初めて知った尾州毛織物その実力に圧倒される!

一宮市主催 地方創生発信型ワークショップ リポート

『一宮市主催 地方創生発信型ワークショップ BISHU SPECIAL LESSON ―“デザイン×尾州毛織物”が生み出すモダンファッションを学ぶ―』 が3月26日、代官山にて開催された。日本随一の毛織物の産地・愛知県一宮市の魅力を伝えてきたイベントシリーズのフィナーレとなったこのイベントには、学生を中心に約80名が参加。日本の外で活躍している尾州毛織物に触れながら、その美しさや実力、その魅力を作り出す職人の技術に関心していた。

左から、愛知県一宮市の中野正康市長、シアタープロダクツのデザイナー・武内昭氏、スペシャルゲストの水沢アリー、中伝毛織株式会社のテキスタイルデザイナー・岩田直子氏、三越伊勢丹のバイヤー・池田和史氏

 3月26日、ファッショントレンドを発信する渋谷区代官山に世界に誇るメイドインジャパン、尾州毛織物の情報が集まった。羊毛、糸、それを使ったサンプルなどに直接触れられるとともに、尾州毛織物を取り巻く状況や環境、その実力を現場の声を通じて知ることができるシリーズで、国内における毛織物の一大産地である愛知県一宮市の魅力を広くに伝えることも目的としている。イベントはこれまで東京、そして一宮市で開催され、それぞれ市長や区長といった自治体の代表者、生産者、流通業者、そして地域創生プロジェクトを手掛けてきた面々などが集まり、いろいろな角度から議論を重ねつつ、求められている商品やウィンウィンのコラボ例など、尾州毛織物の新しい一歩のために、さまざまな取り組みやプロジェクトの提案が行われてきた。

 先日行われた 『一宮市主催 地方創生発信型ワークショップ BISHU SPECIAL LESSON −“デザイン×尾州毛織物”が生み出すモダンファッションを学ぶ−』は、シリーズ第3弾であるとともに、そのフィナーレとなるものだ。パネラーには、尾州毛織物を手掛ける中伝毛織株式会社のテキスタイルデザイナー岩田直子氏を始め、シアタープロダクツから目を引くアイテムを発表し続けているデザイナー武内昭氏、長きに渡ってムーブメントを作り続けている三越伊勢丹のバイヤー池田和史氏、そして最近自らミシンを踏んで洋服を作り始めたというタレントの水沢アリーが並び、熱を帯びたトークが交わされた。客席もこれまで以上に将来や卒業後の進路に向き合う学生で埋まったこともあり、これまでの回とは少し趣向を変えて、より尾州毛織物の現実に即した内容に。それによって、尾州毛織物のすばらしさや、何をするにしても現場に足を運ぶこと、素材を良く知ることが大切であるということが伝わるセッションだった。

ニット地の制作過程にくぎづけになる出席メンバー

尾州毛織物の魅力を再発見

 尾州毛織物は、ステージの上下構わず、参加した人すべての視線をくぎ付けにした。お腹を見せて毛を刈られる羊の姿を映し出したスライドの「毛を刈ってあげないと病気の元にもなる」(岩田氏)という説明に会場は大きくうなずき、羊1頭から取れるウールはセーター1枚になるかどうかと知らされると自らのセーターに優しく手をはわせる人も多数いた。その後も、羊毛から糸へ、そしてその糸がさまざまな工程を経て繊維になるまでといった過程に静かに歓声やため息が漏れた。ニット地の部分では当日ニットのワンピースを着用していた水沢が「大切に着なくちゃ」と、ワンピースへの想いを新たにした様子だった。また、尾州毛織物というメイド・イン・ジャパンの素材への興味も深めたようだった。

 シアタープロダクツの武内氏もまた、近年尾州の毛織物の魅力を再発見した1人だ。先日発表された2016秋冬のコレクションで尾州毛織物を採用。求めていた素材であることが一番の理由だが、美しさ、確かな仕事、技術の正確さ、そして職人とコミュニケーションを取れることなど、他の生地や産地にはない、独特な魅力があるという。

「欲しい素材を探す場合もあれば、素材からアイデアが膨らむ場合もある」と武内氏。それに対して中伝毛織・岩田氏は「デザイナーの想いが伝わるとモチベーションが違う」と話している。

 尾州毛織物から新たなファッション、世界に発信できる新しい日本のイメージが生まれてくることは間違いなさそうだ。

尾州毛織物の産地・一宮市の魅力を発信する
一宮市主催地方創生発信型イベントシリーズ


 一宮市主催地方創生発信型イベントシリーズは、尾州毛織物の産地である愛知県一宮市が尾州毛織物をテーマに展開してきたイベント。東京と一宮市で計3回のイベントが行われ、尾州毛織物の国内での認知度を高めるための方法、効果的かつ意味のあるコラボの考え方、尾州毛織物の魅力など、アングルを変えて展開されてきた。一宮から発信するのはもちろん、若者に同市のファッション産業に興味を持ってもらうのも狙い。