『芝浦ブラウザー』都会のスキマの豊かな暮らし

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 V6の井ノ原快彦が主演する舞台『芝浦ブラウザー』が、大久保のグローブ座を笑いでいっぱいにしている。
 高層マンションが立ち並ぶ芝浦のスキマ、ぽっかりと存在するユニークな物件に暮らしている人たちがいる。川岸を不法占拠して、小屋を建てたり、階段下のスペースや土管を自分たちの部屋に作り変えて、脱サラしてサバイバル生活を送る人、DJ、ギャル、法律学生らしき人、女子中学生、そしてその住まいにはおおよそ似つかわしくない美女までが共同生活をしている。井ノ原演じる不動産会社の営業マンは、ワンクリックで空き物件を3Dで閲覧できるという画期的な自社開発システムの使い方を習っているうちに、彼らを発見、そしてあっという間に彼らの暮らしに魅せられ、営業もそっちのけで、彼らの暮らしぶりに釘付けになってしまう。
 作・演出の上田誠(ヨーロッパ企画)がつくる“ガイド”をもとに、エチュードを重ねて作り上げていくスタイルの舞台。頭からエンディングまで、アドリブか台詞か区別できないような生(なま)ぽっさがある。奇妙な共同生活を覗き見て入れる井ノ原の突っ込み、そこから生まれる笑いも、演技なのか判別に苦しむ。その雰囲気は客席にも広がって、ストーリーが進むほどにどんどん笑い声が大きくなる。
 最終的に、切ないエンディングが訪れるのだが、登場人物たちが打ちひしがれないのもすがすがしい。しっかりと根を張ることこそが人間のあるべき姿と説かれてきた時代もあったが、時代の流れに乗りながら自発的に流れていくのも“あり”なんだという、ポジティブなメッセージが伝わってくる。
 本当に豊かな暮らしは、広い占有面積やウォークインクローゼットで決まらない。要はどう暮らすか。『芝浦ブラウザー』は、当たり前かもしれないが、忘れがちなことを思い出させてくれた。
 公演は4月19日まで同所で。