東京で再発見!新旧クールジャパン part.2

日本で活躍するフランス人クリエイターが語る 「ハリウッドではなく日本でアニメを作りたい理由」

 日本に来て約10年。「日本語も日常会話と業界用語は何とか話せるようになりました(笑)」とロマンさん。「フランスでは70〜80年代生まれの多くは、日本のアニメを見ながら育ってきたんです。『UFOロボ グレンダイザー』『キャプテン翼』『キャプテンハーロック』…、本当にたくさんの日本のアニメがテレビで放送されていて僕も子供時代は夢中で見ていました。でも日本に興味を持つようになったのは、プロになるべくアニメの勉強を始めたころからです。作り手としてアニメを意識するようになり、改めて日本のアニメはすごいと思ったんです」。

 華やかなハリウッドではなく日本のアニメ業界で働きたいと思った理由とは? 「日本のアニメのほうが面白いからですよ。例えばディズニーの『ターザン』と比べると『もののけ姫』がいかに奥深いか、美しいか。そもそも他の国ではアニメは子供のものという認識が強いんです。日本では幼児向けから大人向けまで、いろいろな作品があります。こんなの日本くらいでしょうね」。クリエイター視点でも大きな違いがあるという。「最初に興味を持ったのは製作費の安さでした。なぜハリウッドの10分の1以下の予算でこれほどの作品ができるのか。ハリウッドでは予算が多いので、膨大な量の映像を作るけど、本編に使われる映像は半分以下。一方、日本ではちゃんと必要な映像を、各自が責任もって仕上げる。しかもハリウッドのスタジオだと優秀なクリエイターが何年も“いろいろな岩”のパターンをモデリングしてたり、一つの作品で“煙”のエフェクトだけをしていたり、なんてことが当たり前。日本のほうがモチベーションが高いし、良いものが作れると思いますよ」。

 今回、TAAFで審査員を務めるロマンさん。「今回のフェスティバルでは、普段テレビアニメで見ないような作品も多く上映されるので、ぜひアニメファンでない人も多彩な作品に触れてもらいたいです。そして日本のアニメ文化の多様さを改めて感じてもらいたいと思います。日本人が持っているアニメの技術や表現は他の国には無いものなんです。それはやっぱり日本が60年代からずっとアニメを作り続けてきたからこそ。手書きアニメが今もこれだけ作られているのは日本くらい。海外で日本のアニメはブームというわけではなく、すでに趣味の1つとして定着しています。日本のアニメの素晴らしさを伝え続けながら、国や文化を超えて刺激を受け合うことで日本のアニメ界がより活発化すればいいと思っています」。

ロマン・トマ
1977年フランス生まれ。名門の美術学校・ゴブランを卒業後、アニメーションクリエイターとなる。自身の原作・監督作『オーバンスター・レーサーズ』(日仏合作)を機に日本で活動。その後『バスカッシュ!』『スペースダンディ』などに携わる。