新春から気になる!女優たち 平田薫

映画『R-18文学賞vol.1 自縄自縛の私』

人生にはいくつかのターニングポイントがある。そこで一歩踏み出すかいなかでその後の人生は大きく変わる。平田薫は映画『自縄自縛の私』で女優への大きな一歩を踏み出すことになった。

 この作品の原作は「女による女のためのR-18文学賞」の大賞を受賞した同名小説。“自縛”を密かな趣味としている女性の日常を描いた物語。そして監督は竹中直人。主人公の百合亜役を探していた竹中の目に止まったのが彼女だった。
「最初は官能小説と聞いていてびっくりしたんですけど、自分が想像していた官能小説とは全く違って、ストーリーがしっかりあって、細かい女性の心理的な動きというのがすごく繊細に書かれていることに驚きましたし、素直に面白いと思いました」
 小説も映画もそもそも「自縛」を始めることになったきっかけみたいなものが、特に明示されているわけではない。そんななかで主人公の内面を探りながらの撮影になった。
「潜在的にそういうものを好きな人っていうのは気づいていないだけでけっこういるんですよね。撮影現場でも、縛るということにものすごく興味を示す方と全然興味の無い方がはっきり分かれていました。百合亜の場合はたまたまそういう性質というか趣味があって、偶然そういうものと出会ったから自縛の世界に入っていったんじゃないかと思います。この役をやることが決まってからインターネットでいろいろ調べたんですけど、ブログとか読ませてもらうと、拘束されてきつく縛られる感じが好きな方ただ単に縄目の美しさが好きで下着とのコーディネートを楽しんでいる方縛ったことによって人に抱きしめられているような安心感を得ている方など、いろいろな楽しみ方をされていたので、私も百合亜を演じていくなかで何パターンか自分で “ここはストレスをすべて開放するつもりで!”“ここはリラックスして安心感が欲しくて縛っているんだな”というように細かく気持ちを変えながら演じました」
 この作品のなかで「自縛」は従来の「緊縛」とは一線を画している。そして「秘密」の象徴という面を持っているようだ。
「そういう秘密を抱えることで、人に言えないような部分や人に見せられないような部分を肯定できる強さを持てるようになるんだと思うんです。たまたま百合亜は縄でしたけど、誰にだってそういうものってあるのでは?」
 では平田自身にはそういう秘密は…?
「秘密というほどではないんですが、私が一人でやっているストレス解消法は、お酒を浴びるほど飲むっていう…(笑)。普段の自分とは別のもうひとつの自分を解放できるんです」
 竹中監督の撮り方はカメラワークや登場人物の動かし方など演劇的な要素を取り入れており、かなり独特。多分マニアックな見方をする人やサブカル好きの人を大きく刺激しそうだ。
「そういう見方をする方にも“面白い”って言っていただけたらうれしいので、ぜひ見ていただきたいです。お話としては女の子が社会で戦って精神的にも強くなっていく前向きなものなので、同世代の方も30代40代の働く女性にもぜひ見ていただきたいなって思います」
 映画は最後、大きく展開。成長する百合亜とは好対照の道をたどってしまう登場人物のメンタリティーやその後はまた別の意味で作品の大きな柱となっている。また扱っているテーマがテーマなだけに劇中、けっこう刺激的な場面も多い。「自縛」に目が行って本質を見逃さないように注意が必要な作品だ。

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『自縄自縛の私』
原作:蛭田亜紗子 監督:竹中直人 出演:平田薫、安藤政信、綾部祐二(ピース)、津田寛治ほか/1時間46分/よしもとクリエイティブエージェンシー配給/2月2日より新宿バルト9他にて公開 http://www.r18-jijojibaku.com/http://www.r18-jijojibaku.com/