“ここだけ”の逸品映画をありがとう! シアターN渋谷が12.2閉館

渋谷駅西口、さくら通りを上る途中にあるミニシアター・シアターN渋谷が12月2日、7年間の歴史を閉じる。ここでしか出会えない映画を数多く上映してきた映画館の閉館にあたり、いま多くの映画ファンが特別な思いを寄せている。

 開館から7年間の上映作品リストを見ると、改めてシアターN渋谷は“特別”な映画館だったと思う映画ファンは多いだろう。“良質な映画ばかりを上映した”とか“隠れた名作を次々とヒットさせた”ということではない。シアターN渋谷が愛された最大の理由、それは“ここでしか上映されない”作品が数多くあることだ。シアターN渋谷が最初に大きな話題を集めたのが、開館の翌年。上映を求める一般の映画ファンの声を受けて上映した『ホテル・ルワンダ』を大ヒットさせたときだ。7年間、自ら番組編成(上映作品選び)にも携わってきた近藤順也支配人は振り返る。「あのとき、この記録はもう破れないなと思いましたね(笑)。入場者が多くて、公開3日目には1スクリーンから2スクリーンでの上映に切り替え、さらには拡大公開までされ異例のロングランを記録しました」。一般の映画ファンの声を受け止めたシアターN渋谷は、以後映画ファンにとって“特別”な存在になっていく。「過激描写のあるホラーだけでなく、タブー的な題材の作品なども、お客様のニーズがあるのに上映されない作品があると、うちに声がかかるようになって。世界中でうちだけでしか上映しなかった作品もあります(笑)」。いつしか、映画好きや関係者の間で“シアターN系作品”という言葉ができた。メジャー作品を上映する映画館ではまず取り扱わないようなエッジの効いた作品を指して、そう呼ぶのだ。「もともとうちは、ユーロスペースという偉大な映画館の後にできたシアターでした。ユーロスペースをまねしようとしてもかないっこないと思い、自分たちの映画館を作ってきました。それがいつしか“シアターN系映画”なんていわれるようにまでなった。お客様のおかげですね。映画への熱やパワーはすごいんだなと感じています」。

 今回のクロージングでは、そんなシアターN渋谷らしさを支えた“チーム”が集結。「最後の番組では、7年間やってきたことのカラーを出したいという思いがありました。お客様のニーズがあって、それに応えようという配給会社やメーカーがあって、うちで上映することになったら、今度はそれを広めてくれる宣伝マンさんがいて…そのつながりで7年間やってきたので、これまで一緒にやってきた方々と最後まで一緒にやりたかったんです。ミニシアターでも、成績が振るわなければ客が入るメジャーな作品を持ってくることはできるけど、それだと何を見せたいのかということになる。私たちは、自分が見せたいものをしぶとくやることができました。ここまで野放しにやらせてくれた会社には感謝しています(笑)」。映画ファンの熱い思いがある限り、シアターN渋谷はきっと“不滅”だ。近藤支配人の表情は明るい。「大丈夫です、そういう作品をやる映画館がきっとまた出てきますよ!」

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必見のクロージングラインアップ

 30年前に日本初公開され多くの映画ファンに絶賛されながらも今なおDVD化されていない、幻のピーター・フォーク主演作『カリフォルニア・ドールズ』をはじめ、『マーターズ』のパスカル・ロジェ監督最新作『トールマン』やジャック・ケッチャム原作の残酷全開問題作『ザ・ウーマン』などシアターN渋谷らしいラインアップで上映中!【シアターURL】http://www.theater-n.com/http://www.theater-n.com/

『カリフォルニア・ドールズ』ニュープリント版 配給:boid ©1981 Warner Bros. Pictures International. All Rights Reserved