【インタビュー】織田裕二が語る“正義の難しさ”

SPECIAL INTERVIEW『連続ドラマW 監査役 野崎修平』

 WOWOWの連続ドラマWシリーズに、織田裕二が『連続ドラマW 株価暴落』に続き再びバンカーとして登場! 原作・周良貨、 漫画・能田茂による経済漫画を豪華キャストでドラマ化した注目作。正義を貫くため奮闘する主人公・野崎修平を演じた織田が語る“正義の難しさ”とは?

撮影・上岸卓史 ヘアメイク・須田理恵 スタイリスト・大迫靖秀 衣装協力・ポロ ラルフ ローレン(0120-3274-20)

 主人公・野崎修平は訳あって出世街道から外れていたものの突然、監査役に任命され銀行の不正を徹底追及すべく行内の抵抗勢力に挑んでいく、正義の男。「大変ですよ、真っすぐしか投げられないから(笑)」と演じる織田本人も苦笑する。

「台本を読んだときから、これは大変だぞと思いました。カープだのスライダーだのといった変化球を持たずに、腹に一物を抱えたエリートバンカーから総会屋、果ては使うエレベーターも別という殿上人である頭取までを相手にしなきゃいけないんですから。しかも社会派作品に定評のある連続ドラマWですからリアリティーも求められる。これは並大抵じゃないぞ、と(笑)」

 こういう学級委員タイプは苦手なんです、と織田。

「僕自身は男子校出身で仲間とバカやっているのが楽しいタイプでしたから(笑)。野崎ときたら、年ごろの娘やできた奥さんがいるのに、裏社会の勢力にも立ち向かおうとしますから。本当はおいしい話があればそっちに逃げ出したいでしょう。でも野崎は不正や不条理を見過ごすことができないんですよね」

 物語の舞台はバブル経済崩壊後、混沌にゆらぐ巨大銀行。クセのあるエリートバンカーが次々と野崎の前に立ちはだかる。

「古谷一行さん演じる頭取は一切腹の内を見せないし…古谷さん自体とんでもないですけどね、相当な量のセリフ量を連日平気でこなしていて。他にも岸谷五朗さん演じる、こんな銀行マンが本当にいるのかと思うくらいクセのある専務・武田、松嶋菜々子さん演じる“悪女”ともいわれる女性初の支店長・立川祥子、ユースケ・サンタマリアさん演じる元部下で今は上役の阿部…こんな海千山千のバンカーに直球が通じるわけがない。正論で立ち向かったって勝ち目なんて無いはずなんです」

 確かに勝ち目は無さそう…。

「でも裏を返せば、みんなクセ者なので餌をぶら下げると意外と弱かったりするんです(笑)。野崎は逆。餌をどれだけぶら下げても間違っていることに対してうんと言わない。野崎には数字の向こうに人が見えているんです。支店長時代から街の人々と交流を持って、どんな人にお金を貸しているかも把握していた。不良債権の山に放り込まれても、数字を見るとそこから困っている人の顔が浮かんでくるんでしょうね」

 直球勝負で愚直に挑む姿に、いつしか周囲の人々も、そして視聴者も野崎に引き付けられていく。

「演じるほうは辛くて大変ですけどね。正義の役って大変なんです。悪役のほうが絶対に楽しいですよ(笑)。一番辛いのは主役で、良い人で、まじめな人。これより難しい役はコメディーくらいかな。“良い人”とレッテルをつけられると人は“大して良い人じゃないじゃん”って言いたくなるじゃないですか。まあ、十分良い人なんですけどね。ただ、敵に回すと面倒な人かもしれません。野崎なりの変化球を出すこともあるので」

 そんな“良い人”に味を持たせた織田の役作りとは。

「僕はどちらかというとこういう優等生タイプは苦手。しかもモテそうだし(笑)。なので演じるうえで、原作から受けた印象を少し落としました。そこまで素敵でも軽やかでもなく、地べたを這いずり回っている愚直な男にしました。まあ女性の好感度は下がったかもしれないけど…(笑)。ただ、現実に日常のなかで自分が不条理に出会うことって誰にでもありますよね。そういう悔しさを感じたことのある人はぜひ見てほしい。そういう人が応援してくれたらうれしいなというのがあります」

 本作では松嶋菜々子やユースケ・サンタマリアと久しぶりの共演も。

「祥子役ができるのは松嶋さん以外にないんじゃないかと思います。ほとんどどんな人物かが語られていないのにちょっとした表情で、女性初の支店長で役員となった、一筋縄ではいかない女性を表現しなきゃいけない。上背もあるので僕らと並んでも戦える人、という説得力がありますしね。それでいて女性らしい柔らかさも見せたり。権野監督も演出しながら“悪い女だなあ”と喜んでいました(笑)。阿部の役はユースケで本当に良かった。野崎と阿部はかつて先輩後輩だったのが今は立場が逆で、過去に因縁のある複雑な関係。ユースケは阿部を好かれるキャラクターとして演じていないんですけど、僕はずっとその奥に“本当の阿部”がいるような気がしていて。阿部を演じていたのがユースケだったからこそじゃないかと。それが複雑な関係に説得力を持たせることができたと思います。現場では相変わらず、カットがかかるとくだらないことをしゃべりだすんです(笑)。でもそれが、とくに撮影入ってすぐの状況でみんなの緊張をほぐしてくれて、本当に感謝しています」

 野崎が少しずつ味方を得、抵抗勢力の牙城を切り崩していく姿は社会派でありながらエンターテインメントとしても見ごたえあり。

「役者陣も華やかですからね。銀行だ不良債権だというと難しく思えるけど、そんな仕組みを知らなくても楽しめる作品にはなったな、と思います。次回、彼らと共演するときには変化球を投げられる役でご一緒したいですけどね(笑)」

(本紙・秋吉布由子)

「連続ドラマW 監査役 野崎修平」
1月14日(日)スタート[第1話無料放送]
WOWOWプライムで毎週日曜よる10時より放送(全8話)
http://www.wowow.co.jp/dramaw/nozaki/