確かな脚本力で描かれた物語に引き込まれる

てがみ座『汽水域』
 劇作家・長田育恵が主宰となって2009年に旗揚げた「てがみ座」は「戯曲を根本にして立ち上げる演劇」を基軸に作品を発表してきた。

 故井上ひさしに師事した長田の書く戯曲は綿密な取材に基づき、細部に至るまで丹念に描かれている。かといって史実に執着することなく独自の視点で創作された物語は、どこまでが事実でどの部分がフィクションなのか分からないほど。というかもうそんなことはどうでもよく、ただただ作品に引きずり込む力を持っている。

 昨年は『地を渡る舟』が岸田戯曲賞の最終候補にノミネートされており、その脚本力は推して知るべしだろう。

 これまでは江戸川乱歩、金子みすゞといった、ある特定の人物の心理描写を通して、主に大正後期〜第二次世界大戦までの時代を俯瞰し描いてきた。今回は新たな創作スタイルに挑戦。従来の人に寄り添う文体を解体し、特定人物ではなく「場」を物語の中心に据え、通り過ぎていく人物を通して「時の断層」そのものを描写するという。

 舞台はフィリピンと日本。フィリピンの沿岸でシラスウナギを密漁する兄弟とその家族を語り手に、日本とフィリピンそれぞれの視点から国境問題、遺恨、未来といった問題を描く。
【日時】11月28日(金)〜12月6日(土)(開演は月火金19時、水土日14時、木14時/19時。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)【会場】シアタートラム(三軒茶屋)【料金】全席指定 一般 4000円/24歳以下3000円(入場時身分証提示)【問い合わせ】プリエール(TEL:03-5942-9025=平日11〜18時 [劇団HP]http://tegamiza.net/)【作】長田育恵(てがみ座)【演出】扇田拓也(ヒンドゥー五千回)【出演】石村みか、福田温子、箱田暁史(以上てがみ座)、笠木誠、中田春介、廻飛呂男(リボルブ方式)、橋本昭博(Moratorium Pants)、金松彩夏(文学座)、中村シユン、佐藤誓、大西多摩恵