SPECIAL INTERVIEW 趣里

3月にオーストラ・マコンドー『家族』で小津安二郎の世界観に挑む
 劇団オーストラ・マコンドーが小津安二郎監督の『東京物語』にオマージュを捧げる作品『家族』を3月5日から吉祥寺シアターで上演する。主演を務める趣里は舞台、映画と注目作への出演が続く、今年最も気になる女優の一人だ。
撮影・蔦野裕
 趣里は昨年2月の『さらば箱舟』でオーストラ・マコンドーに初出演した。

「その1年くらい前からオーストラ・マコンドーに出演していた俳優の友人から“趣里と倉本さんは絶対に合うから1回一緒にやったほうがいいよ”って、ずっと言われていたんです。ちょうどタイミングが合って、『さらば箱舟』の時に声をかけていただきました」

 出演にあたっては倉本と演劇の話なんかは?

「特にお話はしなかったですね。友人を通して “やるけど空いてる?” “やりたいやりたい”みたいな感じでした。純粋に倉本さんの作品に出てみたいって思いました。稽古に入ってからも倉本さんの言う演出が素直にすっと入ってきました。いま話していても、なんでだろうとは思います。その後も演劇についてあらたまって話したこともないですね」

 当時、倉本も別の人から“趣里とは絶対に合う”と言われていたというから、ある意味、言葉はいらない2人なのだろう。

 そして昨年夏、趣里と梅舟惟永で二人芝居の二本立てを上演する。そこで倉本は初めての脚本『斜めから見ても真っ直ぐ見てもなんだかんだ嫌いじゃないもの』を書き下ろした。

「まず『カズオ』という作品をやることになっていたんですが、“もう一つ違うテイストの作品もやってみたいから、ちょっと書くわ”といった話になって(笑)。最初は静かな会話劇で、あまり台詞もないような、アートな感じでいくつもりだったらしいんですが、書き始めたら3万字以上のとんでもないセリフ量の脚本になってしまったんです。でも、あて書きでホントに私という人間を見てくれているなって思える作品で、すごく良かった。この二人芝居ができたおかげで自信とか体力、精神力というものがついたんじゃないかと思います。その後にシアターコクーンの舞台に立たせてもらいましたが、あの経験があったから地に足がついた、という感じが持てたのではないかと思います」

 少人数の芝居、特に1人とか2人はきつい。それを二本立てって結構しんどい。

「しんどかったですね。でも空気を支配している感覚、間の取り方ひとつでこんなに空気感が変わってしまうのか、といったことが感じられて、とてもいい経験になりました」

 そして今度は東京物語を題材とした作品。24歳で東京物語って言われても、あまりピンと来ないのでは?

「自宅のテレビの横には小津作品のDVDボックスが置いてあるんです。今回やるにあたって、というわけではなく、1年くらい前からずっと置いてあり、以前からよく見ていました。見ていたというより普通に流れていたという感じですね。父(水谷豊)も母(伊藤蘭)も小津作品が好きだったようで、うちではサザエさんを見るような感覚で当たり前にあるという感じ。なので、倉本さんに“小津さんをやるよ”と言われたときも“なるほど”と違和感がなかったです」

 劇中、趣里が演じる紀子は古風で奥ゆかしく、最近ではなかなかお目にかかれない女性だが…。

「言葉遣いも古風な感じですよね。現代に置き換えているのでよりそういう感覚を持たれるのかもしれません。でも、それがかえって不思議な感じを生み出していて、これが倉本さんの書きたいことなのかなって思うと、それはそれで腑に落ちるところではあります。現代でもこういう感覚って持つと思うので、言葉には縛られなくていいのかなと思っています」

 本人は!? 内面は落ち着いている感じ?

「落ち着いてもないんですけど、キャピキャピはしていないと思いますね。友達もあんまり多いタイプではないですし(笑)。性格的にも深く狭くというタイプだと思います」

 深く狭くは役者向きなのでは。

「こう見えて意外に大人数は苦手だったりとかします。顔合わせとかはすごく緊張するタイプ。でも今回は共演した方が多いのでとても心強いです」

 家族がテーマ。自分の性格的なものも家族との関係からくるもの?

「私は一人っ子なんですが、父と母とは、どこかきょうだいみたいな感覚もあって、“ああしなさい、こうしなさい”という感じではないんです。特にこの仕事をするようになってからは、娘というより一人の人間として話してくれている感覚があります。だから最近はすごく深く分かり合えるようになったように思います」

 作品の設定のような、親戚のおばさんがやたらうるさいといった昭和感漂う家族関係なんて理解できる?

「うちは父方の家族が多くて、おばあちゃんがまだいたころはお正月にみんなで集まるんです。血はつながっていますが、頻繁に会うわけではないので、少しよそよそしい感じじゃないですか。だから“(すまし顔で)いただきます”みたいな感覚はすごく分かります。紀子を見ると、娘でさえそういう感じだったから、今になって “お母さん、こういう感じだったのかって” 思いますね(笑)。そう思うと、役を作るにあたっては母がモデルになるかもしれません。私の中であこがれの女性でもありますし」
 つい最近もセーラー服を着て高校生役で舞台に立った。見た目が若いので、それはそれなのだが、今までは癖のある設定の役が多かった。今回の役は未亡人。振り幅が大きい。

「映画などでも最近振り幅が大きくて。高校生をやったと思ったら、副社長みたいなものもありました。今回の役は“受け”ですよね。色がついていないといえばついていない。確かに今までやった役はアクセントがある役が多いですね」

 アクセントはいざとなったら寄りかかれて便利なところもある。そう考えると紀子は逃げが利かない。

「番手の最初に“趣里”と自分の名前がくるのは、二人芝居が初めてでしたので、今回また主演ということですごく責任を感じています。裏で流れているテーマをしっかり感じて、受けだけどちゃんと紀子という人物の感情などもコントロールできるようにしなければ、と思っています」

 この1〜2年の趣里の活動は活発だ。この作品が終わってすぐ4月には赤坂RED/THEATERで地人会新社の海外戯曲に挑戦する。しばらく目が離せない。(本紙・本吉英人)
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オーストラ・マコンドー『家族』

【日時】3月5日(木)〜15日(日)(開演は平日19時30分、土日14時/18時。※15日(日)は14時開演のみ。月曜休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)
【会場】吉祥寺シアター(吉祥寺)
【料金】全席指定 前売3500円、当日3800円/前半割 前売2800円、当日3000円/学生割 前売2500円、当日2800円/リピーター割 500円割引(観劇済半券呈示)
【問い合わせ】オーストラ・マコンドー (TEL:070-6654-1336 [HP]http://www.austra.tv/http://www.austra.tv/)
【作・演出】倉本朋幸【出演】趣里、松本紀保、久保貫太郎、枝元萌、後藤剛範、カトウシンスケ、MOGMOS、松永大輔、でく田ともみ、豊川智大、康喜弼、伴美奈子 ほか