池田鉄洋インタビュー 初の映画脚本作品を語る

『行け!男子高校演劇部』

所属する劇団・猫のホテルや主宰するコントユニット「表現・さわやか」など舞台を土台に、個性派俳優としても活躍する“イケテツ”こと池田鉄洋が、初の映画脚本作品を語る!

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撮影・蔦野裕 ヘアメイク・大宝みゆき スタイリスト・ハルカ
ポロシャツ1万2600円(アガルタ 03-5784-3255)/パンツ1万2600円(アガルタ 03-5784-3255)/クレープブーツ 衣装協力(Sian PR 03-6662-5525)/ハット 衣装協力(Sian PR 03-6662-5525)

「私は40歳で彼らは20歳になったばかりですから、ほぼ“息子”ですよ。そんな若い彼らが、ここまで的確に“バカ”を表現できるとは」と、自身初めての映画脚本作品を体現してくれた若手役者たちを、目を細めて称賛する。

「みんな見事なバカで、かわいいんですよ。バカがかわいいと思うのはオジサン目線かもしれませんけど(笑)」

 どんな役者たちが“バカカワ”演劇部員を演じているのかというと…。

「元サッカー部のイケメンを演じたのが稲葉友君。普段の稲葉君をよく知らなかったので、演技中の彼を見てホントにバカなのかなと思いました。もちろん後で彼と話してみて、そうじゃないと分かりましたけど(笑)。ジュノンボーイのグランプリまで取った人が、あんな、ねえ…(笑)。自称・イケメンを演じた金子直史君は、自前かと思うくらいホクロが似合っていましたけど、あのホクロをはずして髪を普通にするとすごいカッコいい子なんですよ。なんでこんな役をやったの、というくらい。オフィシャルの写真と見比べてみてください、別人ですから。川原一馬君は、中途半端なヤンキーを好演してくれました。進学校のヤンキーってちょうどこんな感じなんですよね。冨田佳輔君なんて“存在感がない”という役で印象を残していますね。見ていても“あいつ暗いなー”じゃなくて“あいつ、いた!”みたいな、つい見ていたくなる、絶妙な存在感の無さ(笑)。池松壮亮君には、もう降参ですね。この人のうまさには舌を巻きますよ。見せていいのかな、という顔まで見せてくれて。池松君のあんな顔、見たことある人はなかなかいないと思うんですよね…私も衝撃でしたもん(笑)。こんなにうまい連中が集まってそれぞれに個性を発揮して、しかも誰一人くすんでいない。その中にあって主役を張っている中村蒼という人は、やはり選ばれた人なんだなと思いますね。こんな物語だとわりと主役が損しがちですけど、しっかり見せてくれますもん」

 本作最大の見せ場は、こんなおバカな男子演劇部員があっと驚く衝撃&笑劇の劇中劇を披露するクライマックス。題材は『最後の一葉』。

「どんな題材にするか、いろいろ考えましたね。シェイクスピアとか赤穂浪士とか。その中で、以前から気になっていた『最後の一葉』はどうかな、と思ったんですよ。別に好きというわけでもなく、なんであんな暗い話がみんなに読まれているんだろうと…オー・ヘンリ−には失礼ですけど(笑)。そのとき、ふと“あのアイデア”が浮かんだんですよね。でも思いついた時に、絶対に誰かすでにやっているんじゃないかと思って、急いで家に帰ってネットで調べたんですけど、一応見当たらなくて。まあ、思いついてもバカすぎて誰もやらなかっただけかもしれませんが(笑)」

 一体『最後の一葉』をどんな舞台にしてしまったのか…それは映画館でのお楽しみ。おバカなりに一生懸命な彼らを見ていると、青春は輝いているだけではつまらないのかも、と思う。

「あの時期に“俺の人生、最高!”なんて人はあまりいないんじゃないかと思うんですよ。もっとモテたいとか、あいつに勝ちたいとか、多かれ少なかれコンプレックスがある。私の青春も後悔と羞恥心の塊でしたね。だから全然、青春という言葉の響きに美しいものは感じないんですよ。ようやく今やりたいことを堂々とやれるようになったかなと思います。なので、あのころモテたり青春してたヤツに “そろそろ結婚して落ちついたら”とか言われても“まだ俺そんな経験してないから!”って言いたいですね(笑)」

 バカを忘れた大人たちにも、苦い青春真っ最中という人にも清涼剤となること請け合いの一本だ。

(本紙・秋吉布由子)

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『行け!男子高校演劇部』

監督:英勉 出演:中村蒼、池松壮亮、冨田佳輔、川原一馬、金子直史、稲葉友他/1時間25分/ショウゲート配給/8月6日よりヒューマントラストシネマ池袋他にて公開 http://ikedan-movie.com/
© 2011「行け!男子高校演劇部」製作委員会