東京から日本を元気に! TOKYO MOVE UP! Special Interview 石破茂自民党幹事長に聞く

なぜいま「集団的自衛権の行使容認」なのか
 日本を取り巻く状況はそんなに安穏としていられるものではない。尖閣諸島周辺では中国の艦船や航空機が毎日のように確認され、北朝鮮では昨年末に№2といわれた張成沢・元国防副委員長が処刑されるなど金正恩第1書記の独裁体制が強まっている。そんな不安定な周辺諸国の状況もあり、安倍政権では「集団的自衛権の行使」容認へ向け、活発な議論が繰り広げられている。そんななか“国防のスペシャリスト”といっても過言ではない自民党の石破茂幹事長に今、日本が直面している問題について直撃した。(聞き手・一木広治)

 歴代の政権では「集団的自衛権」は「持ってはいるが行使することはできない」という見解を持っていましたが、安倍政権では憲法の解釈を変更して、行使容認の方向に進んでいます。どういった理由からなのでしょうか?

「安全保障環境が変われば、従来の考え方も変える必要が出てきます。現在、このアジア太平洋地域においては、かつて冷戦時代に維持されていた軍事バランスが変化しつつあります。アメリカのプレゼンスが相対的に低下すること、中国のこの地域における軍事プレゼンスが上がることは十分に予見されています。また北朝鮮に我々の予想を越えた独裁者が生まれ、核開発、並びにその小型化によって、日本のみならずアジア太平洋全域を射程に収める核搭載ミサイルの開発が着々と進みつつあります。そもそもこの地域においては、領土、宗教、民族、政治体制などをめぐって紛争が起こる可能性も否定できません。このような環境を客観的に考えれば、この地域の公共財としても機能している日米同盟体制を強化すること、かつ今までのハブ&スポーク型の同盟からネットワーク型の同盟に変わっていく中で、日米の関係を今までのような非対称的双務関係から対称的双務関係に近づける努力をすることは、この地域の軍事バランスを維持し平和をより確固たるものにするために必要なのです」

 東シナ海での中国の脅威と米軍の軍事力の低下といったファクターが日本の防衛体制に大きな影響を与えています。

「1996年に台湾で民主化を進める総統選挙が行われました。そのとき中国はその選挙を阻止するために台湾海峡において軍事演習を強行し圧力をかけましたが、米海軍の空母などの派遣により、目的を果たすことはできませんでした。これに大変な危機感を持った中国は、その後、海軍力の増強を着々と図ってきました。そして“アンチアクセス エリアディナイアル”(“接近阻止・領域拒否)という目的を掲げ、第1列島線と第2列島線を定めて、この地域における米艦船、あるいは自衛隊艦船の行動を阻止しようとしています。中国というのは30年や50年といった長いタームでものを考える国ですので、今でこそ、動くか動かないかも分からない、戦闘機が降りられるのかどうかも分からないような航空母艦しか持っていませんが、やがていつの日か米国と比肩しうるような空母機動艦隊を持つ、ということも彼らの念頭にはあるでしょう。もちろん、中国が今すぐに我が国を含む他国に対して急迫不正の攻撃を加えるということは考えにくいことではあります。しかし、我が国の周辺の公海において、航行の自由が妨げられるようなことは決してあってはなりません。我が国は自由貿易の恩恵を享受する国であり、アジア太平洋の海が「公海自由の原則」に則った平和な海であり続けるために、わが国も積極的な役割を果たさなければならないと思います。具体的には海上自衛隊の対潜水艦、哨戒、あるいは艦隊防衛といった能力を引き続き充実させていかなければいけないと思っています」

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