最高裁が水俣病を初認定 原告勝訴が確定

 熊本県が水俣病の患者と認定しなかったのは不当として、熊本県水俣市の女性の遺族が処分の取り消しと認定義務付けを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(寺田逸郎裁判長)は16日、女性を水俣病と認定するよう命じた2審福岡高裁判決を支持、県側の上告を棄却した。遺族側勝訴が確定。最高裁で患者と認定されるのは初めて。

 大阪府豊中市の女性については、水俣病と認めなかった2審判決を破棄、審理を大阪高裁に差し戻した。

 同小法廷は、水俣病の判断手法について「行政判断に不合理な点があるか否かという観点ではなく、個々の事案における事情と証拠を総合的に検討し、個別具体的に判断すべきだ」と、裁判所が独自に認定できるとの初判断を示した。

 国が昭和52年に示した判断条件は、水俣病と認定するには手足の感覚障害に加えて運動失調や視野狭窄など複数の症状の組み合わせを必要とし、そうでない場合は総合的に判断するとしている。

 同小法廷は「手足の感覚障害のみの水俣病が存在しないという科学的な実証はない」と指摘。症状の組み合わせが重視される行政審査よりも事実上、認定の幅を広げた。ただ、判断条件は「多くの申請について迅速かつ適切な判断を行うための基準を定めている」と一定の合理性を認めた。

 水俣市の女性の訴訟では、2審が判断条件を「十分であるとは言い難い」と指摘した上で女性の生活環境などを独自に検討し原告側逆転勝訴を言い渡した。

 豊中市の女性の訴訟で2審は「裁判所の判断は県の判断が不合理かどうかという観点で行われるべきだ」との立場で原告側逆転敗訴とした。女性は3月に死亡、長女が訴訟を承継した。