岡田将生『ウーマン・イン・ブラック 黒い服の女』で2度目の舞台に挑む 

SPECIAL INTERVIEW
 俳優の岡田将生がこの夏、パルコ劇場で2度目の舞台に挑む。その作品は同劇場で6度にわたって上演されてきた『ウーマン・イン・ブラック 黒い服の女』。今回は翻訳、キャストを一新。加えてオリジナル演出家のもとでの上演と期待度の高い作品となっている。
 この作品は1987年に初演された後、1989年からロンドンのウエストエンドにあるフォーチュンシアターでいまだに上演中。今年の6月で26年目のロングランとなっている。またこれまで世界40カ国で上演されるなど、世代や国民性などを超えた普遍的な面白さを持った作品だ。

 日本では1992年に斎藤晴彦、萩原流行というキャストで初演され、その後は斎藤の相手役が西島秀俊、上川隆也と変遷しつつ2008年まで6回上演された。今回は斎藤が演じた「役者」役を勝村政信、「キップス」役を岡田将生が演じる。

 岡田は昨年11月、蜷川幸雄演出の『皆既食 −Total Eclipse−』で初舞台を踏み、高い評価を得た。まず初舞台の時のことを振り返ってみると…。

「映像作品のように1カットごとに感情を作っていくのではなく、感情の起伏が自然に流れていくのが今までにはないことで、新鮮でした。そして最後にお客さんから拍手をいただくことが、あんなに充実感を与えてくれるものだとは思っていなかったので、すごく感動してしまって、もう一度あの感覚を味わいたいと思いました。辛いことはそんなになかったです。怖かったのは、初日に初めて舞台に立つとき。“死んでもいいや”というくらいの気持ちでした。カッコよくいっているわけではなく、本当にそういう感情だったので、またそれが待っているかと思うとちょっと辛いなとは思います。でも何事もそうで、楽しいこともあれば辛いこともある。それを乗り越えて、芝居ができたらいいなと思っています。映像でもクランクインの前の日は眠れないということもありますが、それとは違うモノ、自分の中ではひかれるモノがたくさんあった。今回もまたひとつ舞台のいいところと違う一面を知ることができるというのはうれしいですし、糧にしていきたいと思っています」

 もともと舞台はやってみたかった?

「以前から舞台は25歳までにやりたいと思っていました。 “毎日同じ芝居をしていると飽きる”と言う人もいらっしゃるみたいですが、自分の性格とすごく合っていたみたいで、そんなことはありませんでした。突き詰めてやっていくと、毎回演技も感情も変わっていく。蜷川さんには“感じたままにやってほしい”と言われていたので、充実した日々が過ごせて、毎日楽しかったですね。前作でなんとかやり遂げることができたので、もしお話があればまたやりたいとは思っていました。前回も今回もタイミングがとても良かったと思います」

 舞台出演後、俳優としての変化は?

「台本への向き合い方が変わりました。舞台では役に携わる時間がものすごく長いので、毎日役について考えていました。休みの日でもずっと。今までやったどの作品よりも長く役について考えていました。それは映像のときには体験したことがないことで、今ではとてもいい体験だったと思っています。蜷川さんには“どれだけ芝居を楽しむか。その一瞬一瞬を役で生きろ”ということをよく言われていました。その教えも今後忘れることはないと思います」

 ずいぶん短いスパンでの2本目。2年続けての舞台となる。

「もう一度やりたいなと思っていたところにこうやって声をかけていただけて、うれしかったです。パルコ劇場で、それも勝村さんとの2人芝居というのも魅力的でした」

ただただこの物語に引き込まれて“もうやるしかない”と思った

 脚本を読んでどんな感想を?

「どういう結末かも全く分からないまま読んだんですが、ただただこの物語に引き込まれて行きましたし、鳥肌が立ちました。読み終わった時に作品の世界観に、すごく入り込んでいました。この物語に引き込まれている時点で、もうやるしかない、やりたいと思いました。2人で進めていく面白さと恐怖と不安と混乱といったものが、自分の頭の中でイメージできているんですが、それを芝居でどう見せていくかということはものすごく大変。でもこんなに面白いことはないと思ったので、できるかどうかは分からないですけど、やってみたいと思いました」

 二人芝居は大変。といっても前作もほぼ二人芝居に近い作品だった。

「確かに生瀬さんと2人だけのシーンは多かったです。今回も二人芝居をやるというと“大変なところに行きますね”と言う方が多いですね。でも先に大変なところへいって、成功したり失敗したりすることが今後の糧になると思うんです」

 失敗を恐れないタイプ?

「そんなことはないです。毎回落ち込むこともあります。ものすごく荒れる時期もあります。でも役者という仕事をしていく以上、付き合っていくしかない」

 結構な長台詞。それも独唱に近いもの。覚えにくそうなものが多い。

「自分が普段使う言葉ではないのでなかなか頭に入らないんです。不安にさせないでください(笑)。今回は台本が難しくて、なんで二人芝居なんてやるって言っちゃったんだろうって思いました(笑)。でも勝村さんに“先輩、台詞が入りません”と言ったら“大丈夫。僕もだ”って言われました(笑)」

 前回できなかったこと。やり切れなかったこと。前回からの課題は?

「あのときは結構切羽詰っていたというか、自分ができる精いっぱいのところまで挑戦していたので、終わった後に今までにないくらいの達成感がありました。なので舞台が終わった後、1カ月くらい空っぽになっちゃってました。だからやり切った感は結構ありました。もちろん課題はあるんですが、それは作品によって変わるものだと思っています。稽古が始まって、やっていくうちに新たな課題が見えてくると思うので、今は特にはないです。稽古で見えてきた課題を千秋楽までに自分の中でどう克服できるか。演出家の話を聞いて自分の中でどう変化を見せていくかということはあると思いますが、今の段階では課題より、ただただ不安しかない。出演が決まってから、たまに台詞が出ない夢を見ることもあったりしますから」

 それでも挑む。

「こういうチャンスがあるなら、逃す必要はないと思っています。まだ若いですし、失敗することに意味があるという考え方ですので、挑戦してみようという気持ちは常に持っています」
勝村さんとの濃密な時間。吸収できることはなんでも吸収したい

 勝村政信とはドラマ『聖なる怪物たち』で共演。よく知った間柄?

「いつも的確なアドバイスをしてくださいます。共演させてもらったときも、“それはダメだ”“それはいいけど。これはダメだ”というふうにはっきり教えてくれるんです。言葉で言ってくださる方、態度で示してくださる方とさまざまな先輩がいるんですが、勝村さんは“俺はずっと蜷川さんのところにいて、そういうことに関して黙っていられないタイプだ”っておっしゃっていました。そういう、お芝居とずっと向き合っていた先輩と濃密な時間を共有できるということは、自分の今後のためにも、ものすごく必要だと思っているので、今回は勝村さんととことん舞台を突き詰めていきたいと思っています。先日、勝村さんと本読みをする時間があったんですが、ダメ出しが多すぎて、2幕にいけなかったんです。でも僕にとってそれはうれしい時間。約2カ月一緒にやらせていただくので。時間を無駄にせず吸収できることはなんでも吸収しようという気持ちでいます」

 パルコ劇場の十八番ともいえる作品。過去に演じた萩原流行、西島秀俊、上川隆也とはどうしても比べられてしまいそう。

「勝村さんとも話しているんですが、今回、キャストを変えてやるという意味は、前回とは違う作品にはしなければいけない。それを超えなきゃいけないんだということだと思うので、今のことしか考えていません。僕たちなりの『ウーマン・イン・ブラック』を作ろうという話をしましたので、そういう心構えでいます。比較されるという点では、映像作品でも漫画原作の作品だとどうしても比較されることはありますので、自分の中では昔から割り切ってやっているところもあります。お客さんの反応もずっとつきまとってくるものなので、気にしてもしようがない。そんな時間があったら、もっと集中してやるべきことをやったほうがいいと思ってやっています」

 前作は結構シリアスな役だった。今回の役はどんなイメージ?

「今回の役はそんなにシリアスでもないんですよね。僕が演じるキップスは熱い男というか、使命感にあふれている。それを“役者”の僕が演じるということが重なっていけばいいなというか…。だからすごくシリアスでホラーなのかもしれないけれど、その中にも結構笑えるところとかたくさんあると思うんです。まあ稽古が始まっていないから何とも言えないんですが、多分そういうところがやっていくうちにどんどん出てくるんじゃないかなって思います。やっていくうちに“あれ? ここってすごく笑えるポイントなんじゃないのかな”とか。ちょっとちぐはぐな部分もありますし、勝村さんが演じる“キップス”もどんどん変化していきます。そういうところは案外笑えるところなんじゃないかなって思っているんです」

 6月まで放送されていたドラマ『不便な便利屋』では鈴木浩介、森崎博之、井之上隆志ら演劇畑の俳優たちと共演。ロケで長い時間を過ごした。

「鈴木浩介さんなんかはたくさんの舞台に出ておられて、いろいろなお話を聞かせていただきました。でもみなさんに “勝村さんとの二人芝居なんて贅沢すぎる”って言われました。僕もそう思いますし、でもそんなチャンス逃すはずがないですよね」

 失敗を恐れずあらゆることに挑戦し続け、役者としての経験値を高めている岡田。稽古場での濃密な時間を経て、8月7日の初日にどんな姿を見せてくれるのか楽しみだ。

 ちなみに今回は演出家が外国人だが「僕も勝村さんも英語はダメみたいです(笑)」とのこと…。 (本紙・本吉英人)
パルコ・プロデュース公演『ウ−マン・イン・ブラック〈黒い服の女〉』 

【日時】8月7日(土)〜30日(日)(開演は日月14時、火土14時/19時、木金19時。水曜休演。※14日(金)は14時開演。30日(日)は19時の回あり。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)
【会場】パルコ劇場(渋谷)
【料金】全席指定 8500円/U-25チケット5000円(観劇時25歳以下対象・当日指定席券引換・要身分証明書)※U-25チケットはチケットぴあにて前売り販売のみの取扱い。【問い合わせ】パルコ劇場(TEL:03-3477-5858[HP]http://www.parco-play.com/web/)
【原作】スーザン・ヒル【脚色】スティーブン・マラトレット【演出】ロビン・ハ−フォ−ド【翻訳】小田島恒志【出演】岡田将生/勝村政信