江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 「ネタあらすじ編」

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

大山詣り(おおやままいり)

 寺社にお参りするのが娯楽だった江戸時代。大家さんが長屋の連中を引き連れ、相模国大山の阿夫利神社を参詣することに。今年は酒癖の悪い熊五郎を連れて行かないと算段していたが、それを知った熊公はおもしろくない。去年みたいに酒を飲んで暴れないので、仲間はずれにしないでくれと頼み込む。そこで一同「腹を立てたら2分の罰金、喧嘩をしたら丸坊主」という掟を定めた。そのおかげで行きは何事もなく無事に済んだが、参拝して帰りの神奈川宿でのこと、ついに熊公が掟を破ってしまう。なんでも酒に酔って、風呂場で大暴れ。仲間をブン殴ってしまった。殴られた者は怒り心頭。すっかり酔っ払って高いびきをかいている熊五郎の部屋へ忍び込むと丸坊主に。そして一行は、翌朝熊五郎を起こさず、さっさと江戸へ向かって出発してしまった。熊五郎が朝起きて頭に手を伸ばすと髪の毛がない。「丸坊主にした上、おいていくなんてひどいじゃないか!」早速宿を出ると籠を仕立てて、先に出た長屋の連中を追い抜いてしまった。一足先に長屋に着くと、留守番をしていたかみさん連中を集め、神妙な顔で「残念だが、お前さんたちの亭主は二度と帰ってこねえよ。大山詣りは無事に済んだが、帰りに金沢八景に寄って、船に乗ったら、嵐になって船は転覆。俺一人が浜に打ち上げられて助かったって寸法よ」。しかし普段から嘘つきの熊のことを大家の女房が疑いだしたので、ここぞとばかりに手ぬぐいをとって坊主頭を披露。「おめおめと帰れる立場じゃなかったが、お前さんたちに知らせなければと思って…。だから俺は出家しようと丸坊主にしたんだ」。それを見て、すっかり信じ込んだ女房たち。泣き崩れるかみさん連中に熊公は「亭主の供養のために、頭を丸めて出家したほうがいい」と、全員の髪の毛を剃ってしまった。何も知らない長屋の連中が帰ってくると、どの家にも忌中の札が貼られ、お経も聞こえてくる。何があったかと慌てて家をのぞくと、自分のかみさんが坊主頭に。熊五郎の仕業だと察した亭主連中は激怒し、熊公をとっちめようとする。しかし大家は「めでたいことだ」とそれを諌めて「お山は晴天、家へ帰ってみれば、みんなお毛が(怪我)なくっておめでたい」。