SPECIAL INTERVIEW 桂亜沙美 × 中村龍介

“積み上げられた即興劇”『ラジオスターの悲劇』DVD発売
 1998年に早稲田大学の演劇研究会で産声をあげた「少年社中」が今年15周年を迎えた。5月に記念公演第一弾の『ラジオスターの悲劇』が上演され、10月20日(予定)にDVDが発売される。
 小劇場の枠を越えた活動を見せる少年社中は毎回多くの客演を迎えている。この作品では毎日出演する客演に加え、物語の中心に位置する「ラジオスター」役に日替わりゲストを起用するなど外部の俳優を積極的に起用している。桂亜沙美と中村龍介もそう。

「僕は3年連続3回目の出演です」とは「青年」役の中村。少年社中との出会いは?
「主宰の毛利さんが脚本を担当した作品にはよく出させてもらっていたんですが、3年前の『天守物語』で呼んでいただきました。“1年目にやった役と違う役が見てみたい。2年目にやった役と違う役が見てみたい”と言っていただきまして、今回も出演させていただくことになりました」

 相当信頼されているようだ。
 中村「僕はもうホームのような感じでいます。“ただいま”って感じです。僕も芝居が大好きなんで、意外とすんなりでした」

 桂は今回が初の少年社中。
 桂「中村君が出ていた去年の『モマの火星探検記〜Inspired by High Resolution〜』を見ました。スピーディーな展開と場面転換が素敵で、現実的でもありながらファンタジー。その作品は火星が舞台なので現実味のない設定でありながら、すごく現実味を帯びている内容だったんです。その矛盾する2つが一緒になっているのがすごく素敵で、私が好きな世界観の作品だなって思いました」

 今回の作品では物語の軸となる「ラジオスター」役が日替わり。ゲストはもちろん大変だが、それに合わせるレギュラーの出演者はもっと大変だ。特に中村はゲストとの絡みが多かった。
 中村「共演者ではあるんですが、同時に勝負しているという感じ。気持ちとしては“俺らはこんだけ稽古しているよ。あなたたちはどうなの”っていう感じのぶつけ合い。それがいい化学反応を起こしている。味方でもあり敵でもあり共演者でもあるという、いろんな感情がありました」

 ゲストによって全然違う。出来も変わってくる。
 桂「違いますね」
 中村「だから毎日初日という感覚だった。みなさんいろいろ考えてくるんですが、何度も一緒に稽古をするわけではないので、どういうプランで来るのか分からない」
 桂「ゲネから変えて来る人もいましたしね。でも私は毎日新しいものを立ち上げられて楽しかったですね」

 俳優としては貴重な体験だ。
 桂「毛利さんは積み上げてきた即興劇という言い方をしていますね」
 中村「ちょっと矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、意外とそれが一番当てはまりますね」
 桂「あんまりガチガチに固めちゃうとチグハグになっちゃうから、フラットでいるというか、その場で感じたことをその場でアウトプットする。舞台って稽古の積み重ねだと思うんですが、それとは逆ですよね」

 リピーターも多かった。
 中村「少年社中の舞台というのは日替わりゲスト目当てじゃなくても、1回見たらもう1回見たくなるというかクセになる中毒性のある作品なんです。映画をスクリーンを通さず、生で見ているという感覚なんですね」

 作品では絶望と希望、建前と本音といった相反するものが描かれている。そういう話は演出家とは?
 中村「今回は僕が演じる“青年”が成長する過程の物語なのでディスカッションはたくさんしました。いろんな絶望があって最後に希望にたどり着く。どうすればその過程を築いていけるかっていうことを話しました」
 桂「私はファンタジーの世界とリアルな世界をどうシンクロさせていくかということを考えていました。でも毛利さんに話したら、“その日の気持ちでやってもらうのがいいんです。その日のラジオスターとライターとの関係をリアルでやってください”ということを言われました」

 その身体能力の高さもあり舞台から多くのオファーがある中村だが、今後は映像の世界にも活躍の場を広げる。今秋に公開された映画『メサイア 漆黒ノ章』ではダークサイドの役柄で異質な光を放っていた。
 桂は9月に第一子を出産。「しばらくはお休みをいただきますが、復帰後にはまた違った自分が出せると思うので、そのときが楽しみです」とのこと。

 少年社中の作品を通じて、役者として得難い経験を積んだ2人は今後どんな活躍を見せてくれるのだろうか。
(本紙・本吉英人)