完全復活。『蘇る変態』著者:星野源

 ミュージシャン、俳優、文筆、声優などさまざまなジャンルで活躍中の星野源の最新刊。同書は2011年から2013年まで、女性向けファッション誌『GINZA』に連載していた「銀河鉄道の夜」というエッセイに加筆、修正、新たに書き下ろしを加えたもの。連載開始の直後から著者は、アルバムもオリコンチャートをにぎわせ、主演舞台に主演映画と人気がうなぎのぼり。仕事はどんどん入り、休みもほとんどない状態の売れっ子だった。しかし2012年末、突然くも膜下出血で入院。その後一時復帰するものの脳動脈瘤再発で再び休業、再手術を経て療養生活を送る。そんな怒涛の3年間が詰まったエッセイだが、前半はあくまでのほほんと、下ネタ全開の星野源らしいといえば星野源らしい力の抜けたエッセイ集だ。しかし後半、「ありのままを書こうと思う」という書き出しで始まる「生きる」というタイトルのエッセイからは、壮絶な闘病の様子が綴られている。「生きる」には現場で倒れて救急車で運ばれ、手術室に入るまでの出来事が、緊迫感と少しの笑いを持って描かれている。しかしそのエッセイの最後の一文は「地獄はここから」。次のページの「生きる2」からは、どんなに想像力を働かせても、絶対に理解できないだろうと思うほどのまさに“地獄の苦しみ”を味わった日々が書かれている。しかし、それでも適度なエロと笑いが脱力感を誘い、悲惨ではあるが、悲痛なイメージを読むものに与えない。幸い素晴らしい医師と巡り合い、無事に変態は蘇った。死の淵から“完全復活”を遂げた著者の今後の活動が楽しみだ。



【定価】本体1315円(税別)【発行】マガジンハウス