根本宗子作・演出の新作舞台は不安定な人間関係を巧みな演出で描く会話劇

追っかけの3人を演じる高田聖子、猫背椿、新谷真弓(左から)

 M&OPlaysプロデュースの舞台『皆、シンデレラがやりたい。』(東京・本多劇場)が2月16日に初日を迎えた。

 M&OPlaysはこれまで岩松了、倉持裕といった日本を代表する劇作家・演出家を迎え、クオリティーの高い作品を提供し続けてきた。その作品は、例えば倉持なら自らが主宰を務める劇団、ペンギンプルペイルパイルズではなかなかできない作風だったり、接点のなかった出演者を起用したりといった、M&OPlaysならではのもの。

 今回は昨今の演劇界を席巻する『月刊「根本宗子」』の主宰で、劇作家・演出家、そして女優の根本宗子を作・演出に迎えて送る。

 物語はまだ売れていない男性アイドル、一之瀬陸の追っかけの3人の女を中心に繰り広げられる会話劇。一之瀬の彼女(こちらは地下アイドル)が一之瀬との写真をSNSに投稿したことをきっかけに巻き起こる騒動…騒動といってもこの3人の中で起こるさまざまな対立と葛藤を中心に軽快な会話劇で一気に描き切る。

 3人の追っかけを演じるのは高田聖子、猫背椿、新谷真弓という演劇界屈指の芸達者たち。ちょっとした言葉や出来事で敵が味方に味方が敵に――3人という人間関係が一番ややこしくなる状況を阿吽の呼吸で演じる。

アイドルの彼女を演じる新垣里沙(左)とそのマネジャー役の小沢道成

 やがて彼女とそのマネジャーも加わり、物語はなおもややこしい方向に。彼女を演じるのは新垣里沙。新垣の出現でそれまでのややこしい3人という人間関係の構図が落ち着くのかと思いきや、巧みな脚本の構成と演出で、ドタバタは一向に収まる気配を見せない。

 そして、ただ一人の男性の登場人物であるマネジャーを演じる小沢道成と猫背の義理の娘役で出演する根本も随所で流れを止めたり煽ったり…。

 こういう絡まった人間関係は根本宗子の真骨頂ともいえる部分で、時にいらっと、時ににんまりさせるようなエピソードを盛り込み、観客を物語の中にぐいぐいと引き込んでいく。

 2月26日まで下北沢の本多劇場で上演中。公演の詳細はM&Oplays(http://morisk.com/)で。