江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 夢金(ゆめきん)

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 山谷堀の吉田屋という船宿。雪の降りしきる夜、2階から船頭の熊五郎の寝言が聞こえてくる。「金をくれ! 百両ほしい、二百両ほしい。金をくれ」。それを聞いた店主があきれていると、身なりも人相も悪い浪人風の男が、上等な着物を着た若い娘を伴ってやって来て、船を出してほしいと言う。しかし船頭はみな出払っており、いるのは熊五郎だけ。店主が「大変欲張りなやつで、お客様に金の無心をしかねませんが…」と言うと、それでもいいと言う。そこで慌てて熊五郎を起こし支度をさせる。雪の夜、渋る熊五郎だったが、客が「酒手を十分に与える」というと張り切って出かけていった。船をこぎながら兄妹という2人を観察する熊五郎。「こりゃ、兄妹じゃないな。駆け落ちか?でもこちとら酒手さえもらえりゃ、なんでもいいんだが…」と独り言。そんな時、侍が船の障子をスっと開け、熊五郎のところへ。奥を見ると娘はぐっすり眠っている。「おい、船頭、船を止めろ」「何でしょう」「実はな、あの娘は妹ではない。犬に取り囲まれて困っていたところを助けたのだ。犬を追っ払い、介抱してやろうと懐に手を当てると、ズシリと重い財布に手が触れた。聞くと二百両入っているという。だからこの娘を殺してその金を奪おうと連れてきたのだ。お前も殺すのを手伝え。分け前はやるぞ」と驚きの告白。熊五郎が断ると「大事を明かしたのだから、生かしてはおけぬ。貴様から殺してやる」と刀に手がかかる。慌てた熊五郎、「分け前はいくらだ?」と聞くと二両との答え。「冗談じゃない。山分けで百両でどうだ。それがいやなら、この船をひっくり返すぞ」と反撃に出た。話がまとまったところで熊五郎は「船の中で殺すと証拠が残るので、中洲に下ろしてそこで殺ろう」と提案。中洲に向かって懸命に船を漕ぎ出した。はやる浪人が中洲に着くなり、船から降りると、熊五郎はすかさず棹を突っ張り、船を出した。「こら!船頭、戻ってこい」中洲で叫ぶ浪人に「ざまあみろ、朝になったら土左衛門だぞ」。その後、娘を親元に届けると、感激した両親が百両という大金をお礼にくれた。その金を思わず握り締めると「痛たい!」。目が覚めるとそこは船宿の2階で熊五郎、自分の急所を思いっきり握っていた。

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