【FUJI ROCK FESTIVAL REPORT】20回目のフジロックで最高の夏

 夏休みも中盤に入り、見回せば日本各地で夏フェスが開催されている。7月22日から3日間、日本の夏フェスを代表するフジロックフェスティバルが新潟の苗場スキー場で開催された。20回目のスペシャルなフジロック。音楽、人、カルチャー、さまざまな要素が入り混じりあったフェスの模様をリポートする。

1.貫禄のレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。20回目のフジロックを華やかに演出した 2.幻想的なライブを繰り広げたシガーロス 3.エンターテイナー、ベック! 4.挨拶がバラバラで八代は大笑い! 5.加藤、曾我部、中納は圧倒的なボーカルでパワーを注入!

初回のラインアップと豪華ゲストで盛り上がる!

 20回目のフジロックフェスティバルを、山の天気も祝ってくれたようだ。ほぼすべての日程で雨は降らず、レインブーツもレインジャケットもいらない天候。その代わりにじりじりと照りつける太陽と、砂埃と格闘しながらのフェスになった。

 参加者は前夜祭を含む4日間で、のべ12万5000人に達した。比較的参加しやすい土日にはそれぞれ4万人と、より多くの人が会場に足を運んだ。どのステージにも、多くのファンが駆けつけ、お気に入りのアーティストのパフォーマンスに拳を振り上げたり、目を閉じて体を左右に揺らしたりして、思い思いのスタイルでフジロックを堪能した。

 国内外から200超のバンドやグループ、アーティストが出演。パワフルな出演ラインアップのなかでも特に熱い視線を集めたのが、3日目のヘッドライナーを務めた米ロックバンドのレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、そして2日目のヘッドライナーの米アーティストのベックだ。ともに1997年に台風の直撃に見舞われた第1回に出演している。

 レッド・ホット・チリ・ペッパーズは、最新アルバム『ザ・ゲッタウェイ』収録の『グッドバイ・エンジェルス』でキックオフすると『ダニー・カルフォルニア』『スカー・ティッシュー』と、オーディエンスが待ちわびていた曲を惜しむことなくプレー。MCは「(苗場で)白い竜を見そうになったんだよ。そんな匂いがするだろ」というボーカルのアンソニーのエピソードの披露程度に留め、メンバーはステージ上をぐるぐると動き回りながら、新旧の名曲を繰り出し、会場で一番大きなグリーンステージ揺らした。アンコールになると、アンソニーは今も鍛え上げられている上半身を披露。ラストは『ギヴ・イット・アウェイ』でしめた。

 ベックはヘッドライナーながらも、夜7時半とまだ明るさが残る時間に登場。フェスティバルを控えて発表されたインタビューで主催者が、ベックが当日新幹線で(東京に)戻りたいという理由で、出演時間を繰り上げたことが明かされていたこともあり、演奏が始まるまでの待ち時間もステージエリアはその話題で持ちきりだった。今年はベックにとっても名盤と称されるアルバム『オディレイ』のリリースから20周年という記念すべき年。そのためか、セットリストはベック祭りといっても過言ではない名曲だらけの構成だった。水玉のシャツ姿で登場すると、『デヴィルズ・ヘアカット』『ブラック・タンバリン』をプレー。そして早くも『ルーザー』では、オーディエンスも巻き込んでの大合唱に。現在のベックを聴かせる曲、往年の名曲を交えたエンターテインメントシップあふれた構成で観客を圧倒した。「このまま朝まで出てもいいんだけど……」というトークには、「帰れなくなるよ!」という優しいレスポンスが飛んでいた。

 日本勢も盛り上げた。特筆すべきはフジロックバンドのROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRA だ。トータス松本、仲井戸”CHABO”麗市、クリス・ぺプラーらが1日限定でバンドを組み、エンターテインメントシップにあふれたロックンロールショーを展開。毎年スペシャルなボーカリストを招くことでも知られていて、今年は八代亜紀が登場。「ブルースの女王」として紹介された八代だったが、自ら「演歌歌手の八代亜紀です」とあいさつ。心地良く晴れ上がった空を仰ぐと「ビールがおいしいわね」。そして「冷もいいわね」とにんまり。「でもお酒はやっぱり温めの燗!」と観客のハートをがっちりつかむと『舟唄』を歌い上げた。中日最後の出演者は、FRF 20th SPECIAL G&G Miller Orchestra。この日のために結成されたスペシャルなジャズオーケストラで、ボーカルは曾我部恵一(サニーデイサービス)、加藤登紀子、中納良恵(EGO-WRAPPIN’)が担当。タイトでコンパクトなセットリストで彩った。観客がいつまでも名残惜しくステージ前に残っていたが、バンマスの「解散!」の声で笑顔で会場を後にした。

 20回の開催で来場者数は累計200万人に達した。21回目は2017年7月28、29、30日に、新潟・苗場スキー場で行われる。

写真上:サイト内を流れる川でBABYMETALを聴こうとするチャレンジャーも!同下:Suchmosの心地良いサウンドに海を感じた!

BABYMETAL、Suchmosが苗場を揺らす

 ニューカマーたちも最高のパフォーマンスでオーディエンスを魅了した。

 最終日の午後、少し雨をパラつかせて登場したのは、世界でもその名を轟かせるBABYMETALだ。この日は朝からBABYMETALのTシャツやタオルといったグッズで身を飾った人たちが目につき、出演時間が近づくと、ファンはいうまでもなく、「見られるなら見ておくか」という観客で2番目に大きいホワイトステージはぎゅうぎゅうになった。もともとフェスサイト奥への導線で人数の規制が入りやすいステージで、通路では動けず、ステージ前方に若干スペースを残すような人気ぶりだった。メンバーが登場するころには、気にならなかった雨粒が少し大きめに。フェス期間中ほどんど雨は降らなかったため、BABYMETALは雨まで呼ぶグループと会場もヒートアップ気味だった。ステージサイドも豪華で、同じ日にヘッドライナーを務めるレッド・ホット・チリ・ペッパーズのメンバーを筆頭に多くのアーティストが詰めかけていた。ステージは自己紹介的な『BABYMETAL DEATH』でキックオフ。神バンドの演奏に支えられ、『ギミチョコ!!』、『イジメ、ダメ、ゼッタイ』、彼女たちの代表曲である『KARATE』を含め、全8曲を演奏。ライブ終了時には、「移動しながら見よう」といったタイプの人たちも彼女たちの虜になっていた。

 Suchmos(サチモス)も多くのオーディエンスを集めたアーティストだ。和製ジャミロクワイと称される心地良い楽曲が人気でラジオで火が付いた。もともとは海に近しいアーティストだが、フジロックでは山に囲まれてのライブパフォーマンス。金曜午後の苗場に自然と体が動き出すアーバンサウンドを響かせた。ボーカルのYONCEは、右に左に体をクネクネと動かし、ステージを右に左にと移動しながら新曲を含めて、9曲を繰り出した。ラストを『Life Easy』で締めくくると、飛び切りの笑顔を見せた。

 この他にも、昨年ホワイトステージを満杯にしたオオカミバンド、MAN WITH A MISSIONが一番大きなグリーンステージを昼間から満杯にするなど出演バンドの成長も見られた。

注目のアトミックカフェ参加者と意見交換も

 20回目のフジロック直前、あまりフジロックになじみのない人の“引っ掛かり”になってしまったのが、フェス内で行われている「アトミックカフェ」の企画だ。反原発などをテーマに、アーティストや専門家がトークするもので、今年は、SEALDsの奥田愛基氏が出演。奥田氏は「政治が面倒くさいのは、自分と意見が違う人と話すのが面倒くさいから」としたうえで、「面倒くさいを超えていかないと」と話した。