「受動喫煙防止条例」に物申す!緊急シンポジウム開催

 東京都が9月に公表した「受動喫煙防止条例(仮称)」の基本的な案は飲食店なども屋内原則禁煙で、例外措置は30平方メートル以下のバー・スナック等のみ、また加熱式たばこも対象になるなど、喫煙者だけでなく飲食店経営者にも厳しいものだった。またパチンコ店などは隣接自治体との事業環境の不均衡が発生するなど、新たな問題も浮上している。

 一方、11月には厚生労働省が、受動喫煙対策について店舗面積150平方メートル以下の飲食店での喫煙を認める新たな案を検討していることが報じられている。

 そんな中、喫煙文化研究会が緊急シンポジウム「たばこはそんなに悪いのですか?2017」を都内で開催。同会の代表を務める作曲家のすぎやまこういち氏、ジャーナリストの山路徹氏、須田慎一郎氏、経済学者の森永卓郎氏、参議院議員の石井苗子氏、現代史家の秦邦彦氏、弁護士の野中信敬氏が集まり、意見を交換した。このシンポジウムの模様を3回にわたってリポートする。

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まずは秦氏(左)が「法は家庭に入らず」という言葉を引用し口火を切った
現代史家の秦邦彦氏が口火。ジャーナリストの須田慎一郎氏は「この条例は法として欠陥がある」

 冒頭、秦氏がローマ法の時代からの法格言である「法は家庭に入らず」という言葉を引用し、10月に決まった「東京都の子供を受動喫煙から守る条例」の問題点を指摘。山路氏が法が家庭に入ってくるということに関して「密告制度がある北朝鮮を思い出す」と話すと、須田氏は「そもそも立法事実というものはなんなのか。立法事実そのものがないのではないか。そうなるとこの条例は法として大きく欠陥がある」などといきなり過激なスタートを切った。

 続いて会長のすぎやま氏が「狭い範囲での喫煙率と肺がん発生率の相関関係のデータは地域ごとにたくさんある。禁煙を主張する人はそういうデータの中から自分の主張に都合のいいものを持ってくる。しかし全国民の喫煙率と全国民の肺がん発生率は一つしかない。全国民の喫煙率はずっと下がっているが、肺がん発生率は上がっている。もし喫煙が肺がんの原因であるならその数字は下がるはず。2つには全く関係がない」と話すと石井氏が「喫煙者の権利を認めていない条例」、秦氏も「これは専門家ではなく素人が作ったもの」と一刀両断。野中氏は法律家の立場から「条文の字面を見ると、もしこれに罰則が付いたら、構成要件として全く不明確。努力義務といったところで、何の努力をどの程度すればいいかすら明らかではない。刑罰法制になったと仮定するなら刑罰法規には憲法31条で構成要件の明確性が求められるので、それには明らかに反する。いくらなんでも本当に罰則をつける時はもっとまともな条文にするでしょうが。今のままでは憲法上の原則に反すると考えます」条例の問題点をそれぞれ指摘した。

 厳しい意見が飛び交う中、会場の雰囲気を和らげてくれたのは森永氏。タクシー会社に「喫煙タクシー」を提案した時に「抗議で会社が倒産してしまう」と言われたエピソードを紹介しつつ「私がもう少しお金を持っていたら喫煙タクシーの経営をしたい」と話した。

参議院議員の石井苗子氏「禁止されているものではないのに、なぜ禁煙にならなければいけないのか」

 国会でも分煙についての議論は活発なのだが、石井氏は「この法案はなかなか通らないと思う。今ももめているし、1回通りそうになったが、タバコを吸っていい範囲が5倍くらいに広くなりました。差別ではなく区別してほしいという意見が通っているんだと思います。“吸える場所が欲しい、それだけだ”ということ。“禁煙って(いうが)、禁止されているものではないのに、なぜ禁煙にならなければいけないのか。禁止ってどういうことなんだ?”という論点なのだと思います。売っているものを“買うな”というのも変。税金も取っているのにおかしい。権利は誰が主張しているのかという話で、まことに情けない、バランス感覚がないということだと思います。差別ではなくて区別すればいいのだと思います」と見解を述べた。ちなみに石井氏はタバコは吸わない。
司会を務めたジャーナリストの山路徹氏
ジャーナリストの山路徹氏「半ば義務のように迫ってくる国の姿勢に違和感」

 こういった国の姿勢について山路氏が「健康増進法という法律がある。国民の健康のことを考えてくれるのは基本的にはありがたい話ではあるものの、その中に国民は健康であるように努めなければいけない、と半ば義務のような形で法律が国民一人一人に健康でなければいけないんだ!と迫っている。これにすごく違和感を覚える」と問題提起すると須田氏も「恐らく今の喫煙者はどこでも吸わせろ!とは思っていない。子供の前では控えるというのは普通のありようだと思う。そこに法律が入ってくるということにものすごく違和感を覚える。だからきちんと線引きを明確にすることがこの喫煙問題になじむのかどうかということもよく考えてみるべき。この問題が政治問題化してきている。国民の健康を真っ先に考えて議論をするならまだしも、これを使ってうまい具合に政治的に立ち回ってやろうという、そういう発想があるのではないかと思う」と続けた。

経済学者の森永卓郎氏は「国会中で喫煙者いじめをしているというひどい政治状況」

 この政治家の動きについて森永氏は「自民党税調と政府の税調がたばこひと箱あたり60円増税すると言っている。しかも4年間かけてじわじわ増税すると。表向きは3000億~4000億の増収になるから財政を健全に保つために必要ということになっているが、たばこを増税してもタバコをやめる人がどんどん増えて結局税収は増えない。それは財務省も分かっている」と経済の視点から説明。そして「でもなぜ自民党が(増税を)やろうとしているかというと、やはり希望の党が怖いから。自民党も小池さんと一緒に喫煙者いじめに回れば、自民党が喫煙者の見方という批判を受けなくてすむ。定価改定はとてつもない作業が必要なのだが、なぜ4年もかけてやるのかといえば4年間にわたって喫煙者をいじめ続けられるから。自民党に希望の党、国会中で喫煙者いじめをしているというひどい政治状況」と話すと、石井氏は「政治家は物事を解決しようとして話をしているわけではない。自分が何をしたかということを示したいだけ。国民の健康を考えるとか、そういうことを真面目に解決したいとかいうことは何も考えていない。何をやったかということを示したいだけ」とこの問題に関する政治家の姿勢を批判した。

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