【江戸瓦版的落語案内】野ざらし(のざらし)

Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE【ネタあらすじ編】

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 時は明治の初め。職人の八五郎が長屋で寝ていると何やら隣から女の声が。翌朝、早速隣の部屋に住む、武士の隠居・尾形清十郎の元に行き、昨夜の女について聞いてみた。何のことかととぼける清十郎だったが八五郎のあまりのしつこさに事の真相を語り出した。

「実はあの女はこの世の者じゃないんだ。おぬしも知っての通り、私は無類の釣り好き。昨日も向島まで行って釣りをしたのだが、雑魚1匹釣れない。諦めて帰ろうとしたところ葦の中に野ざらしになった髑髏が一つ。哀れに思い瓢の酒をかけてやると、気のせいかうっすらと赤みがさしたように見えた。そして供養の拙句を手向けて帰ってきたのだ。その晩戸をたたく者がいる。問うと『向島の葦の中から来ました』と答えたので、狐狸妖怪がたぶらかしに来たのだろうと用心深く戸を開けると、そこには十六、七の美しい娘。なんでも『あんな所に死骸をさらし、迷っていましたがあなた様の回向のお陰で浮かぶことができました。お礼に肩を揉み、腰などをさすりに参りました』と言われ、結局一晩幽霊と過ごしたのだ」と言う。

 それを聞いた八五郎、この世の者でなくても、あんな美人と一晩過ごせるならかまいやしないと、尾形から強引に釣り竿を借り、向島までやってきた。そこで無理やり座り釣り糸を垂れると「鐘がゴンとなりゃさ、上げ潮南さ、鳥がパッと飛び出しゃさ、骨(こつ)がある、サーイサイサイ?」と歌い踊り出す。うるさくて魚が逃げちまうと、周りの人が帰ると八五郎だけに。そこで、葦をかき分け探すと得体の知れない骨が見つかったので、しめたとばかり酒をぶっかけながら、「オレの家は門跡様の前、八百屋の角を入って三軒目だ」と、しっかり住まいをアピールして帰って来た。これを陰で聞いていたのが悪幇間の新朝という男。てっきり女との逢引の約束だと思い、濡れ場を押さえ、いくらか金にしてやろうとたくらむ。その夜「どうもこんちは。

 しかし、けっこうなお住まいで。畳ボロボロ、障子桟なし、そして天井がないので、居ながらにして月見ができますな」と野太い声でヨイショをする男が。「お前は一体なんだ?」「新朝という幇間(たいこ)でゲス」「新町の太鼓? はあ、それじゃ、葦の中のは馬の骨だったか」

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