江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE[お見立て(おみたて)]

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

  明治のころ、吉原遊郭では花魁が通りに向かって姿を見せ、客を呼ぶ「張り見世」というシステムがあった。ここでは妓夫といわれるいわゆる男性店員が「よろしいのをお見立て願います」と口上を述べながら、品定めさせたり、客を取ったりしていた。ところで、今日もせっせと通って来たのは、田舎者の杢兵衛大尽。お目当てはもちろん花魁の喜瀬川。

 しかし喜瀬川は顔を見ただけで虫唾が走るほど、この男が大嫌い。しばらく来なかったからあきらめたと思っていたのだが、まったくその気はないらしく、喜瀬川が部屋に来るのをソワソワと待っている。どうしても会いたくない喜瀬川は妓夫の喜助に「病気で入院していると言っておくれ」と命令。まったく乗り気はしないが喜助が杢兵衛の部屋に行き、事情を説明すると「あんだ!? 病気かね。そらいげねえ。見舞いに行ってやんべえ。病院はどごだ? 早く教えろや」と言い出した。こういう場所だから教えるわけにはいかないと言っても食い下がる。「少々お待ちください」と言って喜瀬川のところに報告に行く喜助。「お見舞いに行きたい? なんだいしつこい男だね。私はそういうところも嫌なんだ。だったら、いっそ“喜瀬川は杢兵衛大尽が久しくいらっしゃらないので、恋い焦がれて死にました”って言いな」。そんな嘘はつきたくないが、小遣いをもらった喜助は、渋々杢兵衛の部屋へ。

「実はあの…喜瀬川花魁はお亡くなりになりました」「なに!? 喜瀬川がおっちんだ? 病名は…恋い焦がれ…。それは悪い事をした。仕事が忙しくての。じゃ、せめて墓参りに行くんべか。喜瀬川の墓はどこにあるんだ?」「えーっと、さ、山谷です」。もっと遠い所を言えばいいのに、とっさに口から出たのが、近所の墓地。仕方なく、喜助は杢兵衛と連れ立ち、山谷へ向かう。途中大量の花と線香を買い、適当な墓に花をどっさり飾り、線香をいっぺんにたき、辺りを煙だらけにして、墓の名前が見えないようにした。杢兵衛「喜瀬川、許してけんろ…ゴホゴホ。お前がそんなにおいらの事…ゴホゴホ。あんでこだに線香たいてるんだ!」といって煙を払うと別人の名前。「や、これは違う人の墓だべ。こっちけ?いや、こっちは子どもの墓だ。えっ、こっち? これは戦死者の墓でねえか。一体喜瀬川の墓はどこにあるんだ!?」「はい、たくさんございますので、よろしいのをお見立て願います」