になってきた。本当ならもっともっと自らの選挙の準備をしていかなければいけないのに、まだまだ準備が十分ではないなかで選挙戦が始まった。皆様の一票でまた国会に若狭さんを戻していただきたい」と若狭氏への投票をお願いした。

 続けて「希望の党は何を目指しているかというと、日本にはなんでもある。何でも売っている。物はあふれている。しかし一つ足りないものがある。それは将来への希望。将来への希望があってこそ、今日より明日、明日より明後日のほうがきっといいと思える。そんな希望を提供するのが政治であり、その希望や夢をかなえるのが政治の役割だと心得ている。いざなぎ景気超えなどといわれていますが、皆さんにその好景気の実感はありますか?」と呼びかける。そして「消費税の使い道を変えるのに総選挙をするといっていたが、そんなショボい話では間に合わない。希望の党は消費税の増税を延期します。“お金が足りないじゃないか、どうするの?”という声もあります。1兆円足りない? だったら私が都知事になって、約7兆円の一般会計の中から、惰性で続いていた予算をいったん終わりにした総額は7兆円のうちの1%にあたる720億円に上る。だらだらとこれまでの既得権益のような予算は削りました。国家予算は100兆円。そのうちの1%に終期を迎えて、本当にこの予算がいるのかいらないのか。これをワイズスペンディングに変えていきましょうということをやれば、1兆円はすぐ出てくる。それは私が東京で立証済み。そしてアベノミクスにはこれだけやっていて、GDPを1%上げたくらいで大きな顔をするなと申し上げたい。これだけのことをやってたった1%上げでは十分ではない」などとアベノミクスをばっさりと切って捨てた。

 そして「安倍1強政治を皆さんの一票で終わらせようじゃありませんか。安倍1強政治によって(起こった)お友達だ、忖度だ。お友達であれば何かいいことがある、そんな政治に対して信頼が持てますか? 変えていこうじゃないですか」と安倍1強体制の打倒をアピールした。

鈴木隼人氏の第一声には自民党の朝日健太郎参議院議員(右)が応援に駆け付けた(撮影・神谷渚)

自民の鈴木隼人氏は政策立案能力と実行力をアピール
 一方、自民党の候補である前職の鈴木隼人氏も若狭氏の演説の後に同じ場所で第一声を上げた。

 若狭氏とは自民党で当選同期だったという鈴木氏は「若狭さんとはフェアプレーで戦おうと握手させてもらった」としたうえで「今回の衆議院選挙、誰に投票するか、どうやって決めますか? 候補者の政策、人柄、政党、人それぞれいろいろな見方があると思う。みなさんには、ぜひ候補者で選んでいただきたい。政策と実績を見比べていただいて、本当に日本のかじ取りをできるのは誰なのかを吟味をしていただきたい。自信を持ってお願いしています」と挨拶。

 鈴木氏は「認知症予防の会」という団体を立ち上げ、施設を定期的に訪問するなど、1期目から認知症の予防に取り組んでいる。この日は化粧療法などの具体的な例と、それらの療法による認知症の予防の効果などを示しながら認知症予防の重要性を訴えた。しかし「認知症は根本的な治療法は発見されていない。今できるのは予防すること。だからこそ、化粧療法をはじめとした認知症予防の活動を全国に普及していかなければいけない。そういう思いで私は先月、認知症予防に取り組む団体や企業と一緒に国内初の全国組織である『全国認知症予防ネットワーク』という組織を立ち上げました。これからこの組織を通じて認知症予防の普及、そして質の向上に全国で取り組んでいきたい」と話した。

 また「政策的な実績には自信がある。エネルギー安全保障の見直し、再生医療の規制改革、公務員制度改革。さまざまな仕事を自分自身の手で成し遂げてきました。この10区で制作力と実績は誰にも負けない自信がある。これから日本は人口減少社会に突入する。我々が経験したことのない大変な時代。例えば社会保障。今までは多くの若者が少ない高齢者を支えていた。でもこれからは少ない若者で多くの高齢者を支えていかないといけない。そういう大きな社会の変化の中で、これまでのやり方が通用するわけはない。これから見ていく景色はこれまでとは全く違ったものになる。そういう社会の中でいったいどうすればいいのか。これまでとは違う発想で新しい成長モデルを作り上げていかなければならない。自分のこれまでの経済産業省と衆議院議員1期の経験をこれからの新しいモデル作りに生かしていきたい」と政策立案能力と実行力をアピールした。