小池百合子のMOTTAINAI 第13回

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気まぐれ国家 北朝鮮の暴走はいつまで続くか

 毎度、お騒がせの北朝鮮が、4月15日の太陽節(金日成生誕100周年記念日)を祝うため、「人工衛星」と称する事実上のミサイル発射準備を着々と進めています。  今回のミサイル発射計画は先代の金正日時代からのもので、わずか29歳の後継者・金正恩の実績作りというわけではありません。せっかく久々の米朝合意でそれなりの栄養支援物資を確保したばかりなのに、明確な国連決議違反です。支援を反故にしてまでも、なぜ強行するのか。  特に、今年は2月16日の金正日生誕70周年、4月15日の太陽節、同月25日には人民軍創建80周年と、周年行事が目白押しで、そのたびのパレードや祭に加え、人民への食糧プレゼントなどで莫大な費用を必要としているにもかかわらず、です。  唯一の答えは、「だって、北朝鮮なのだから」。王たる金正日の遺言がすべてに優先するのが、北朝鮮だからです。  70、80代の先代、先々代からの軍や党の取り巻きを相手に、何の経験もない金正恩には、父親の遺訓に反することはできません。  また、「もし失敗したら、どうなるのか」といった議論が交わされていますが、「失敗」はありません。理由は「だって、北朝鮮なのだから」。たとえ失敗したとしても、国内的にはすべて「成功」なのです。  ミサイル発射は北朝鮮政府にとっていいことずくめです。第一に、「衛星」を載せる長距離弾道ミサイルの射程距離は遠くグアムにも届く可能性もあります。何よりも弾頭に核を載せれば、アメリカを刺激するには十分です。  第二に、ミサイルの威力を見せ付けることで、イランなどの顧客を引き付け、貴重な外貨獲得の道が開けます。つまり営業用の見本市なのです。  第三に、金日成生誕百周年である太陽節を祝い、国威発揚の場となります。  莫大な資金を投入しても、北朝鮮人民にとっては何のプラスもありません。ましてや、米国からの栄養支援など、各国からの支援が断ち切られるマイナスの効果さえあります。  これらの判断はいったい誰が行っているのでしょう。私は、実力者として取りざたされがちな金正日の妹の夫である張成沢ではなく、むしろ妹の金敬姫だと、かねてより申し上げています。席次も、つねに敬姫が夫より高い。  理由は金王朝の血を引いているからです。  強引、気まぐれ、アル中などとその評判は散々ですが、病床の兄・金正日に代わり、指揮をとっていたのは彼女なのです。気まぐれが破綻する日は、そう遠くないことを祈るばかりです。