ニュースの焦点 外国人献金などの田中法相辞任 首相の任命責任も

 外国人献金問題や暴力団関係者との交際が発覚した田中慶秋法相・拉致問題担当相が23日、体調不良を理由に野田佳彦首相に辞表を提出し、受理された。法相の後任は滝実前法相、拉致問題担当相は藤村修官房長官が兼務する。

 今月1日に発足した野田第3次改造内閣は約3週間で閣僚辞任に追い込まれたが、任命責任について首相は記者団に「閣僚が職務を全うできなかったという意味においては任命権者の責任がある」と述べた。あくまでも体調不良で職務を全うできなかった「責任」に限定。加えて、田中氏の政治経験を「評価」して入閣させたと強調した。また、「内閣全体で職務に邁進することで責任を果たす」とも述べ、今後の政権運営に意欲を示した。

 田中氏の辞任理由について野田首相や閣僚は23日、「体調不良」と口をそろえて説明した。しかし外国人献金問題や暴力団関係者との親密な交際が原因であることは明らかで、野田政権で事実上、辞任した「問題閣僚」は6人目。与党からも首相の人選ミスを問う声が出ており、もはや責任を逃れることはできない。

 しかも、民主党政権の3年余りの法相は田中氏の後任で9人目、拉致問題担当相の後任も8人目。とくに田中氏の前任の松原仁氏は担当相就任前から拉致問題に熱心に取り組んでおり、あえて交代させた田中氏が就任からわずか23日で辞任したことで、首相の熱意を疑われても仕方がない。
「組閣前から官邸サイドに田中氏をめぐる情報が入っていた」(政府関係者)にもかかわらず起用したのは、田中氏が9月の民主党代表選で、いち早く首相の再選支持を打ち出した旧民社党系グループの重鎮であることによる論功行賞であることは明らか。

 代表選で首相を支持した民主党の仙谷由人副代表は23日のTBS番組で「任命責任みたいな話には当然いくでしょう。なぜ、こういう人事をされたのかというのは、本当に分かりませんね」と語り、田中氏を起用したことに首をかしげた。

 24日には滝氏が皇居での認証式を経て正式に就任。国会内で記者団に「せっかく肩の荷が下りたのに両肩に重しがのしかかった。気を引き締めて取り組む」と述べた。首相から23日夜に「緊急事態だからお願いしたい」と就任を求められたことも明かした。滝氏は田中氏の前任で高齢を理由に留任を辞退していた。

 一方、拉致被害者家族からは田中氏がわずか3週間で辞任したことを受け、「私たちには時間がないのに…」と相次ぐ交代に落胆の声が漏れた。

「私たちが一番困ることは短期間で何人も担当大臣が代わること。田中さんは何もやっていない」。田口八重子さん=拉致当時(22)=の兄で、家族会代表の飯塚繁雄さん(74)は残念そうに話した。
 田中氏を任命した野田佳彦首相にも厳しい目が向けられた。飯塚さんは「総理が真剣に取り組んでいこうとする姿が見えない」。増元るみ子さん=同(24)=の弟、照明さん(57)も「政権自体に拉致事件解決への意欲が感じられない。そのような野田総理を信頼するわけにはいかない」と不信感をにじませた。