田中路教がUFC再挑戦へ鮮やかな一本勝ち【10・29 GRANDSLAM】

田中(奥)がきっちり一本勝ち(撮影・蔦野裕)

MMA無敗のボリントンを圧倒
 総合格闘技イベント「GRANDSLAM」(10月29日、東京・GENスポーツパレス)のメーンで元UFCファイターの田中路教がホジェリオ・ボントリンと対戦。3R2分27秒、チョークスリーパーで勝利を収め、再度のUFC挑戦に向け、大きな一歩を踏み出した。

 当初はパンクラスのバンタム級2位、ハファエル・シウバと対戦予定だったのだが、ケガのためボントリンに変更となった。しかしこのボントリンはMMAで12勝1ノーコンテストの強豪。8月にブラジルで行われた大会では、パンクラスに参戦経験のあるリルデシ・リマ・ディアスからTKO勝利を収めるなど、決して楽な相手ではない。

 田中は1Rから積極的に仕掛けテイクダウンからグラウンドで上のポジションを取るが、ボントリンは巧みなディフェンス。田中はコツコツとパンチを放ちチャンスをうかがう展開となる。一瞬のスキを突いたボントリンが下から腕十字を狙い、一瞬ヒヤリとさせたが田中は冷静に対処し脱出。その後も田中はグラウンドでのヒジも交えボントリンを追い込んでいく。ラウンド終了間際にバックを奪ったボントリンが反り投げからスリーパーを狙うも田中はここでも慌てることなく危機を回避。

 2Rもグラウンドで上のポジションを奪う田中だったが、ボントリンは下からヒジで反撃。鈍い音が会場に響くが、田中も上からヒジで反撃。サイドポジションを奪うなど、主導権は渡さない。3Rもボントリンのパンチにタックルを合わせテイクダウンに成功するとサイドポジションに移行しパウンドにヒジ。背を向けたボントリンのバックを制し、背中に乗るとチョークスリーパー。ボントリンは田中を背負ったまま立つと、後ろに叩きつけるが田中は離さず、なおも締め上げるとボントリンはたまらずタップした。

田中はマイクで思いのたけを語った(撮影・蔦野裕)

「どうしてもあそこで一番になりたい。もう少しだけ見守ってください」
 田中はケージによじ登り雄叫び。降りては「ありがとう、ありがとう」と絶叫し、涙を流した。そしてマイクを握ると「慎重になり過ぎてすいません。連敗していたので今日は緊張していた。何が何でも勝ちたかった。今年2月にUFCでの5試合目で負けてリリースされちゃいました。日本に帰ってきてやっていますが、どうしてもまたあの舞台で戦いたい。どうしてもあそこで一番になりたいんです。一度はみんなの気持ちを裏切ってしまったけど、絶対にあそこにたどり着くので、もう少しだけ僕のことを見ていてください。応援してもらえるともっと強くなれる。だからもう少しだけ見守ってください」と話した。そして今大会はかつての師匠である勝村周一郎が田中のUFC再挑戦の思いを汲み開催したという側面もあったことから「家出した僕に試合を組んでくれた勝村さんありがとうございました」とケージサイドで試合を見守った勝村に頭を下げた。

柏﨑(上)がグラウンドで堀を圧倒(撮影・蔦野裕)

団体の威信をかけた戦いは柏﨑が一本勝ち
 セミファイナルではZSTの柏﨑剛とGRACHANの堀友彦による現バンタム級王者同士が対戦。団体の威信をかけた試合となったが、柏﨑が2R2分33秒、肩固めで堀を失神させ一本勝ちを収めた。

 柏﨑はタックルからケージに押し込みテイクダウンを狙うが、ケージでのキャリアに勝る堀はケージを巧みに使いテイクダウンは許さない。しかし柏﨑は攻撃の手を緩めず、ラウンド終盤にはマウントを取るなど試合の主導権を握る。

 2Rには打ち合いから柏﨑がタックルを決めると1R同様、テイクダウンをめぐる攻防に。ケージを使い立つ堀だったが、柏﨑は右足で堀の足を刈るとテイクダウンに成功。鉄槌、パウンドと攻め込むとマウントから肩固めに移行。がっちり決まり、堀が失神。レフェリーが試合を止めた。

 柏﨑は「いろいろあって1年くらい試合を休んでいた。支えてくれた皆さん、ありがとうございます。一言言いたいんですが、これが本物の総合格闘技。テレビの格闘技なんか本物じゃねえ。来月、ZSTで試合をするので見に来てください」とアピールした。

濱岸(奥)のスリーパーががっちり(撮影・蔦野裕)

ZST元王者の濱岸が逆転勝利
 第7試合ではグラジエーターの現ウェルター級王者のレッツ豪太とZSTの元ウェルター級王者の濱岸正幸が対戦。打撃の豪太、グラウンドの濱岸と対照的な図式の戦いとなったが、濱岸が2R2分15秒、チョークスリーパーで一本勝ちを収めた。

 1R序盤から豪太の打撃が濱岸を襲う。豪太の右ストレートで濱岸がダウン。連打で畳み掛ける豪太だったが、濱岸はガードを固めしのぐと組みついて腰投げでテイクダウンに成功とめまぐるしい展開に。序盤こそ豪太の強烈な打撃を被弾し劣勢だった濱岸だったが、終盤は距離を詰めタックルで組みついて押し込む場面も。残り30秒で足を払ってテイクダウンに成功しサイドポジションを取るが攻めきれずゴング。

 2Rに入るとガクンと動きが落ちた豪太に濱岸のパンチが当たり始め、試合は一気に濱岸のペースに。ストレート被弾し鼻血を吹き出した豪太は完全にガス欠。濱岸は組みついてテイクダウンに成功すると素早くバックに回り、電光石火のチョークスリーパー。豪太にもう返す力はなかった。

目まぐるしい攻防を見せた伊藤(左)と所(撮影・蔦野裕)

過酷なグラップリングマッチは伊藤が勝利
 第6試合では所英男と伊藤盛一郎が3分×2Rのグラップリングマッチで対戦。グラウンドで上のポジションを取ると1ポイント、パスガードしてサイドから完全に抑え込むと1ポイントといったようにアグレッシブに攻め込むことが要求される過酷なルールで行われた。

 所は何度も引き込みを狙うが、この動きは伊藤のポイントとなってしまう。2R開始早々に伊藤が一本背負いを決めると会場から「世代交代」の声が飛ぶが、所が中盤に変則的な動きから足を取りに行くと会場から「おお~」と感嘆の声。最後には右足をヒールホールドに取りに行った所だったが、伊藤は素早く脱出。ポイントで7-1と伊藤が圧倒し勝利となった。

 伊藤は試合後のマイクで「一本取れずにすいません。決め切れなかったので、こんなの引き分けと一緒。もっと仕上げて、年末にみんなにカッコいいところを見せられるように頑張ります」とRIZIN出場をアピールした。