SPECIAL INTERVIEW 三上博史

社会派サスペンスドラマ『震える牛』主演
 昨年6月、WOWOWで放送され話題となった『震える牛』がDVDで発売。ある殺人事件を追っていた刑事がその真相に近づくにしたがい、さらなる闇が浮かびあがり…。単なる殺人事件だと思われたものが、日本全土を震撼させる大問題をはらんでいた。主演の警視庁捜査一課継続捜査班の田川を演じる三上博史が同作品について語る。
三上博史(みかみ・ひろし)東京都生まれ。高校時代に寺山修司に見いだされ、映画『草迷宮』('79)でデビュー。主な作品に、映画『スワロウテイル』『宮澤賢治−その愛−』、舞台『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』ほかドラマにも多数出演。現在、ドラマ「明日、ママがいない」(日本テレビ系)に出演中。
 毎回話題となるドラマを制作、放送しているWOWOWの「連続ドラマW」シリーズで昨年放送された相場英雄原作の『震える牛』は、食品偽装という難しい問題を取り扱ったドラマとして話題となった。主演の三上博史は、同シリーズの最初となるドラマ『パンドラ』や、池井戸潤の大ヒット作『下町ロケット』などにも出演。これらの社会派と言われるドラマに出演する理由とは。

「どこの局がというわけではなく、僕は攻撃的なものが大好きなので、お話をいただいて役者としてやってみたいと思ったら、出演させていただいているだけです。WOWOWは、スポンサーにとらわれることなく、果敢にタブーだと思われる作品にも挑戦されるので、やりがいというか、すごく楽しいです。最初に出演した『パンドラ』は製薬会社の話で、いろいろな利権が絡み最後は総理大臣まで出てくるという国家的なものすごい話だったんですけど、それはもうWOWOWでしか作れないなと(笑)。そういう意味でも演じる上での選択肢は広いほうがいいと思っているので。例えば小道具なんかでも、いろいろな物が使えたほうがやりやすいですよね。今はドラマの中でタバコを吸うのも、視聴者からのクレームの対象になったり、自主規制しちゃう時代ですけど、キャラクター付けをする上でのひとつの小道具としてはありだと思う。ほんの一例ですが、そうなると何もできなくなって、イマジネーションがどんどん狭められていくんです」

 同作品には、殺人事件、食品偽装、地方都市の荒廃など、さまざまな社会問題が盛り込まれている。
「ちょっと前はWOWOWとNHKぐらいしかなかった社会派というか、企業ものと言われるドラマが最近ではすごく増えてきましたが、それだけではなかなか多くの視聴者に届かないと感じていました。ですから、そういう社会派のドラマをあまり見ない主婦の方たちに見てもらえるものにしたいということで、食品偽装の問題なども取り上げようと。一番スーパーに行って買い物をするのは主婦の方たちだし、そこで手にする食品に関することなら、興味を持って見ていただけると思って。その中で僕は、盛りだくさん過ぎる問題の真ん中で、捜査することに真面目に向き会うことを心がけて演じました。ほかの色気はなるべく消して、なるべく色をつけず、三上博史というイメージも出ないように、スーツや髪形も地味に、地味に(笑)。悲しみとかいら立ちも抑えて、でも後半は個人として男の信念みたいなものが出てくるので、そこは素直にと意識して演じ分けました。殺人事件を捜査したり、食品偽装問題を調べたりしていますが、地方都市のシャッター通りの小さな商店街に住む父親をケアする息子であり、娘を心配する父親であるわけですから。そういう事件に直接絡んでこなくても、シャッター商店街は大企業の大手スーパーとの対比になっていたりとか、無駄のない作品になっていると思います」

 あえて地味にしているという三上。古田新太や佐野史郎など、インパクトのある役者により、逆にその堅実な演技が光る。

「古田さんはずるいですよね(笑)。あの演技は、同じ役者としては指を加えて見てました。しかし、先ほども言ったように僕はあえて抑えていたので、どうぞ存分にやって下さいと(笑)。佐野さんもね、いるだけで何かありそうだなって思わせる役者さんですから。そういう意味ではそれまでの役者の生い立ちで見られることがあるというのは面白いですよね。僕はなるべくニュートラルにしておきたい。作品一本一本にチューニングを合わせてやっていく。それを見て視聴者はイマジネーションをかき立てられるんじゃないかな。この人いい人なのかな、悪い人なのかなっていう見方もできるし、どういう人なんだろうって思いながら物語を楽しむことができる。そういう役者でありたいです。先日能の梅若六郎先生とお話をしていて、すごくハッとさせられたことがあったんです。先生は持ち歌が1000以上あるそうなんですけど、呼ばれればどこにでも行くし、頼まれればどの演目でもやりますとおっしゃったんです。それがプロですからと。それを聞いて僕は好きなことしかやってこなかったし、苦手とするものからは逃げてきたところがあるんじゃないかと…。プロだから求められるものは喜んでやらせていただく、つまり、その準備が常にできているんです。自分と比較するなんておこがましいですが、今後の僕の人生の指針になりました」

 この作品を通して伝えたいことは。

「人間って、善と悪に分けられるものじゃなくて、みんな両方の部分を持っていると思うんです。この作品に登場する人間もそうで、それがリアルということだと思う。白黒はっきりさせようと思っても、人ってそこまではっきりしてないし、実際はグレーなところで生きていることも多い。そういう部分をひとりひとりの人物に対し、立体的に描いているので、見ていて共感していただけるところもたくさんあると思います。また、タイトルにあるように、狂牛病に端を発する食品偽装とか、地方都市の過疎化など難しい問題を扱っていますが、大上段に社会批判をするつもりはないんです。そういうテーマは根底にはありますが、娯楽作品でもあるので、気楽に見ていただけたらうれしいです。とりあえず1本見たら、絶対にやめられない。娯楽作品ですが、笑って終わるというわけではなく、ワクワクやドキドキもあり、重量感というか見ごたえもたっぷりあるので、全編見ていただけたら、いい作品を見たなっていう充実感も味わっていただけると思います。家庭の問題から社会全体の問題まで丁寧に描いていますので、あらゆる層の方がそれぞれの立場で楽しんでいただけるんじゃないでしょうか」
(本紙・水野陽子)
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「震える牛」DVD 
1月8日(水)Vol.1〜3 レンタル開始(レンタルはTSUTAYAだけ)、1月8日(水)セルDVD 3枚組(全5話)発売 特製スリーブ&デジパック仕様 1万1400円(税抜)【発売元】WOWOW【販売元】カルチュア・パブリッシャーズ【販売協力】TC エンタテインメント
「震える牛」に続く相場英雄原作 「血の轍」2014年1月19日より放送中
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