競技としてのポテンシャルを証明したK-1

 新生K-1となってから3回目の大会となった「K-1 WORLD GP2015 IN JAPAN〜−55㎏初代王座決定トーナメント〜」。

 昨年11月の第1回大会では「−65㎏初代王座決定トーナメント」が行われ、“K-1復活”というキーワードと久保優太、HIROYAといったかつてのK-1で全国に名を売った選手の出場もあり、大きな話題を呼んだ。しかしトーナメントでは山崎秀晃、久保、左右田泰臣という日本のトップ選手が揃ってタイのゲーオ・フェアテックスに敗れ、主役の座を奪うことはできなかった。

 今年1月に行われた大会では「−60kg初代王座決定トーナメント」が開催されたのだが、大会前から話題をさらったのは“史上最大の兄弟ゲンカ”といわれた卜部弘嵩、卜部功也の兄弟対決。決勝で実現した2人の対決は、その内容も話題性も文句なしで、会場も大きく沸いた。ただ惜しむらくは、兄弟対決というサイドストーリーがどうしてもクローズアップされがちで、競技としてのポテンシャルを証明することは次回に持ち越された。

 しかし今回の「−55㎏初代王座決定トーナメント」はこれといったサイドストーリーも特になく、純粋にK-1という競技の復活を印象付ける大会となった。決勝で対戦した武尊と大雅は試合内容だけで超満員の観衆を熱狂させた。

 優勝した武尊はふだんは−58kg級で戦う。しかし11月大会では55kgに階級を落としてまでワンマッチに出場するほどK-1への思い入れは深い。その時は大雅に逆転のバックブローで失神KO勝ちを収めた。

 この2人は昨年11月大会で対戦が決まって以降、ことあるごとに舌戦を繰り広げてきた。特に武尊の“口撃”はすさまじいものがあった。ただそれも、試合後の会見で武尊が口にした通り、大雅の実力を認めてこその言葉。大雅は決勝こそダメージを考慮し、玉砕気味のファイトとなってしまったが、準決勝の寺戸伸近戦では持ち前の出入りの早さとテクニックを披露。タフな寺戸をKOで葬り、Krush−55kg王者としての実力を見せつけた。

 今後、KrushとK-1をまたにかけての武尊と大雅のライバルストーリーの行方も気になるところだ。

 今大会では武尊という新たなスターが誕生したが、トーナメント優勝者以外でも木村“フィリップ”ミノル、野杁にTKO勝ちしたマサロ・グランダーといった魅力的な選手たちが続々と生まれている。かつてのような奇抜なマッチメークで耳目を引くような時代は終わったようだ。

 K-1は次回は7月4日に「−70kg初代王座決定トーナメント」が開催される。