「全世界空手道選手権大会」開催迫る 緑 健児 新極真会代表 INTERVIEW

 4年に一度のフルコンタクト空手世界最高峰の大会『第11回オープントーナメント 全世界空手道選手権大会』が10月31日〜11月1日に開催される。かつてこの大会を制し、現在「全世界空手道連盟 新極真会」の代表を務める緑健児代表に大会の見どころを聞いた。
(撮影・蔦野裕)
 まずこの大会が世界中の空手家にとってどれだけ重要な大会であるのだろう。

「極真空手の創始者である大山倍達総裁はかつて“4年に一度の空手オリンピック”とおっしゃっていました。日本はもちろん海外の選手にとっても、世界大会は出場することによって、その後の人生が変わるくらいの大きな意味を持つ大会です。その国を代表して出場することによって、将来は支部長といった指導者としての道も開けてきます。カラテワールドカップという階級制の大会も4年に1度、世界各地で開催しているんですが、この世界大会はずっと日本で開催しています。空手をやっている者にとって日本は聖地であり、あこがれの地。だからサポーターの人たちもこの大会のためにこつこつ貯金をして日本にやって来ます」

 大会は無差別級で行われる。最近は細かい階級分けがなされるスポーツが多い中、無差別で行われる意味は? 無差別級でなければいけない意味とは?

「階級制だと軽量級の選手などは“自分の階級のチャンピオンになればいい”というように満足してしまう傾向があるんです。どんな相手と戦っても、体が小さくても勝てる。小よく大を制す。これが武道の醍醐味でもあるので、無差別級は今後とも続けていきたいと思います。しかしオリンピック種目になることがあれば、階級制を取り入れなければいけないので、ちょっと武道としては逆行するところもあるんです。しかしこのオリンピックという夢はずっと持ち続けながら、最高峰は無差別級という両輪でいきたいと思っています」

 スポーツとしての空手と武道としての空手は別。何が別? 

「武道の素晴らしさというのは、倒すか倒されるかという真剣勝負の中で、お互いにすべてを出し切って戦って、最後は心の強い選手が勝つということ。最後、極限にまでいったときにあきらめてしまう人は負けてしまう。これが武道の素晴らしさです。そしてその心の強い人間というのは優しい。強くなればなるほど人に優しくなれるというのが武道の教え、精神でもあります。また空手を通して、真剣勝負で戦った者にしか分からない友情というものも芽生えてきます。今もかつて世界大会で戦った選手たちが海外で支部長になって、ともにこの組織を盛り上げてくれている。そういった絆とか、言葉が通じなくても一生ともに歩める仲間が世界中に増えていく。これも武道の精神によるところだと思います」

 例えば柔道も日本が発祥で、かつては長く王座を守ってきたが、最近ではその片鱗も見られない。そんななか、新極真会が王座を守れているのはなぜなのか?

「ノンコンタクト空手もフルコンタクト空手の各団体もみんな海外の選手に王座を明け渡しています。私たち新極真会だけが第1回から第10回まで日本が王座を守り抜いている。 “伝統継承”といっているんですが、それは自分たちの代で王座を海外勢に絶対に渡したくないという、強い信念とプライドがあるからです。今回の第11回大会は世界王者に2度輝いた塚本徳臣のようなスターや絶対的なエースはいないんですが、総合力では負けていないと思います。初出場の選手が多いんですが、ユースから強化に取り組んできた世代の選手たちで、今までの大会に比べて勢いがあります。女子も前回は日本が王座を守っているので、男女ともに今回も優勝するという強い気持ちを持って一生懸命頑張っていますね」

 今大会の注目選手や見どころは?

「今回の外国勢は強豪ぞろいです。特にブルガリアのヴァレリー・ディミトロフ選手。現在ヨーロッパ最強といわれていて、日本選手には脅威の存在です。ロシアのナザール・ナシロフ選手も侮れません。日本勢では総合力で優れている島本雄二選手がエース格として期待されています。22歳の山本和也選手は最近は目に見えて実力をつけていて、勢いがある。山本選手のような選手がもし世界チャンピオンになったら、これからの空手界を引っ張っていくようなスターになれるのではないでしょうか。体が大きくて力で押し負かすというスタイルではなくて、技が多彩で華麗な組手を見せる。なおかつ若くてハンサムですし」

 山本はJFKO全日本大会で、中量級でありながら重量級に出場し、巨漢の落合光星に真っ向勝負を挑み勝利を収め優勝した。緑代表自身、軽量級ながら、世界を制した。山本には自らをだぶらせるところもあるのでは?

「自分が勝ったとき、大会前に大山総裁から“君が勝てば小さい人間も夢を持てるようになる。小さくても勝てるんだ、と空手界が変わる”というメッセージと“死力達成”という言葉をいただきました。その後は軽量級、中量級の選手がなかなか無差別では勝てないというのが現状です。山本選手が勝てば、またそういう時代がくるんじゃないかなって思います」


 空手家のインタビューを読むとよく「心」とか「絆」という言葉が出てくる。心、絆というのはいま日本に一番足りないものに思える。

「武道空手を通して、そういったものをもう1回復活させていきたいと思っています。昔はクラスに正義の味方というか、いじめをさせないために活動するような子がいたと思うんですけど、新極真会で空手をやっている子供たちの中にも、クラスでリーダーシップを取っていじめをなくしていこうとしている子供たちも多いんです。教育という面においても、強くて優しい子供たちをこれからもっともっと輩出していきたいと思っています。これが青少年の育成、社会貢献にもなっていくと思います」

 世界大会は2日間にわたって行われる。一撃必殺の迫力や楽しさもあれば、2日目などは世界のトップ同士のしのぎ合いといった別の観点の楽しみ方もある。

「2日目は各国のチャンピオン同士の戦いが多くなってくると思います。そういう選手たちは立ち居振る舞いも違います。今回はKWUというロシアを中心とした80カ国の加盟国を有する団体が参戦してきます。非常に強い選手の揃った団体です。新極真対KWUという構図はもちろんですが、外国人同士でも他流試合の要素も強くなって見ごたえのある大会となっていると思います」

 個々の選手のパフォーマンスに注目するのもいいが、日本人選手たちのチームワークといったものにも注目したい。

「僕らの時代もそうだったんですが、僕が日本の選手たちに言っているのは、自分のブロックから外国人選手を勝ち上がらせない、止めるんだということ。それが第一目的。もし負けてしまったとしても、次に戦う人のために最後まで死力を尽くして戦う。それが選手たちに課せられているんです。それが絆ですね」
(本紙・本吉英人)
10月31日−11月1日 東京体育館『第11回オープントーナメント 全世界空手道選手権大会』
【日時】10月31日(土)〜11月1日(日)(初日9時開場、10時試合開始/決勝日9時開場、10時試合開始)
【会場】東京体育館(千駄ヶ谷)
【チケット問い合わせ】サンライズプロモーション東京(TEL:0570-00-3337=10〜18時 〔HP〕http://sunrisetokyo.com/)