『ソロモンの偽証 前篇・事件』で実力派女優に大成長! 石井杏奈

E-girlsのメンバーとしても活躍する一方で『だいじょうぶ3組』など多彩は作品に出演し、俳優としても着々と成長を続ける石井杏奈。そんな彼女が、約1年ものオーディションでつかみ取った難役で、さらなる成長を遂げた!
 ベストセラー作家・宮部みゆきの最高傑作ともうたわれるサスペンス巨編を、『八日目の蟬』で日本アカデミー賞を総なめにした成島出監督が前後編で映画化した超話題作。1人の男子生徒の“自殺”がもたらす疑惑の波紋。広がり続ける不穏な事態に生徒たちは子供たちだけで裁判を行い真実を明らかにしようとする…! 物語の主人公は中学生で舞台も中学校という設定ながら、誰がどんな真実を隠しているのか最後まで分からないスリリングなドラマは、大人の目も引き付けて離さない。物語ばかりではない。さまざまな思惑、苦悩を抱える中学生を演じきった若手俳優たちの気迫も、本作において特筆すべき点となっている。その中で、ひときわ陰のある存在感を放っているのが、事件の重要な鍵を握る少女・樹理。演じたのは、E-girlsのメンバーであり、若手実力派として注目を集めている石井杏奈だ。

「オーディションとワークショップで約半年ほどかけたので、樹理役が決まった時には本当に感激でした。オーディション期間の最初のほうは、ずっと自分との戦いという感じでしたね。あきらめたり弱気になったりする自分に負けないように、という気持ちでした。それが終盤は、他の候補者と一緒にワークショップをしていたんですが、1週間ずっと同じメンバーなので、だんだんライバルなのに仲間になっていて。お互いに刺激を受け合って、一緒に頑張って、でも負けたくないという気持ちでした。あの1年が、本当にいい経験になったと思っています」

 彼女が演じた樹理は、寡黙な表情で“隠された真実”を観客に匂わせる難しい役。

「本当に難しい役だなと思いました。樹理って二面性があって、台本を読めば読むほど人物像が分からなくなっていくんです。でも逆に、なぜ樹理はこんなことを言ったんだろうなどということを考えるのが楽しくもありました。役作りをしていくなかで樹理のバックボーンを自分なりに考えてみたり、物語の前後を描くエチュードを演じてみたり、いろいろなことをやりました。そのおかげで樹理の二面性に迫っていくことができたと思っています」

 エチュードというのは、本編に描かれていない場面を即興などで自由に演じてみる稽古のこと。

「いろいろなシーンでエチュードをやるうちに、自然と自分の中から樹理の言葉が沸いてくるようになりました。それ以外にも、号泣するシーンを撮影する直前に、劇中の樹理の親友・松子からの手紙をサプライズでもらったんです。あのシーンは、手紙を読んだときの気持ちのままに演じたので、自分でも思い出深い場面になりました。ここまで共演者同士と絆を深めあった作品はこれまで無かったように思います」

 まさに、若手俳優たちのポテンシャルを最大限に引き出した成島監督。現場で監督の姿は、若手女優の目にどう映っていたのか。

「すごい方だな、といつも感じてました。全然、厳しい感じはしないんです。樹理の人物像についても、監督のイメージと私のイメージを一緒に確認してくれるので、私自身、樹理の一つ一つをきちんと受け止めながら役作りをしていくことができました。ちゃんと私のことを見てくださっているんだと感じました。私だけじゃなくて全員のことを(笑)。撮影はストーリー順ではなく行われていたので、みんなときどき混乱しそうになったんですけど、その時の役の感情と違う演技になると、すぐに注意されていました。少しの演技の違いも見逃さないなんて、やっぱりすごい監督なんだなと思いました。ほめられたことは…あまり無かったかな(笑)。でも最後、クランクアップしたときに、監督から“よく頑張りました”と言葉をもらって、本当にうれしかったです」

 成島監督や、共演する仲間たちの存在があってこそこの役を演じ切ることができた、と石井。女優としての成長ぶりに“E-girlsの石井杏奈”ファンも驚くはず。

「E-girlsのときのパフォーマンスと、俳優としてのときの違いを楽しんでもらえればうれしいですね。メンバーたちからも映画を見にいくねと言ってもらっているので、感想を聞くのが楽しみです。ファンの皆さんが何も知らないでこの映画を見たら、ちょっとビックリしますよね。今回は役作りでニキビの特殊メイクもしているので私だって分からないかもしれない(笑)。でも、このメイクにも助けられたところが大きかったと思ってます。最初にニキビのメイクをした自分を見た瞬間、樹理になった!と思うことができたので。でも撮影で毎回メイクしているうちに、だんだん慣れてきてしまって、ニキビを付けたままなのを忘れて、そのまま帰りそうになったりしてました。スタッフさんから慌てて止められて気づきましたけど、危うくそのまま電車に乗るところでした(笑)」

 そう笑う朗らかな笑顔に、樹理との共通点は見出せそうにないが…。

「今回は、普段の私とはまったく違うタイプの人物を演じたことで成長した部分もあったんじゃないかと思っています。でも、このクラスの中で誰と一番友達になりたいかというと、私はやっぱり樹理なんですよね。演じることで本当の樹理を知ることができたからだと思うんですけど。〈前篇・事件〉では裁判までが描かれるんですが〈後篇・裁判〉では、そういうことがどんどん明らかになっていくので、楽しみにしていただけるとうれしいです」

 二面性どころか、多面的な人物を演じることができる女優として、今後期待大の存在。1年以上もかけて磨き上げた彼女の“偽証”に注目を。(本紙・秋吉布由子)
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『ソロモンの偽証』
原作:宮部みゆき 監督:成島出 出演:藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈他/2時間1分/松竹配給/〈前篇・事件〉全国公開中。〈後篇・裁判〉4月11日より全国公開 http://solomon-movie.jp/http://solomon-movie.jp/