三重県から日本を元気に 鈴木英敬さん(三重県知事)

地方創生 ×TEAM2020 JAPAN MOVE UP!日本を元気に!

地方創生を推進し、日本を元気にするために、各市町村が行っている取り組みを紹介する不定期連載。JAPAN MOVE UPの総合プロデューサー・一木広治がさまざまなキーマンに鋭く迫る集中企画。

撮影・蔦野裕

 三重県は移住促進プロモーションの一環で、著名人を起用したウェブ動画「三重Uターンサミット」を公開するなどユニークなPRを行っていますが、それも含め「MIE NEW PROMOTION」の概要や今後の展開について教えて下さい。

「三重県は地方創生の中でも、住民の減少についての対策に重点を置いています。現在、転出する人が年間約3000人いる中で、そういう人たちに向かって、大学などで1回転出しても、就職の時に戻ってきて下さいと。あるいは三重県のライフスタイルを気に入って、Iターンで移住していただく。そのための情報発信をしっかりやっていきたいと思っています。最近自治体のプロモーションビデオが流行っていますが、うちではグルメや観光などのトータルな魅力ではなく、あくまでUターン、Iターンで定住していただく事に特化した形で、三重県出身者のチャンカワイさんと足立梨花さん、そしてバドミントンの小椋久美子さんに出ていただき「三重Uターンサミット」を作成しました。また、昨年の4月から東京・有楽町に「ええとこやんか三重 移住相談センター」というものを開設しました。4月の開設から8月までの4カ月で、約500件を超える相談があり、そのうち6割が20代、30代の人たちだった。移住したい理由も “旦那がインド人なので子育てしやすい所でインド料理屋をやりたい”とか“海が好きなので海の近くでカフェをやりたい”とか、また単純に“三重に行ってみたい”とかいろいろ。そういったこともあり、若い人たちに、“三重に住んだらこういうライフスタイルがあるよ”っていうのを提示していこうと。これまでの自治体の移住政策といえば、空き家を紹介しますとか、最初の1年間は家賃を半額にしますとか、そういうのばかりだった。でも家を紹介してもらうより、本当に知りたいのは、働く場所があるかとか、子育てするのにいい街なのかとか、介護施設はどうなっているのかっていうことだと思うんです。ですから、Uターンを考えている人や、地方に移住を考えている人にトータルでイメージアップしたり、また相談に乗ってあげられる体制を整えたりしつつあります」

 なるほど。生活がイメージできる提案ですね。さて、いよいよ今年は5月に伊勢志摩サミットが開催されますが。

「世界的にまだまだ知名度が低い三重県にとって千載一遇のチャンスです。伊勢神宮とか松阪牛とか鈴鹿サーキットとか、ワードは知っているという人がいても、トータルの認知度は低い。この機会に知名度を高めることで、インバウンドとマイスの誘致、そして次世代の育成を推進したいと考えています。一部民間シンクタンクの試算によればサミット後、インバウンドとマイスの誘致で、5年間で1110億円の経済効果があるということなので、サミット後の知名度を生かして観光客と国際会議が誘致できればと思っています。また伊勢志摩サミットの関連行事としてG7を中心とする中高生が、桑名市で「2016年ジュニア・サミット in 三重」を開催します。その子どもたちとの交流をサミット後も継続し、次世代の育成に取り組んでいきたいと思っています。また、住民のみなさんがサミットを開催できたという誇りを強く持ち、その後の地域づくりに積極的に参加していただけたらという思いもあります」

 大変そうですが、知事の若さとバイタリティーで成功させて下さい。ところでサミットが終われば、リオオリンピック、そして2020年へのカウントダウンが始まりますが。

「東京オリンピックは、東京だけの話じゃなくて、地方も一緒に当事者意識を持って盛り上げることが大切だと思います。三重県は2018年にインターハイ、2021年には国体と全国障害者スポーツ大会が行われます。つまりサミットが終わったら三重県はスポーツイヤーが続く。ですからまずは競技力の向上と施設の設備をやって、三重県のスポーツを発展させ、いい選手をどんどん輩出していきたい。そこには、オリンピックのレガシーも付け加えていければと考えています。また、プロスポーツもあまりないので、企業も含めもっとスポーツを応援する機運を盛り上げていきたい。そのためにキャンプ地の誘致やオリンピアンとの交流なんかもどんどんやっていければと思っています」

 素晴らしいですね。では都市部に住む読者にメッセ—ジをお願いします。

「三重県は1世帯当たりの貯蓄額が全国1位で、持ち家比率は全国7位。しかし労働時間は全国で5番目、高齢者の医療費が全国で8番目に低いので、お金は貯まり家を持て、働く時間が少なくて健康(笑)。そんなライフスタイルが実現できるところなので、今後のライフスタイルを考えた時に、生活する場所として選んでほしいですね」

鈴木英敬
1974年生まれ。東京大学経済学部卒。1998年通商産業省(現:経済産業省)入省。2011年4月に三重県知事に当選。全国最年少知事となり現在2期目。首都圏での営業拠点「三重テラス」開業、企業投資促進制度「マイレージ制度」を創設するなど政治手腕を発揮。世界経済フォーラム ヤング・グローバル・リーダーズのメンバー。内閣府 少子化危機突破タスクフォース構成員などを歴任。長男誕生時には知事として2例目となる育休を取得。2015年10月に「イクメンオブザイヤー2015」特別賞受賞。妻はシンクロナイズドスイミング五輪メダリストの武田美保さん。