小池百合子のMOTTAINAI 「政治には不可欠な国家的大義と国民の共感」

 東京都知事選挙は、事前の予想通り舛添要一氏の大勝利で終わった。記録的な大雪まで味方につけた舛添氏だが、ホッと一息つく暇もなく、仕事に取りかからねばならない。
 東京五輪の準備をはじめ、福祉、教育、そして日本のエンジン役として首都東京の経済再生など仕事は山積みだ。
 一方、三位に甘んじるという不本意な結果に終わった細川・小泉元首相連合だが、なごり雪は存外根雪となって、ますます小泉純一郎の思いに火をつけたように思う。
「脱原発」、「原発即ゼロ」で自ら再稼働を始めた小泉元首相にとっては、にわかに起こった都知事選挙は絶好のPRの機会でもあった。勝てばベスト。負けても、主張を訴えるチャンス・・・。05年の郵政選挙で見せた、あの小泉首相の執念が急に萎むとも思えない。
 しかし、その動きがメディアが期待するような、新党結成、政界再編につながるとは思えない。「政権交代」の旗印の下だけに集まり、大失敗に終わった民主党の例もある。
 ワンイシュ—政治は、結局、複雑な国家運営にはかえって障害になることがある。
 もう一つの選挙、東京に次いで、今後は大阪の市長選が巻き起こった。
 こちらも「大阪都構想」というワンイシューを巡る動きだ。
 一時は、その一挙手一投足に注目を集めた橋下徹氏だが、突然の大阪市長辞任に、多くの人が冷めた眼差しを向けている。橋下氏の発言を読み解くならば、むしろ政治に飽き飽きといった感が漂っている。本当に橋下氏が再出馬するかも疑わしくさえ思う。
 私は政治は、国家的大義を掲げつつ、国民の共感を得るアートだと考えている。どんなに立派な大義があっても、国民の共感なしには成し遂げられない。人々の共感を得ても、大義が伴わなければ、ポピュリズムに陥る。
 脱原発も都構想も大義はあれど、マジョリティーの共感を呼び起こせてはいない。都知事選の結果は、その一つの証左だろう。
 増税など、共感どころか、反感につながりやすい政策も、ていねいに説明して、大義につなげる作業が不可欠だ。
 元首相や前市長と、出入りが激しい政治の世界だが、国民の多くは政治の安定と経済再生に大義と共感を見出しているに違いない。

 (衆議院議員/自民党広報本部長)