江の島のシラス漁を応援するクラウドファンディング立ち上げ

民間からも心配の声

 2020年東京オリンピックでは神奈川県の江の島でセーリング競技が開催される。

 江の島は1964年の東京オリンピックでもセーリング競技が開催された、いわば「ヨットの聖地」ともいえる場所。
 今回の東京オリンピック・パラリンピックは2011年の東日本大震災から復興した姿を世界に示すこともひとつのテーマとなっている。その観点から「オールジャパン」という言葉のもと開催地の東京ばかりでなく日本全体でオリンピック・パラリンピックに取り組もうという動きになっている。

 実際、宮城県ではサッカーの予選、福島県では野球・ソフトボールの予選が行われ、東京近隣では埼玉県ではゴルフやバスケット、千葉県ではフェンシングやテコンドー、神奈川県ではセーリング競技などが開催される。

 しかし現在、その開催費用の分担を巡り、さまざまな問題が持ち上がっている。

 当初、仮設施設の整備費は組織委員会が負担することになっていた。それがその後の試算で費用が大きく膨らんだことから組織委がギブアップ。昨年末に都や開催自治体にも負担を要請することとなった。

 これに異議を唱えたのが自治体側。メディアを通じて各知事の意見が飛び交う中、5月9日に千葉、埼玉、神奈川の3県知事が首相官邸を訪問。安倍晋三首相に対し早期解決への協力を直談判した。

 一方、小池百合子東京都知事は当初の予定通り11日に安倍首相と会談し、費用負担問題で都外の競技会場の仮設整備費を都が全額負担すると表明。これで一件落着かと思いきや、今度は大会運営費の分担問題が浮上。

 24日には丸川珠代五輪担当相が仮設施設費以外の大会運営費を都外に競技会場のある7道県4政令市が400億円を負担することで都や大会組織委員会と大筋合意した旨を表明したが、神奈川県の黒岩知事は「大会運営費は東京都か大会組織委員会が持つべきだ」と反論。

 結局31日に開かれた関係自治体等連絡協議会で費用負担の大枠を合意した。ただし、焦点となっていた都外自治体の負担については、会場への輸送や警備などを担うとした「立候補ファイル」などに沿って費用を分担するとの原則を確認したが、具体的な負担金額などについては先送りした。

 大会運営費というのは開催時にかかる警備の経費や周辺事業者への補償といったものが含まれる。

 江の島の場合だと民間のヨットの移動費用や漁業補償を巡る問題が浮上する。

 江の島が「ヨットの聖地」というのは前に書いた。と同時に江の島はシラスの名産地でもある。

 シラスは衝撃や水質の変化に弱く、繁殖が難しい繊細な面があり、適切な環境や水質の保全が必要な食材。

 通常の競技だと五輪の前年に“プレ大会”が開催されることが多いのだが、セーリングの場合は自然を相手にするという競技の性質上、選手が競技会場を経験したいということで早い段階で“プレプレ大会”といった形で大会が開催される。
 江の島では来年の2018年9月にはプレプレ大会、2019年にはプレ大会が開催されるのだが、夏季はシラス漁の最盛期。大会開催中はもちろん漁はできないし、大会に先駆け定置網も撤去せねばならず、その補償額はかなりの額に上ると予想されるが、これについての細かい数字はまだ提示されてはいない。

 31日の連絡協議会で取りあえずの結果は出たが漁業関係者にとっても不安は残るところだろう。

 この状況をなんとか打開できないかという声は民間からも上がっている。そんななか「?シラスを食べて自分も江の島も元気に・美しく!?江の島SHIRASU2020」というプロジェクトが発足。現在クラウドファンディングの「Makuake」で賛同者を募っている。
 このプロジェクトの会長を務めるのが編集者でプロデューサーの白洲信哉氏。

 白洲氏は「僕は東京出身で鎌倉育ち。もともと鎌倉から高校で通った辻堂、そして茅ケ崎にかけてはなじみのある土地。なにより、父親がヨット関係の仕事をしていたので、このあたりには僕自身もよく納品に行っていましたし、初夏に友人のところに遊びに行くと、生きのいい生シラスを食べるのが楽しみでした。前回の東京オリンピックは僕が生まれる前のこと。今回は僕らが初めて生で見る東京のオリンピックなんだから成功させたいという思いもありますし、若い世代の方々に世界最高峰のスポーツイベントをちゃんとした形で見せてあげたいという思いもあります。今、お金の問題でゴタゴタしている印象もありますが、これは国とか行政に頼りっきりだったり、日本人特有の事なかれ主義というか現場に任せっ切りなところも原因のひとつなんじゃないかと思っています。やはりいろいろな人が関わりながら、開催する地方は地方で知恵を絞ってやらなければいけない。ある程度お金を出すというか関わることで当事者意識が生まれる。逆に全部任せっ切りにしていたら当事者意識なんて生まれないですよ。このクラウドファンディングは江の島のシラス漁を応援することが主目的ですが、それはきちんとした形でオリンピックを成功させることにもつながるし、関わるみんなが当事者意識を持って取り組むことが大事だということを考えるきっかけにもなればいいと思っています」と話している。
「江ノ島クラウドファンディングプロジェクト」

【プロジェクト詳細】 https://www.makuake.com/project/enoshima-tokyo2020/
【実行者 】「江ノ島クラウドファンディングプロジェクト」
・会長 白洲信哉
細川護熙首相の公設秘書を経て、執筆活動に入る。その一方で日本文化の普及につとめ、書籍編集、デザインのほか、さまざまな文化イベントをプロデュースする。2013年より月刊「目の眼」編集長。父方の祖父母は、白洲次郎・正子。母方の祖父は文芸評論家の小林秀雄。
・顧問 細川護煕(元内閣総理大臣)
・同  杉原佳尭(グーグル合同会社 執行役員)
【実施期間 】2017年5月30日(火)?2017年9月29日(金)18時
【資金の使い道】
・大会開催により影響を受けるというシラス漁などの応援費用
・ビーチクリーン活動の実施・支援
セーリング会場をめぐる主な動き

【2015年6月8日】
当初セーリング競技の会場に予定されていた東京都江東区若洲では羽田空港との関係で競技開催に支障があることから開催地が変更。神奈川県が江の島への招致に成功。

【2016年8月2日】
小池百合子新東京都知事誕生。膨れ上がるオリンピック・パラリンピックの経費の精査や開催地などにまつわる問題の洗い直しが始まる。

【2017年4月17日】
神奈川県とJOCがパートナー都市協定。

【5月9日】
経費分担問題で、関係する千葉、埼玉、神奈川の3県知事が首相官邸を訪問し、安倍晋三首相に対し早期解決への協力を要請。

【5月11日】
小池百合子知事が安倍晋三首相と会談。用負担問題で都外の競技会場の仮設整備費を都が原則全額負担すると表明。

【5月24日】
費用分担をめぐり、丸川珠代五輪相が東京都以外の自治体でも一定の負担をする方向で調整がついたと明らかに。小池知事は「作業の詰めをしている」と述べる一方、他知事からは丸川氏の発表に「合意した事実はない」などと批判の声があがる。

【5月30日】
費用分担問題をめぐり、東京都が都外に会場がある7道県の関係自治体に対し、負担総額を350億円と打診していたことが分かる。

【5月31日】
国、都、大会組織委員会、開催自治体の代表が集まり、経費の大枠を決める会合を開催。地方自治体の負担額に関しては「整理・精査」事項として決着を先送り。