【RIZIN】日本の年末はやっぱり格闘技じゃなくっちゃ!! part.1

12月29、31日 さいたまスーパーアリーナ
昨年に続き、今年も年末に格闘技のメジャーイベント「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2016 無差別級トーナメント 2nd ROUND/Final ROUND」(12月29、31日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)が開催される。無差別級トーナメントが軸とはなっているが、ワンマッチにも国内外のさまざまな団体のトップランクの選手が集い、他では見られない斬新なマッチメークが並び、大きな注目を集めている。本紙ではなかでも注目の2選手に話を聞いた。 (本紙・本吉英人/撮影・蔦野裕)
撮影・蔦野裕
川尻達也
「勝ち負け以上のもの、僕にしか出せない生きざまを見ている人に伝えたい」


 川尻達也は2004年に修斗で世界ウェルター級王座を獲得。その後PRIDE、DREAMというメジャーイベントに活躍の場を移し、常に日本の総合格闘技の最前線で戦ってきた。2014年からは世界最高峰の舞台であるUFCに参戦。トップランクの選手と互角の戦いを繰り広げた。

 そんななか、今年10月に自らUFCにリリースを申し入れ、RIZINへの参戦を決めた。その日の朝にUFCから正式な文書を受け取った川尻は、午後に行われたRIZINの会見に直行。参戦を表明し、クロン・グレイシーとの対戦を要求し、実現することとなった。

 UFCに参戦中も今も拠点を故郷の茨城県に置く川尻は、週に4日は自らの運転で都内のジムに練習のために通うというハードな毎日を送っている。

「練習前はその日どういう練習をしようか、帰りは練習の反復や反省といったイメージトレーニングの時間にもなっているんです。他にも試合はもちろん、会見で話すことなんかについてもいろいろな考えが浮かんでくるので、結構僕にとってはいい時間かなって思っています。気持ちを切り替える時間でもあるし、イメージする時間でもある。会見で話すいい言葉ないかなっていうのも、車の運転中に考えたりとかしています(笑)。参戦表明の会見で使った宮本武蔵の言葉も運転している時にぱっと思い浮かんだものでした。それでも遠いですけどね、片道2時間くらいかかるんで(笑)。あとは茨城が好きなんです。東京に住むよりは茨城でのんびりしたい。茨城の人のマイペースなところが結構好きなんです。通える距離ですし、全然苦ではないですね」

 クロンはヒクソン・グレイシーの次男でグレイシー柔術の正統継承者。総合格闘技はまだ3戦ながら、前回のRIZINでは所英男に一本勝ちとその実力は折り紙つきだ。今回は間違いなくぎりぎりの勝負になる。勝敗を分けるのはどのへんになる?

「どちらが先に相手を叩き斬るか、斬り殺すかという戦いになると思うんです。多分一瞬のミスが命取りになる。真剣の斬り合いじゃないけど、そういうミスをしないようにして相手のミスを逃さず一発で仕留める。そういうことを意識して練習しているし、そういう戦いになるんじゃないかと思っています」

 まるで侍と話しているかのよう。

「クロンはMMAの戦績はまだ少ないとはいえ、グレイシー一族です。生まれた時から“戦う”ということが日常にある、生まれながらのファイターだと思っているので、そういう意味では今までの戦いと比べてもより気は抜けない。僕は二十歳をすぎてから格闘技を始めたので、ファイターとしてはクロンからみたらまだまだ若造。その辺も気をつけつつ、しっかり対抗したいなと思っています」

 UFCの時の試合前の気持ちと今の気持ちって違いはある?

「UFCの場合はつまらなくても、退屈な試合でも勝った先にしか未来がないので、とにかく勝つことだけしか考えていなかった。もちろんどの格闘技でもそうなんですけど、UFCの場合は特に。英語が分からないと本当にコミュニケーションが取れないので勝つことでしか表現できない。日本のファンも勝っただけで満足して喜んでくれていました。ただ今回のRIZINでの戦いは、勝つだけでは満足してもらえないし、それ以上のことを求められているというのは自分でも感じているので、そういう意味ではファイターとして、もうワンステップ上にいけるチャンス、自分を高められるチャンスかなって思っています」

 今回の試合でいうと、川尻は勝利は絶対条件としてプラスアルファを見せなければいけないという思いでリングに上がる。クロンは勝つことに集中してくるはず。そうなると二重のハンディなのでは?

「でも所戦とアーセン戦を見る限り、クロンも勝つためにどんどん攻めてきていました。退屈な試合をする選手ではないので、それに対して僕がどう勝負できるか。ビビらずに攻めたいですね。負けない戦い方もできると思うんですけど、そうじゃなくてとにかく勝つための、KOするための戦い方をしたい。そして自分の殻を破りたい。まだまだ強くなれると思っていますから」
 勝利と“それ以上のもの”を見せなきゃいけないという思いは、究極の場面では相反することもあるかも?
「僕の中には試合に対する目標や理想があるんですが、UFCにいたときは自分の中にあったそういうものをすべて押し殺して勝つことだけに集中していました。それがすべてだし、そうじゃないと生き残れないと思っていたんですが、クロン戦では自分もワクワクドキドキするような、楽しめるような戦いをしたい。その結果、見ている人も絶対楽しんでもらえると思うし、なにより自分が納得する、自分が“ああ楽しいな、格闘技って最高だな”って終わった後に思えるような試合をしたいですね」

 川尻は以前から会見などで対戦相手に辛辣な言葉を投げかけ、ファンやメディアをざわつかせる。今回も「寝技になったらあきらめる」といった気になる言葉を発し、みんなが注目せざるをえない状況を作り上げた。

「いかに周りを巻き込めるかだと思うんです。勝っても負けてもお客さんが楽しんで、次に物語が続くような、ということは若いころから考えていましたね。まあ僕は人一倍負けてきているので、それで終わらないようにしないといけないとは思っていました」

 3年ぶりの日本でのファイト。ファンにはどんな川尻達也を見てほしい。そして見せたい?

「そもそも、RIZINではずっと解説をしているから“川尻って引退したんだ”って思っている人がたくさんいると思うので、“この人現役だったんだ”ということをまず知らせたい(笑)。そしてデビューして16年、いろいろな経験をしてきて、いろいろなきつい思いもしてきた僕にしか出せない生きざまを見せたい。試合はもちろん大事ですが、試合以上のもの、勝ち負け以上のものが見ている人に伝わればいいかな。というか伝えたいと思います」

 やる以上はメインで戦いたい?

「メインは無差別級グランプリの決勝じゃないんですかね? 僕はどこでも…。いや、メインがいいですかね(笑)。最後のDREAMもメインでしたからチャンスがあれば、ぜひメインでお願いしたいです」
五味に対しては“お前のいる場所はそこじゃねえだろ”

 先日、大晦日にRIZINの裏で「魔裟斗vs五味隆典」の試合が「スタンディング特別ルール」という形で行われることが発表された。その日にRIZINへの参戦が発表された北岡悟は「格闘技っぽいもの」という独特の表現でこの試合をぶった切った。両選手と戦ったことのある川尻はどう思っているのか?

「いや~どうなんすかね? はっきり言っていいんですか?(笑) 引退した人の戦いを見て何が楽しいのかなって思うし、もう一人のほうに関しては“お前のいる場所はそこじゃねえだろ”っていうことですね。ぬるい試合やってないで、こっちに来ればいいじゃん、って。本当に強い五味隆典を見せられるのは僕との試合だと思います。やっぱ同い年で同じような時代を生き抜いてきたからこそ負けたくないと思うし。そういう意味では引退した人間とやってもつまんないでしょ、って」

 北岡は自分の試合をその試合の裏で流してほしいとも言っていた。

「それが本音だと思いますよ。だって、引退したのに、毎年やってたんじゃ、ボクサーのトップなんて1年に1回しか試合しなかったりすることを考えたら、現役と変わんないじゃんって。なんだろう…。 “何がやりたいんだ、こら!”って感じですよね。長州力さん的に言ったら(笑)」