伊勢谷友介「“働くこと”が人類の未来につながる社会を」

「人類が地球で生き残る」ための社会課題をビジネスに
「人類が地球に生き残るにはどうするべきか?」という問いに真剣に向き合おうとしたとき、伊勢谷さんが選んだのは“起業”という道だった。俳優として映画やドラマなど幅広い舞台で活躍する一方、一人の人間として人類の未来のためにできることをしたい、という思いをビジネスとして実現しようとした背景とは。そして社会起業家にこそ必要な視点とは。
伊勢谷友介(いせや ゆうすけ) 1976年5月29日生まれ。東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。同大学院美術研究科修士課程修了。大学在学中からモデルとして活動、1999年に映画デビュー。以降、俳優として幅広く活躍。2008年にリバースプロジェクトの活動をスタート。翌2009年に株式会社リバースプロジェクトを設立。制服のエシカル化を目指す「全日本制服委員会」、社会起業家を育てる「松下村塾REBIRTH PROJECT」、食品ロス削減に取り組む「“E”REGULAR FOOD」など、社会課題に挑むプロジェクトをビジネスにつなげている。
 社会貢献に参加する俳優は少なくないが、伊勢谷さんはなぜ自ら社会起業家となったのか。

「2002年に映画の監督作を発表したころから、社会のあり方を強く意識するようになりました。そこで浮かんだのは“人間は何のために生きているんだろう”ということ。生物として考えるとその答えは“種の存続のため”になると思います。人は人生の多くの時間を“働く”ということに費やしているけれど、それは本当に“種の存続のため”という人類本来の目的に沿っているだろうか。ビジネスや政治、どのカテゴリーでも、その目的に向かっているだろうかと考えてみると…決してそうではないですよね。一生懸命働いた結果が環境破壊につながってる現状に危機感をもちました。それなら僕自身の生き方はどうあるべきかと考えたとき“人類の存続”を目的とするビジネスに挑戦したいと思ったんです。いろいろ考えましたが、やはり多くの人に参加してもらえるよう株式会社化することを決めました。メンバーに藝大の仲間が多いこともありクリエイティブな仕事が多いですが、デザイナーやクリエイターありきではなく、あくまで僕らは社会課題を解決するアイデアを見つけ、それをときに外部のデザイナーらと組んでビジネスにつなげる形をとっています」

 立ち上げたプロジェクトは企業や自治体と連携するものも多い。

「この10年で社会の意識も少しずつ変わり、僕らが掲げた理念を理解してくれる自治体や企業も増えましたし、現在は国連も持続可能な開発目標(SDGs)を掲げています。現在、立ち上げから9年が経とうとしているのですが会社としての成長率はまだまだ低い。社会は変化の時を迎えていて、ここで成長していかないといけません。僕らはこれまで衣食住の分野を主体に、さまざまなプロジェクトで実績を積み上げてきました。今では一緒にプロジェクトに挑んでくれる団体や企業の幅もずいぶん広がりました。衣食住のうちの“食”としては、企業や自治体と連携しフードロス問題に取り組む事業を昨年スタートさせました。現在、畑では1〜5%の規格外野菜が出るといわれています。このプロジェクトでは東京促成青果さんと提携して高知県産の規格外野菜を加工食品として東京の社員食堂などにリーズナブルな価格で卸し、売上金の一部をフードバンクや子ども食堂に還元しています。“衣”では、以前から2020年までに1000万人の雇用制服を環境配慮型へと変えていくことを目指す全日本制服委員会というプロジェクトを続けています。世界中からの注目が集まるオリンピック・パラリンピックのような機会にもエシカル素材のユニフォームが活躍してくれればいいなと思っています」

 社会の機運を先読みした社会起業家として苦労は大きかったはず。

「人類存続のため持続可能な社会を、という理念を掲げて会社を立ち上げはしましたが、理想と現実の差を痛感することは幾度もありました。当初は、斬新なアイデアを放てばそれが必殺技のように社会を大きく動かすような気がしていました。でも現実の社会はなかなか変わらない、動かない。何とか10年踏ん張って、ようやく社会の意識の変化を手ごたえとして感じることができるようになりました。起業のタイミングとしては早かった気もするけど、いち早く立ち上がったことは無駄ではなかったし、僕自身、社会起業家こそ現実的な視点を持たないといけないことを、身をもって学ぶことができました。冷静に、自分たちの現実的な能力と社会を照らし合わせることが大切だと思います。その上でこれからもブレることなく、積み上げてきた実績をさらに育てて成果を上げていくつもりです」
Company Profile
株式会社リバースプロジェクト

【代表】伊勢谷友介
【共同代表】龜石太夏匡
【所在地】〒107-0061 東京都港区北青山2-12-35
【URL】http://www.rebirth-project.jp/
【設立】2009年5月
【資本金】1000万円
【社員数】10名
【事業内容】社会性関連事業(プロジェクト)企画、運営、イベント事業、クリエイティブ制作事業
【沿革】
2008年 リバースプロジェクト発足
2009年5月 株式会社リバースプロジェクト設立
2011年4月 東日本大震災を機にクラウドファンディングサイト「元気玉プロジェクト」を設立
2011年10月 一般社団法人リバースプロジェクト設立
2011年12月 「元気玉プロジェクト」を通じて福島県飯館村で卒業式を実施
2012年2月 株式会社リバースプロジェクト発足の原点となった小説を伊勢谷友介が映画化した、「セイジ〜陸の魚〜」劇場公開スタート
2014年1月 制服のエシカル化を目指す全日本制服委員会発足
2016年2月 国産規格外野菜の普及を目指す一般社団法人日本和菜に参画


起業をする人・考える人への応援メッセージ
理想を掲げれば必ず現実との差を感じるもの。
ブレずに理念を追うためにも、現実を見極める目を忘れずに
伊勢谷友介

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