コントといえば「表現・さわやか」でしょ!!  池田鉄洋

 俳優の池田鉄洋(通称イケテツ)が主宰を務めるコメディーユニット「表現・さわやか」が今年10周年を迎えた。それを記念してこれまで上演した100本以上のコント作品の中から約10本を選りすぐった『The Greatest Hits Of HYOGEN SAWAYAKA』を9月24日から下北沢の駅前劇場で上演する。

 表現・さわやかでは1作品に10本ほどのコントを詰め込む。それぞれは一見脈絡のないコントに見えるのだが、最終的にはひとつのストーリーとして結実しているという、なんとも不思議な作品。それもイケテツの構成力と演出力の賜物。その証拠に!? 最近では『バブー・オブ・ザ・ベイビー − UNDEAD OR UNALIVE −』『BACK STAGE』といった外部の大きな劇場での作品の作・演出を依頼され、高い評価を得ている。

「今までは1本の作品で10本くらいコントを作ってきました。でも『バブー』や『BACK STAGE』では1本のコントをストーリーに膨らませることができたんです。やっていることは同じなんですが、そっちのほうが多くの人に分かりやすく受け入れられるということが分かったので、今、コントをもう少し大きな作品にしたいという欲望が強くなってきているんです。なのでこの10周年の公演で、さわやかのコントをもう一回おさらいして、皆さんにお見せしたい。お見せしてここからまた新しいさわやかというものを作っていく、いい時期にしたいと思っているんです」

 もともと表現・さわやかは、イケテツが所属していた劇団である猫のホテルの、面白いのにまだまだ知られていない俳優たちの存在を世間に伝えたい、という思いもあって旗揚げされたもの。

「1時間半〜2時間くらいの作品ができるくらいの、濃いエッセンスが詰まったコントを年間に10本作ってお見せしてきました。これはすごいことだと思うんですが、もっと伝わってもいいなって思うんです。最近、小劇場のお客さんが減っているという実感があるんです。僕らはお陰さまで、多くのお客さんに見ていただけているんですが、昔からのお客さんがそのまま年齢が上がってきて、若い新しいお客さんが増えているわけではない。このままお客さんが減っていってしまったら、つまらないジャンルになってしまう。こういうことを言うと、他の方々から、“お前にそんな使命はねえよ”って言われるかもしれないんですが。もっと若い人、見たことのない人に見てもらえる努力をしないといけない。さわやかはそのつもりでやってきたんですけど、できてなかったから、今までとは違う方法をとらないといけないと思っているんです。そういう意味で今回の公演は来年以降、その次の10年に向けてどういう活動をしていくかというターニングポイントになる公演だと思っています」

 今回は客演としてクロムモリブデンの森下亮が出る。

「8月からの自分の劇団の公演を休んでこちらに出てくれるんです。主宰の青木秀樹さんが快く送り出してくださって、本当に感謝です。それに森下君もうちに出たいと思ってくれていた、というのはすごくうれしかった。森下君との付き合いはすごく長いんです。でも一緒に仕事をするのは初めて。一時期、同じ下宿に住んでいたこともあったんですが(笑)。今どんどん自信をつけていて面白い俳優さんだし、クロムモリブデンは近い匂いを感じる劇団ですので、今回はぴたっとはまるんじゃないかなって思っています」

 ちなみに最近ではわけあって“コメディーユニット”と名乗っているが、設立当初の“苦笑系コントユニット”に戻そうかと思案中。

「もうね、コントとかに対する風当たりは相変わらず強いですよ(笑)。内村さんがNHKでやっている『LIFE』というコント番組が“低俗な番組”って言われちゃう世界ですから。コント職人といわれる方々が真面目に作った番組なのに」

 自分のルーツ、立つ場所にこだわりと愛情を持つイケテツ。どんなにドラマや映画に出る機会が増えても小劇場という存在には大きなこだわりを持つ。

「小劇場の役者がテレビやイケメン俳優が出る舞台に出るようになって、一時期そういうところから流れてきたお客さんもいらっしゃったんですが、最近はそうでもない。イケメン芝居に出ていってもなかなかお客さんを引っ張ってこられない。こういう状況が続くと、僕らは小劇場というものが尻すぼみの時期の劇団になってしまうなっていうのがすごく怖いんです。面白いジャンルであるということを、もう一度見せないといけない。そうしないとイケメン芝居といったものがメーンになって、僕らはその脇役、予備軍みたいな変な状況になってしまう。テレビでは結構そういう構図があったじゃないですか。主役の脇で名バイプレーヤーとして存在していましたけど、舞台の世界でもそうなってしまうのはちょっとダサいと思うんです」

 最近はわざわざ難しく芝居を見ようという観客が増えているような気がする。

「芝居を見に来て、それだけで帰るっていう状況ではお客さんは集まらないですよね。だからちゃんとデートコースになるような芝居を作らなきゃダメかなって思うんです。終わった後に、感想を話せるような。酒のつまみというか、酒がうまくなるような芝居。難しいのは難しいのでいいんですが、きゃっきゃきゃっきゃ言って見られる芝居も作らないといけないなって思います。僕らはそういう芝居は作れていると思うんです」

 リードには“俳優の”と書いたが、実はイケテツは劇作家、演出家、そして小説家という顔も持つ。昨年は短編小説集も発表。今後の小説家としての活動は?

「長編も書いていきたいとは思っているんです。でも役者との切り替えがまだうまくできないんです」

「やりたいことが多すぎて…」というイケテツ。今後もジャンルを股にかけての表現活動になりそうだ。(本紙・本吉英人)

表現・さわやか 10th anniversary!
『The Greatest Hits Of HYOGEN SAWAYAKA』

【日時】9月24日(水)〜10月5日(日)【会場】駅前劇場(下北沢)【問い合わせ】表現・さわやか(TEL:070-5456-9283 [HP]http://h-sawayaka.com/