SPECIAL INTERVIEW 阿部サダヲ

『ぱいかじ南海作戦』ロケで南国を満喫!?

椎名誠の傑作小説を、個性派俳優・阿部サダヲ主演で映画化。コントユニット・男子はだまってなさいよ!の主宰・細川徹が個性派キャストを揃え初メガホンを取った注目作。美しい南国の海辺を舞台にビターな笑いが炸裂する異色のハートフルムービーの舞台裏を主演・阿部が語る!

「本当にリラックスできた撮影現場でしたね。皆がいつも楽しそうなんです。撮影の待ち時間に“あの木に石を当てた人にジュース”みたいな遊びをずっとやってたり(笑)。普通、大人が“石”と“木”で遊ばないじゃないですか。あれを見ているだけで幸せになったもんなぁ(笑)」

 南から吹く風“ぱいかじ”に吹かれながらのオール南国ロケを、満喫した様子。
「最初に島に着いたときは、主人公の佐々木とまったく同じ気持ちでしたね。“思った以上に何もない!”という(笑)。そうはいってもコンビニくらいあるだろうと皆で言っていたんですけど本当にコンビニは無いし、ロケ地の近くでは人も見かけないし、びっくりしました。でも数日したらそれが幸せな感じになっていったんですよ。ホテルの周りを歩いていても誰とも会わないので、台詞の練習しようが歌をうたおうが平気。こんなにラクなところがあるんだなと(笑)」
 まさに “ぱいかじ”がくれる解放感。

「数日して“映画の撮影隊が来てる”という話が広まると、どこかから人がたくさん出てきました(笑)。いろいろ交流もあって楽しかったですよ。婦人会の方たちが親睦会を開いてくれて、みんなで“マルマルモリモリ”を踊ったり(笑)。撮影が後半になったころ、居酒屋替わりに、ある人のお宅にお邪魔するようになって共演の少路(勇介)君の誕生日をお祝いしてもらったりもしましたね」

 実は本作、ただの“癒しの南国ムービー”ではない。人生に行き詰まり南の果ての小さな島へやってきた中年カメラマン・佐々木は、砂浜で暮らすホームレス・マンボさん(ピエール瀧)たち4人組と出会い、その自由な生き方に感激するのだが、彼らに“全財産”を奪い去られ本物のサバイバルをするはめに。ぱいかじに心洗われた瞬間はどこへやら、今度は自分が、ピュアな若い旅人・オッコチくん(永山絢斗)に砂浜暮らしの素晴らしさを語りつつ、彼の缶詰を狙う。さらにアパ(貫地谷しほり)とキミ(佐々木希)という関西娘2人組が加わって奇妙な共同生活が始まる…。憎めない佐々木は共感度満点。確かに佐々木のようにまったく違う生き方にあこがれることはある。

「僕でいえば、やはりこの仕事を始めたことですかね。いまだに親戚の人に“お前が役者になるとは思わなかった”って言われます(笑)。もともと笑いは好きだったんですけど、実際に舞台に立って生で人を笑わせるという快感を経験したのは大きかったです。思えば小さいころからすごく他の人にあこがれる子供だったんですよ。人の家に行くのが好きだったり、あこがれていたバイトをしてみたり。それこそ役者は、いろいろな人になれるし、いろいろな所に行けますからね」
 独特な少年は独特な役者となった。

「よく“普通はこうするじゃん”と言いますけど、普通って何?って思うんですよ。型にハマらないほうがラクというか、好きなんです。たぶん細川監督もそういう人なんですよね。今回、音楽やった星野源君とかもそうだし。星野君の音楽も本当に独特で、宮藤(官九郎)さんがすごくびっくりしたらしいんですよね、なにそのコード!?って(笑)。今回はそういう人たちが集まったな、と。一緒にやっていてもすごく楽しいですよ」

 舞台のみならず映画、ドラマでさまざまな役どころをこなしてきた。今後、映画の作り手側に興味は?
「ちょっとずつ、ですね。まだ作り方が分かりかけてきているところなんで。最初に撮るとしたら…ミュージカルとか(笑)。みんな、けっこう歌好きですしね。ストーリー関係なく歌ってるだけとか面白いかも…それだとただのミュージックビデオか(笑)」

 8月1日から舞台『ふくすけ』に出演、今秋には松たか子と夫婦役を演じる主演作『夢売るふたり』が控える。忙しい阿部だが、もし長期のリフレッシュ期間をもらえたらどこに行きたい?
「ものすごく普通ですけど…ハワイに行きたい(笑)」 (本紙・秋吉布由子)

『ぱいかじ南海作戦』
監督:細川徹 出演:阿部サダヲ、永山絢斗、貫地谷しほり、佐々木希、ピエール瀧他/1時間55分
/キングレコード、ティ・ジョイ配給/7月14日より新宿バルト9他にて公開 http://paikaji-movie.com
C)2012「ぱいかじ南海作戦」製作委員会