“シカティック2世”プラチバットが初代ヘビー級王者に輝く【11・23 K-1】

「K-1 WORLD GP 2017 JAPAN ~初代ヘビー級王座決定トーナメント~」(11月23日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナ)で行われた初代ヘビー級王座決定トーナメントの決勝で第1回K-1GP優勝者ブランコ・シカティックの推薦選手アントニオ・プラチバットとイブラヒム・エル・ボウニが対戦。プラチバットが判定で勝利を収め初代王者に輝いた。

 日本勢は上原誠が1回戦でパコム・アッシにKO勝ちしたものの、他の3選手は1回戦で敗退。上原も準決勝でプラチバットにKO負けした。

プラチバット(左)の左フックがボウニを襲う(撮影・小黒冴夏)

シカティックが初代王者に就いてから24年。歴史は繰り返す。
 決勝はプラチバットvsボウニ。

 序盤こそボウニが強烈なフックを中心にプラチバットを追い込むが、プラチバットも左のボディーフックでペースを握る。ダメージの大きいボウニはマウスピースを吐き出すなどピンチを迎えるが、この中断で息を吹き返し、ラウンド終盤には連打で逆にプラチバットをKO寸前まで追い込んだ。しかし2Rに入ると試合のペースは完全にプラチバットのものに。プラチバットの左ミドル、左ボディー、右フックといつ倒れてもおかしくない攻撃を食らいながらも倒れないボウニ。トーナメントにかける執念を感じさせた。

 ガス欠気味でプラチバットのパンチを食らいながらも、逆に“当たれば倒れる”と思わせるパンチを繰り出すボウニ。壮絶な削り合いとなったが、3Rもプラチバットが手数で圧倒。ボウニはフラフラになりながらも立ち続け、試合は判定となったが、3者とも30-28でプラチバットを支持し、プラチバットが初代王者に輝いた。

 第1回のK-1GPでシカティックが初代王者に就いてから24年、まさに歴史は繰り返された。

プラチバットの右ハイキックで上原はダウンを喫した(撮影・小黒冴夏)

日本最後の砦、上原は準決勝で力尽く
 準決勝の第1試合は上原vsプラチバット。上原は左のボディーフックからの左フック、右ローキックで攻めるが、プラチバットは左ボディー、右フック、左ボディーとつないでからの右ハイキックで最初のダウンを奪う。

 プラチバットは立ち上がった上原になおも左ボディーの連打。ガードが下がる上原。プラチバットは上原をコーナーに詰めるとフックの連打。頭が下がったところに狙いすましたテンカオがズバリ。上原は2度目のダウンを喫し、プラチバットが1R2分9秒でKO勝ちを収めた。

ボウニ(右)の右フックがマナートに炸裂(撮影・小黒冴夏)

ボウニが2連続KOで決勝へ
 準決勝の第2試合はマナートvsボウニ。序盤からボウニのフックがマナートを襲う。マナートはローに活路を見出すが、そのローにパンチを合わせていくボウニ。1R中盤、ボウニはマナートのキックに左フックを合わせダウンを奪う。この時点で残り1分30秒。なおも豪腕フックでマナートに迫るボウニ。残り10秒、マナートの右ローキックにボウニが右フックを合わせるとマナートがぐらり。ボウニは追いかけ右フック、右アッパー、右フックと連打で畳み掛けるとゴングと同時にマナートがダウン。1R3分、KOでボウニが決勝進出を決めた。

【写真左】上原は1回戦はアッシにKO勝ち。順調な滑り出しだったが…【写真右】K-Jeeはプラチバットの前にほぼ何もできなかった(撮影・小黒冴夏)

K-Jeeは1回戦でプラチバットの前に撃沈
 1回戦の第1試合は上原vsアッシ。

 上原は1R、左ボディーからの左フックで1回目のダウンを奪うと、一気に試合を決めに行く。コーナーに詰めパンチの連打もアッシはがっちりガード。しかし上原のパンチは止まらない。ガードをこじ開けると、最後は右フックからの左アッパー。アッシはコーナーを背にし、崩れ落ちるようにダウン。1R2分40秒、KOで上原が予告通りほぼノーダメージで準決勝に駒を進めた。

 第2試合はK-Jee vsプラチバット。

 会見時から上原と舌戦を繰り広げてきたK-Jeeは何としても結果を残したいところだったが、気負いがあったか空回り。開始早々左ハイを放つが空振りしてスリップダウン。その時に下腹部をリングに打ち付けインターバルがとられる。再開後、プラチバットは右ローキックと左のボディーフックでK-Jeeを追い込む。なかなかペースを握れないK-Jee。プラチバットはK-Jeeをロープに詰めると左のテンカオから左ボディーフック、右ローキックとつなぎ最初のダウンを奪う。K-Jeeはなんとか立ち上がったものの、プラチバットは今度は左ボディーフックからの右ローキック。K-Jeeはうずくまるようにダウンを喫し、1R1分40秒、プラチバットがKO勝ち。こちらもほぼノーダメージで準決勝に勝ち上がった。

【写真左】岩下(左)もマナートにKO負け【写真右】KOICHIはボウニの前に玉砕(撮影・小黒冴夏)

KOICHIはボウニに秒殺KO負け。試合後引退表明
 第3試合は岩下雅大vsロエル・マナート。マナートは序盤は右の重爆ローキックで岩下を吹っ飛ばす。岩下も巨人対策の右ローキックで対抗するも、マナートは今度は左のミドルキックと左のボディーフックで岩下を追い込む。そして狙いすました左ミドルを岩下のボディーに打ち込むと岩下はうずくまるようにダウン。なんとか立ち上がるも、追撃の左ミドルからの左フックで2度目のダウンで1R2分47秒、KOでマナートが勝利を収めた。

 第4試合はKOICHI vsイブラヒム・エル・ボウニ。前日計量で一悶着あった2人だけに試合展開に注目が集まったが、KOICHIは真っ向から打ち合いに行く。ボウニも受けて立ち、いきなり激しい殴り合い。ボウニは左右フックを振り回しKOICHIをコーナーに詰めると最後は強烈な左フック。もろに食らったKOICHIはもんどり打ってダウン。レフェリーがカウントを数えることなく試合をストップ。1R20秒の秒殺KOで勝負を決めた。

 リザーブファイトでは愛鷹亮と古田太一が対戦。1R2分14秒、KOで愛鷹が勝利を収めた。愛鷹は左右のボディーブローの連打で追い込むと、最後は顔面への右フックで最初のダウンを奪う。立ち上がった古田を今度はロープに詰めて左右のフック。古田はたまらず2度目のダウンで決着した。

上原も引退を示唆
 試合後の会見では、KOICHIが「前から決めていたんですが、今日を持って引退します」と突然の引退表明。上原も「今後は…もしかしたらないかもしれません。決勝まで行けば続けるつもりはあったが、2回戦目でダメージがさほどない中で負けているようでは今後厳しいと思う。僕の中では今回が一番ベルトを取れる確率が高かったと思う。回を重ねるごとにもっと強い選手が来るようになり、今の選手の実力も上がってくる。今後続けても厳しいかな、と思う。やる前から思っていた。2回戦で負けているようじゃって。まだ誰にも話していないが、これから話し合っていきたい」と引退を示唆した。

 今後の日本のヘビー級はどうなってしまうのか…。