新春特別対談 春風亭一之輔 × 古今亭菊六

新春特別対談 祝!真打ち昇進 落語家



3年前の年末、小紙で「今注目の若手落語家」として紹介した春風亭一之輔と古今亭菊六が、今年揃って真打ちに昇進する。真打ちとは寄席などの興行でトリをとる資格を与えられる落語家の身分のひとつ。さらに師匠と呼ばれ弟子を取ることもできる落語家の最高位だ。昇進を控え忙しい2人が語る芸のこと、プライベートのこと、あれこれ。



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取材協力:そば割烹 安曇野庵 青山一丁目店 (写真左)春風亭一之輔 (写真右)古今亭菊六 撮影:蔦野裕





 一之輔は3月、菊六は9月に真打ちに昇進することが発表された。どちらも異例の早さでのスピード昇進だが入門はどちらが先?



菊六(以下、菊)「そりゃ、年も入門も一之輔兄さんのほうが上ですよ」



一之輔(以下、一)「1年だけね」



「前座の時はよく飲みに連れて行ってくれましたよね。人を帰してくれないし、飲んじゃ…ま、いろいろありました(笑)。でも結婚してからは減りましたね」



「大事なものはそっちじゃなかった」



「それに気付いた(笑)」



「毎日毎日飲み歩くなんてくだらない。愚の骨頂だと(笑)」



「何をしているんだって。でもおかみさんもらって、お子さんが3人?」



「うん。一番上は6歳で来年小学校。どうしようかな。卒園式もあるし、真打ちになんてなってる場合じゃない(笑)。卒園式と入学式に行かなきゃいけないから」



「お子さんの面倒よくみていますよね」



「子育てはやりすぎるぐらいやっている。どんなに遅く帰っても、7時には子どもたちと一緒に朝ご飯を食べているし」



「偉いねー。それをこの顔で言うんだからね(笑)。以前、オールナイト落語会のあと、寝ないでお子さんの遠足に行ったことありますよね」



「そう。朝6時に終わって9時の池袋発レッドアロー号で、イモ掘りとマスのつかみどりとバーベキューと餅つき(笑)その熱意を芸のほうに傾けていたら、俺はすごい芸人になっていたと思う(笑)」



 真打ち昇進の連絡は?



「そんな話が出ているよっていうのは師匠から聞いてましたが、あんまりあてにしないでおこうと思ってました。そしたら、決定した日にたまたまツイッターで“一之輔さん真打ち決定”って知らない人がつぶやいていた(笑)。それで、その夜師匠に会ったから『真打ちが決まったって聞いたんですけど。風の便りで』と言ったら、『えーっ、そうなの』って(笑)。結局師匠の携帯の充電が切れていたことが原因でした(笑)」



「そうなんだ。私はごく普通に携帯の留守電に入っていました。総領弟子の菊龍師匠から『真打ちが決まったよ』って言ってブチっと切れてた(笑)」



「いたずらかと思った?」



「いたずらするような方じゃないです」



「酔っぱらっていたとか」



「だから、酔っぱらってもそんなことしません(笑)。それでかけ直したら、小三治師匠から連絡があったって」



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対談前の雑談。
一「この扇子いいね。どこで作ったの?」
菊「ありがとうございます。この辺の開きがね…」
一「大きくない?」
菊「こんなもんじゃないですか」
一「比べる?」
扇子談議は続く…。





 真打ち披露パーティーの予定は。



「私の場合は1人真打ちなので、落語協会主催でやらなきゃいけない」



「協会のパーティー1回だけ?」



「もちろん」



「我々は朝太兄さんと2人で真打ちになるので、2人で協会主催のパーティーをやって、また別々に1人でやりますよ」



「いいじゃん、一回で。どっちも協会主催にしちゃって」



「2人真打ちだから、協会主催の芸人向けと個人のお客様中心のものと、別にしないと。一之輔兄さんの場合は1人だから、お客様も呼んで芸人と一般の人を交えて一緒にできるんですよ」



「そう。だからほんとはさくら水産でもいいんだけど、人が入りきらないから」



「小三治師匠もさくら水産に呼ぶ?」



「それを許してくれないんだよ。いいって言ってくれればいいんだけど」



 普通の人には、なかなか縁のない真打ち昇進のパーティー。もし招かれたら御祝儀はいくら包むもの?「表書きはどうでもいいから、最低3万円。 最低ね。で、5万だとありがたい(笑)」



「私はお気持で…って書いておいて下さい(笑)」



「私はちゃんと書いておいて下さい。最低で3万だって。自分の会の高座でも『招待状をもらった人は3万円以上持ってくるように』って言ってますから(笑)」



「そりゃ招待状というより催促状ですね。ゲスな話だね(笑)。しかし、どうやったらこういうふうに生きられるのか」



「初期設定だね」



「そうなんですね…」



「急にはなれない。こういう人だからしようがないって思われているとラクですよ(笑)」



 一之輔は3月21日から、菊六は9月21日から50日間それぞれ寄席で昇進披露興行を務める。あらためて今年の抱負を聞いた。



「現状維持。これが意外と大変なことだなって最近分かりまして。二つ目だから使ってもらえるっていうところも多いんですけど、ようやくスタートラインに立つわけですから、現状維持をするための努力をしたいと思います」



「朝太兄さんと、古今亭の2人が一緒に真打ちになるので、派手で粋で華やかな古今亭のイメージで古今亭祭のような形で盛り上げたいです。ともかく、まずは一之輔兄さんの披露目の成功をみんなで盛り上げ、それを秋につなげられればいいですね」



(本紙・水野陽子)





春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)
千葉県出身。春風亭一朝に弟子入り。2001年「朝左久」の名で前座に。2004年11月に二つ目に昇進し「一之輔」に。今春、真打ちに昇進する。落語協会所属。



古今亭菊六(ここんてい・きくろく)
東京都出身。2代目古今亭円菊に弟子入り。2002年11月に前座。2006年5月二つ目に昇進。今秋、真打ち昇進。落語協会所属。