ニュースの焦点 自民総裁に安倍元首相 決選投票で石破氏を逆転

 自民党の総裁選が26日行われ、安倍晋三元首相(58)が第25代総裁に就いた。
 国会議員票と地方票で行われた1回目の投票は石破茂前政調会長(55)が199票、安倍氏141票、石原伸晃幹事長(55)が96票、町村信孝元官房長官(67)が34票、林芳正政調会長代理(51)が27票を得て、過半数に達した候補者がいなかったため上位2氏による決選投票となった。決選投票は国会議員の投票で行われ、安倍氏が108票を獲得し、89票だった石破氏に競り勝った。
 決選投票となったのは昭和47年以来で40年ぶり。2位候補の逆転は56年ぶりで総裁経験者の再登板は初めて。新総裁の任期は平成27年9月末までの3年間。
 安倍氏は会見で役員人事について「地方票の過半数を取った石破氏との協力が求められている。石破氏と私が協力することで強力な態勢を作れる」と重要ポストで処遇する意向を明らかにした。幹事長に起用する。「お友達内閣」と批判された首相当時の側近政治からの脱却を印象づける狙いもあるが、「脱派閥」を掲げる石破氏の幹事長ポスト起用には安倍氏を支持した陣営からも「党内を取りまとめる幹事長には不向きだ。総務会長でいいのでは」との拒否反応が出ている。
 赤字国債発行を可能とする特例公債法案については「国会審議にまったく応じないというのはおかしい」と、柔軟に対応する姿勢も示した。
 衆院解散の時期に関しては同日夜のテレビ朝日の番組で、「近いうちに信を問う」とした首相と自民、公明両党首との合意について「年内ということだろう。臨時国会(の会期内)だ」と述べた。安倍氏は公明党の山口那津男代表とも電話会談し、協力関係の継続を求めた。
 経済政策については、総裁選を通じて「デフレから脱却し、経済を力強く成長させないといけない」と訴えており、経済成長とデフレ脱却を重視する「上げ潮」路線が濃厚。デフレ下での消費税率引き上げには否定的で、日銀に対してさらなる金融緩和を求めている。成長戦略の推進のため、「日本経済再生本部」を創設。産業構造の転換や雇用創出を進める考えを公約に盛り込んだ。
 エネルギー政策では、現時点で、将来の原発ゼロを打ち出すことに慎重な姿勢。「脱原発依存」を掲げるものの、それには原発に代わる新エネルギーの確保が前提だ。通商政策の要となる環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に関しては、国益を重視。「聖域なき関税撤廃」といった対応には反対の立場を取っている。
 決選投票で敗れた石破氏は、投開票後に行った陣営での結果報告会で、国会議員への支持が広がらなかったことが敗因と認めた。そして「地方でわが党を支える方の過半数から支持していただいたのに、議員票で取れなかったことは私の不徳の致すところが大きい」と反省しきり。
 ただ、「これで終わりではない。このチームを大事にし、自民党の中核となるよう、今日から気持ちを切り替えて努力したい」と次の総裁選に再挑戦する意欲を見せた。