【江戸瓦版的落語案内】饅頭怖い(まんじゅうこわい)

Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE【ネタあらすじ編】
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
 暇を持て余した町内の若い衆が集まってバカ話。好きな物、嫌いな物をああだこうだと言い合っている。「アリが嫌い」「クモが怖い」とワイワイやっているとある男が「人は胞衣(えな)、つまりへその緒を埋めた土の上を初めて通った生き物を嫌いになるという言い伝えがある。蛙なら蛙が嫌いになり、蛇なら蛇のようにな。だから、何でそんなものが…と思うようなものを怖いと思うやつがいるのかも知れねぇ」。虫でも動物でも、とにかく嫌いなものは怖い。その話を黙って聞いていた松つあんに「お前は、どんなもんが怖い?」と聞くと「ない」と一言。なんかあるだろうとしつこく突っ込ンでも「ない」。「じゃ、ヘビは?」「あんなものは頭痛の時に鉢巻代わりにするね」とうそぶく。「アリは?」「赤飯にごま塩がない時にかけて食っちまう」「クモは?」「納豆に入れると糸の引きが良くなり実によろしい」とまったく引かず。「本当に何もないのか?」と聞くと、突然ワナワナと震え出した。「いけねえ、とんでもないものを思い出しちまった。そいつの名前を聞くだけで、体中総毛だって震えてくるようだ」と言う。「一体、それは何なんだい?!」「実は…饅頭が怖い!」「饅頭?!」一堂が驚いていると「多分、おれの胞衣の上に子どもが饅頭を落としたに違いない。蕎麦饅頭とか、腰高饅頭とか、上等な饅頭ほど怖いんだ! ああっ、こわいッ、こわいよォッ」ととうとう泣き出して、隣の部屋で寝込んでしまった。普段から松つあんのことを良く思っていない一同、この機会にひどい目に遭わせてやろうと、計略を練る。「名前を聞いただけであんなに震えるんだから、実物を見たらきっとひっくり返るんじゃないか。何? 死んじまったらどうしよう? 構うもんか。饅頭で殺して、アン殺だ」というわけで、菓子屋から唐饅頭、葛饅頭、栗饅頭、蕎麦饅頭、中華饅頭…とあらゆる饅頭を買ってきて、枕元に置いた。そして隣の部屋から起きろと声をかけると松つあん「ウワーッ」と絶叫。「うわあッ、こんなもの、だれがッ。こわいよッ。漉し餡だ、こわいよッ。こっちは粒餡だ、こわいよッ。怖いから早く目の前からなくさなきゃ」とと叫びながら、まんじゅうをムシャムシャ平らげ始めた。障子の陰で見ていた連中、だまされたと知ってカンカン。いっぱい食わされた。とんでもない野郎だ。「おい、お前が本当に怖いものは何だ?!」「今度は苦いお茶が一杯こわい」
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