放射性物質に汚染された石や砂利チェックなしで流通

 福島県二本松市内のマンション1階の室内から、屋外より高い放射線量が測定された問題で、福島第1原発事故後、避難区域内の砕石場から出荷された砕石は、行政の何のチェックも通らずに流通していた。石、砂利については放射性物質の基準自体が存在せず、「予想外の出来事」(経済産業省の担当者)。福島県の担当者も「いま考えれば何らかの措置をしていればよかった」と話すが、対応は完全に後手に回った。

 経産省によると、セメントには昨年6月、出荷に際して、放射性物質の管理基準(1キログラム当たり100ベクレル以下)が設けられた。セメントの原料の下水汚泥から高濃度の放射性物質が検出されたためだという。

 ただ、セメントに混入する石や砂利には基準はない。

 国土交通省も、建築基準法などでは放射性物質に汚染した資材の流通は想定外。国交省は「仮に汚染された建築資材の使用が確認されても、使用禁止の措置はとれない」とする。

 現場を直接所管する福島県も何の対応も取らなかった。県企業立地課によると、採石法では出荷・流通に関することは規定していない。また、放射性物質の検査は同法に規定がないという。同課の大島隆之副課長は「業者に対して出荷する前に洗浄を促すなど、何らかの要請をすればよかった」と話している。

 石を出荷した双葉砕石工業の猪狩満社長は、「3月、4月は放射能のことなんてわからず、とにかく地元の復旧に役に立ちたいと思ってやった」と話した。