二十歳の視点 vol.13 「学生映画から何が見える?」

 今回は映画に取り組む学生にスポットを当てて、学生でいながらどのような視点をもって活動しているのかを探り出したいと思った。先日、第25回東京学生映画祭が行われたのだが、そこで賞を受賞した2人の監督と接触する機会を得た。東京学生映画祭とは、中村義洋監督(『奇跡のリンゴ』、『ゴールデンスランバー』など)や園子温監督(『ヒミズ』、『愛のむきだし』など)もかつて出品したこともある学生映画コンペティションだ。
映画『友達がいない』
 まずは、観客賞を獲得した『友達がいない』の三原慧悟監督(慶応大4年)に話を聞くことにした。この映画は、孤独な主人公が「あと3日で死ぬ」と宣告され、残された時間のなかで友達作りの旅に出る話で、偶然、演歌歌手の千昌夫とバッタリ!というシーンもあり、道行く人との予測不能の出会いが巻き起こす型破りなロードムービー。彼の作品には他にも友達を題材として扱ったものがあり、そうした「友達観」にも突っ込んで聞いてみた。もちろん、ここでのキーワードも「友達」。


――小さいときから、映画に対する憧れはあったのか?
「映画はあんま見ないほうなんですよ。映画館に行くこともそんななくて。もともと演技とかには興味があって、小学校のときも学芸会とかでも演劇をやってましたね。作品をつくることにも興味がありました。中学とか高校でも、外には出さないですけど、小説を書いてみたり、すごいしょぼい棒人間が動くようなアニメーション作ったり、それを友達に見せて面白がったりするのは好きだったんですよね。そこから映画に行った感じです」
――友達を題材にしてる作品が多いよう気がしました。友達にコンプレックスなどがあったんじゃないかなって思ったんですが。
「ありますよ、やっぱり。中3くらいから友達が激減して、何だったらちょっといじめられてたくらいの、ちょっと暗い時期があったんですよ。その頃、結構ネットにハマったんですよね。僕が作品を作るときに1番大事にしてるのは、中高時代の自分が見て、感動するようなものを作りたいなって。結局中高の自分に似た人たちっていっぱいいるだろうし。でも、自分にそういう中高時代があったこともよかったのかなとも思えるんで。今はすごい開き直ってますけど、当時はきつかったですね。やっぱり嬉しかったのもあったんで、大学入って、友達ができたのは。テーマ的にはそういうのが多いですね」
――その小説やアニメーションを作ってた時期と引きこもってた時期が重なるんですか?
「小説、アニメーションはずっとネットのなかでやってたんですよ。非リア(非現実)な友達がネット上にいて、顔も知らない、ハンドルネームしか知らないっていう友達はいて。そういう友達に向けて、小説とかアニメーションを作ってみせて、反応もらって、ちょっとうれしいみたいな」
――ハマろうと思えば、ネットの世界にズブズブのめりこんでしまいそうになるような気も。
「高校2年のときに親に“留学に行けば?”って言われて、サマースクール的なやつで1回イギリスに行ったんですよね。そこがすごい楽しかったんですよ。みんなでサッカーしたり、いっしょの英語の授業受けててもふざけあったりとか。そこで気づいたんですよ。世の中まだ楽しいこといっぱいあるんだなって。ちょっとネットにハマるのはやめよう、と。割とそこから受験勉強というか勉強みたいのをまじめにやるようになったんで。大学入ったら、絶対楽しい世界が待ってるっていう夢を抱きながら、勉強して。大学入ってからはウキウキしながら、最初のほうとかは毎日過ごしてましたね」
――いい話ですね。


 また、三原くんは現代の無縁社会を描くためにガチンコでホームレス1週間体験をしてみたり(映画制作は断念)、24時間テレビで徳光さんがチャリティーマラソンをしたことを受けて100kmマラソンに挑戦してみたりと、人を楽しませる「企画」にも情熱を傾けてきた。その結果、テレビ局に入社が決まり、これからも映画という枠組みにとらわれることなくエンターテインメントをつくることに邁進していくようだ。そういう意味では、彼のバイタリティーは「友達」と「人を楽しませること」でできているのかもしれない。そんな彼の詳しい活動はhttp://miharateikoku.com(爆裂☆みはら帝国)で。
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 そして、グランプリを獲得した『ぽんぽん』の中村祐太郎監督と脚本を手がけた木村暉くん(ともに多摩美4年)にも話を聞いた。中村くんいわく、バットエンドで潔い終わり方が見どころの1つだという。この映画ではテーマ曲もインディーズの町あかりというアーティストにお願いするという熱の入りよう。キーワードは「貪欲」。


――映画をつくろうと思ったきっかけは?
 中村「映画をつくろうと思ったことは1度もないんですよね。映像は撮ってたんですけど」
――高校の時などは何を?
 中「高校のときも、カメラいじくって、映像を作ってたんですよね。映像見るのも好きでしたね。PVが好きだったんで」
――特にお気に入りのPVがあれば、ぜひ。
 中「最近のベスト1は乃木坂46の『ぐるぐるカーテン』。あれは2012年のナンバー1ですね」
――まさか登場人物の玲奈と優子っていうのはAKBから…?
 木村「僕が脚本書いたときに、名前あんまり考えてなかったんですけど、中村くんがすごくAKB好きだったんで」
 中「その時、すごくSKE48の松井玲奈が好きで」
――確認なんですけど、この映画はダメな人の哀愁を描いてるっていうことで間違いないですか?
 木「僕自身が虚無を感じてるんで」
――虚無。
 木「この大学生活のモラトリアムな時間とかが有益なのかっていう。『ぽんぽん』は男の欲望というか、醜いところを」
 中「そういう話も大好きなんで。落ち込むときは落ち込むんで。ポジティブなときは女の子を見たい。女の子しか見たくない」
――撮影現場について。
 木「彼が空気つくるのがうまいんですよ」
――緊張感のある空気ってことですか?
 木「撮るときの空気感をつくるのが、本当に役者さんとかもピリピリでキワキワな状態で撮ってたりしてて。ずっとピリピリしてましたよね。彼はそういうのに長けてるんです」
 中「あと、僕、怒られるといいんですよね」
――Mなんですか?
 中「Mでもあるんです。ドMだと思うんです、ホントに。『ぽんぽん』のときは、役者にすごく怒られて」
――役者に怒られる監督。
 中「僕たちダメだったから。制作も助監も機能してなくて、役者といっしょにスケジュール立ててたみたいなんで」
――この役者の方って外の人なんですか?
 中「外部です。今、事務所にいます」
――てっきりお仲間だと思ってました。
 中「そうなんですよ! 東学祭のスタッフの方にも"同級生の方だと思いました"って」
――お金はどうしたんですか?
 木「全部タダです。お金ないんで払ってません」
 中「20万とかで作ってますからね」


 人の醜い部分を作品に反映させるにあたって、この2人が影響を受けたのはポツドールという劇団。それから、劇中にデリヘルが登場するのだが、これは西村賢太の『苦役列車』などからインスパイアされたらしい。ポツドールや西村の世界観が唯一無二なだけに、普通であれば単なる模倣になってしまいがちだが...、それは実際に見てからのお楽しみ。