時が経っても風化しないもの かさなる視点−日本戯曲の力− Vol. 3『マリアの首−幻に長崎を想う曲−』

 新国立劇場が今年3月から上演しているシリーズ「かさなる視点?日本戯曲の力?」のがラストを迎える。同シリーズは昭和30年代に執筆された日本戯曲の3つの名作を30代の気鋭の演出家によって上演しようというもの。

 今回は1959年に岸田演劇賞、芸術選奨文部大臣賞を受賞した田中千禾夫の名作。

 爆撃され被爆した浦上天主堂の残骸を保存するか否かで物議を醸していた終戦後の長崎。いつまでたっても結論の出ない市議会を横目に、原爆で崩れた浦上天主堂の壊れたマリア像の残骸を秘密裏に拾い集めて、なんとかマリア像だけでも自分たちの手で保存しようとする3人の女たちがいた。雪のある晩、最後に残ったマリアの首を運ぼうと天主堂に集まった彼女たちにマリアの首が語り出す…。

 戦争や被爆の体験を忘れようとする人々、その爪痕を残し記憶を風化させまいとする人々。さまざまな思いが詩的に、時に哲学的に描かれる。

 作品の上演の前に米国のシリアへの攻撃が起こってしまうなど、本作も観劇後に戦争についてなどいろいろと考えさせられることになりそうだ。
【日時】5月10日(水)?5月28日(日)(開演は10・11・19・26日18時30分、13?18・21?24・28日13時、20・25・27日13時/18時30分。※12日貸切、15・22日休演。開場は開演30分前)【会場】新国立劇場 小劇場(初台)【料金】全席指定 A席6480円、B席3240円/Z席1620円(公演当日、ボックスオフィスのみでの販売。1人1枚、電話予約不可)【問い合わせ】新国立劇場ボックスオフィス(TEL:03-5352-9999=10?18時 [HP] http://www.nntt.jac.go.jp/ )【作】田中千禾夫【演出】小川絵梨子【出演】鈴木杏、伊勢佳世、峯村リエ/山野史人、谷川昭一朗、斉藤直樹、亀田佳明、チョウ ヨンホ、西岡未央、岡崎さつき