SPECIAL INTERVIEW 増田セバスチャン × 有村架純

伝説的作品が最新の“Kawaii(カワイイ)”スタイルでよみがえる!『くるみ割り人形』
世界を席巻している“Kawaiiカルチャー”の第一人者、増田セバスチャンが、1979年にサンリオが製作した人形アニメーションをリクリエイト。イマジネーション豊かな色彩設計を施し、新たなパートも製作。さらに3D作品としてよみがえらせた。35年の時を経て人形たちに息吹を与えるのは、主人公・クララ役の有村架純をはじめとする豪華な役者陣。クリエイターとして、女優として今最も注目を集める2人が、不思議で深い“カワイイ”ワールドを語る!
 ある雪の夜。少女・クララは、ネズミにさらわれた大切な“くるみ割り人形”を追って、不思議な人形の世界へと迷い込む。人形とネズミの戦いに巻き込まれたクララは、“くるみ割り人形”に隠された悲しい秘密を知り、人形を守ろうとするのだが…。誰もが知る名作を35年前、日本屈指のクリエイターが人形アニメとして作り上げた作品を、大胆にリクリエイトしてよみがえらせる。かつてない試みに挑戦した、増田監督と有村が、『くるみ割り人形』との出会いで感じたこととは?

有村架純(以下:有村)「教育番組などで放送している人形劇を見たことはあるんですけど、特にこれまで、人形劇アニメーションに興味を持ったことがなかったんです。だけど今回、声を演じさせていただくということでオリジナルの作品を見させていただいたのですが、改めて人形アニメーションってすごいなと思いました。この作品は特に、人形やセットがすごく細かいところまでリアルに作られていて、飛び出てきそうというか、人形たちが本当に生きているかのように思えてくるんです。人形アニメーションには、細やかな日本の文化が現れているんじゃないかなと思います。だから、もっと日本の人形アニメーションを多くの人に、海外の方にも楽しんでもらえたらいいなと思っています」

増田監督(以下:増田)「僕は、子供のころにこの作品と出会っているんです。僕は千葉県松戸市出身なんですが、松戸サンリオ劇場というシアターがあって、35年前、オリジナルを見ているんです。それがずっと、強烈な記憶になって心に残っていたんですよ。しかも僕は10代のころに、詩人の寺山修司さんにすごく影響を受けたんですけど、実はもともと旧作の最初の脚本を書いたのは寺山さんで、それをサンリオの社長である辻信太郎氏が子供向けに書き直したんですよ。それを知ったときはちょっと手が震えましたね(笑)。今回、本当に運命的なものを感じました」

 クリエイターとして、役者として、それぞれ乗り越えなければならない壁もあった。

増田「今回、監督を、というお話を頂いたときに最初に思ったのは、自分がやるには恐れ多い、ということでした。すごいプレッシャーを感じて、お断りしようかと思ったほどです。偉大な先人たちが残したものを僕が切った張ったしていいのかと、すごく悩みましたね。でも僕が、子供のころに見た『くるみ割り人形』が心に残り続けて大人になり、クリエイターの道に進んだように、もしかしたら僕が監督した『くるみ割り人形』を見てクリエイターになりたいと思う人もいるかもしれない。それにまた、こういう日本の素晴らしいクリエーションを世界に見てもらえる機会にもなるはずだと思い、それなら引き受けさせていただこう、と決心しました。今回、監督を務めるにあたって意識したのは “過去から未来への接続”。過去の人が作ったものを、そのメッセージ性をしっかり残しつつ、現代の人にも伝わりやすいように僕が置き換える。今、海外でも日本のカワイイカルチャーが流行していますけど、それは偉大な先人たちの礎の上に存在しているものなんだと、若い世代に見せられたらいいな、と思っていました」

 一方、有村も35年前に作られた人形に息吹を吹き込む大変さを感じていた。

有村「すごく難しかったです。今年、スタジオジブリの『思い出のマーニー』で初めてアニメーションの吹き替えをして、自分にとって“声優”とは、まだ足を踏み入れたばかりの世界だったので、すごくプレッシャーや不安もありましたし、アニメとはまた違うんだろうな、と思っていたらやっぱり全然違っていて(笑)。すごく苦戦しました。本当に、アニメとはまったく違う難しさがありました。人形劇の場合、口の動きがはっきりと分からないんです。そこに声を合わせていかなければならないので、とにかく大変でした」

 そんな中、頼りになったのがやはり増田監督の存在だったと有村。

増田「クララは、2人で一緒に作っていったという感じがしますよね」
有村「はい、それは私もすごく感じました。収録の日、監督は最初に2時間ほど、クララの声を一緒に探してくださって、スタジオに入ってからもずっと近くで演出して下さっていたんです。指示を出すときも別室からマイクを通してではなく、私の隣で具体的に指示してくださるんです。監督のほうから私に近づいてきてくれた感じがしました」
増田「普通、アフレコのときにはスタジオの中と外で分かれて、ブースの外から指示するんですけど、僕は初めての監督ということもあり普通のやり方が分からなかったので(笑)。それに、一緒に舞台を作るような感覚でやりたかったんですよね。それで僕もブースに入って隣で手振り身振り交えてやってたんです、映像では分かりませんけど」

 あどけなさが残る少女が、いのちをかけて守りたいものを見つけていく…有村が演じるクララの声は、いつもとはまた違う魅力に満ちている。

増田「実は、クララ役が有村さんだと分かってから有村さんのことをすごく研究したんです(笑)。作品を見たり、CMの声を聞いたりして。そこで僕が感じた有村さんの魅力が、ちょっと甘えた感じの部分。本人は大人っぽいところを見せたい年ごろだと思うんですけど、今しか出せない有村さんの少女っぽい部分、それをうまく引き出せたら今回、成功すると思いました」
有村「最初、私はナチュラルに演じようと思って準備していたんですけど、当日に監督とすりあわせたときに、もう少し幼く甘えた感じで、とご指示をいただいて…(笑)。幼くといっても、声を無理やり作るというよりは、自分の中にある幼少期の感覚を引き出しながら、やってみました」
増田「僕も、単に子供っぽく演じてほしかったのではなく、あくまでナチュラルに有村さんが持っている少女らしさを引き出したかった。僕の中で“これがクララだ!”という有村さんの声があったんです」
有村「自分でも面白いなと思ったのが、クララの声が最初と最後で多少、違っているんです。監督がおっしゃるには、クララが冒険を通して少女から大人の女性に成長したように、私も一緒に成長したから声も変わったんだろうね、と」
増田「収録が終わった時、有村さんがすごく晴れやかな顔をしていたんですよね。もちろん、仕事を終えたという晴れやかさもあったと思うんですけど(笑)。そのとき、僕が探していたクララは有村さんだったんだなと思い至って、自分でびっくりしたんですよね。映像を作りながら僕もクララの人物像をずっと探していたわけですけど、結局それは有村さんだったんだな、と。僕もアフレコを通して、一緒に1つの世界を旅したような気持ちになりましたね」

 見た人がそれぞれ自分で旅をしてほしい。物語の終わりには、監督のそんな思いが込められている。

有村「最後の“おはよう”というセリフも深いですよね。私の中では、旅を通して少し大人になり、目の前には大事な人がいる…その愛しさもこみあげてくる“おはよう”かなと最初思ったんですが、監督と話して、もっと晴れやかで明るい“おはよう”にしたんですよね」
増田「あの部分は、何パターンか演じてもらったんですが、有村さんのいろいろな声を聞いて最終的にこれだと思ったテイクを選んだんです。実は“おはよう”の後、エンディングが始まるまで5秒ほど暗転があるんですが、あれはみなさんに、それぞれの絵を入れてもらおうと作った演出なんです。だから最後の“おはよう”をどう感じるか、見た人それぞれであの真っ黒なスクリーンに浮かんでくる絵は変わってくると思います。実は僕、わりと黒をよく使うんですよ。僕にとって黒は色の1つではなく空間の色。それぞれのイマジネーションによって見える色が違う“色”だと思っています。そういうこともあり、有村さんの“おはよう”はすごく重要なセリフだったんです」
有村「あの暗転の理由を、今初めて伺いました(笑)。そういうことだったんですね。私は、物語が終わって真っ暗になったとき、すごくほっとしたというか安心しました。客観的に見られないからかもしれないんですけど…(笑)」

 今回の出会いで、ますます互いのファンになった様子。

増田「収録の日に初めて有村さんとお会いしたんですけど、その日の終わりには有村さんの大ファンになってました。でもなんだか、終わった後になってようやく有村さんのことが分かってきて、やっとさっき気持ちが通じたような(笑)。まだかな?」
有村「私は最初の段階から通じてると思っていましたよ(笑)」
増田「僕はさっき、ようやく有村さんの目を見ることができるようになった(笑)。僕も、いろいろな女の子と仕事しますけど、有村さんには他の子とは何か違うものを感じます。引き出しの多さとか、芯の強さとか。ときどき自分らしさがぽろっと出るんですけど、そこがまた彼女の魅力になっていて。そういう部分を知ってしまっただけに、今も隣にいるとちょっとドキドキします」
有村「私は今回改めて、監督の自分のこだわりを追求する姿勢がすごいと思いました。きゃりーぱみゅぱみゅさんのPVなども拝見していますけど、監督の手掛ける映像は本当に色鮮やかでポップで、見ている人の気持ちを高揚させてくれる。実際、今回の『くるみ割り人形』を見たら、自分自身が遊園地にいるかのような感覚になれました。あと今日は、初めて知ったエピソードもたくさんありました(笑)。ラストの後の暗転の意味とか、今回監督が新しく作った映像のこととか」
増田「そうなんです。本作のオープニング映像はオリジナルには無くて新たに作ったものなんです」
有村「改めてこの作品の深さを感じました。監督って、映画を見る人のことを本当にすごく考えてらっしゃると感じます。自我を押し付けるのではなく、お客さんが楽しめるように、いつも考えている。周りの人の気持ちを、すごく配慮される方なんだなとも思いました」
増田「ほめすぎじゃない(笑)?」
有村「それと、先ほど初めて見せてもらったんですけど、監督が今回のために書いた絵コンテや資料が、本当にすごいんです」
増田「一応、重要なシーンは全部絵コンテを描きだしたんです。今はなんでもCGで作ることができるけど、やっぱりアナログの持つ強さってあると思うんですよね。そういうのを、現代の子たちにも、“物には魂が宿る”という物作りの素晴らしさを見せたいと思ったんです。今回は3Dでよりそれを感じられると思います。ハリウッドの3D映画だと前面に飛び出すものという印象ですが、今回は日本らしくというか、箱庭の中に顔を突っ込んで動く人形たちを見ているような、そんな感覚になれると思います。今、オリジナルの人形が東京タワーの大展望台で展示されているので、ぜひ映画と合わせて見てもらいたいですね。」
有村「今回、監督と仕事させて頂いて“カワイイ”の意味がちょっと変わった気がします。人形とか犬とか、単にそういう特定のものを指すものではなくなったというか…人形や犬がかわいいのは当たり前じゃないですか。でもこれからは、もう少し違う“カワイイ”を自分で見つけることができそうな気がします」

 誰もが自分のイマジネーションを見出すことができる、不思議でカワイイ世界へ、いざ出発!  (本紙・秋吉布由子)
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『くるみ割り人形』
監督:増田セバスチャン  声の出演:有村架純、松坂桃李、広末涼子、市村正親他/1時間20分/アスミック・エース 配給/11月29日より全国公開
http://kurumiwari-movie.com/http://kurumiwari-movie.com/ 2D/3D