変貌するアジア太平洋地域と日本の安全保障(その拾)【長島昭久のリアリズム】



 これまで述べてきたような戦略環境の変化に対応するために必要なことは、第一に、世界第3位の経済大国である日本が、アジア太平洋における平和と安定と繁栄の確立に積極的に関与することです。第二に、その関与をより強固なものにするため、日米同盟の深化を通じ戦略的な勢力均衡を確保し、域内における国際秩序を再構築すること。第三に、同じ海洋勢力である豪州、台湾、インドネシア、シンガポールなどとの緊密な連携をどこまでレベルアップできるか真剣に模索することです。

 まず、日本がここ数年で取り組んできた安全保障をめぐる7大改革を概観します。第一は、国家安全保障会議の創設。これは、米国のNSCなどのカウンターパートとして、日本の安全保障戦略を構築し関係省庁を統括する司令塔です。第二は、秘密保護法制の整備。これにより、米国との情報共有は飛躍的に高まりました。第三は、防衛装備品輸出の緩和。豪州との潜水艦共同開発・生産は実現できませんでしたが、今や米国のみならず英国、インド、フランス、イタリアとの共同開発の可能性が広がっています。第四は、国際平和協力や安全保障分野への政府開発援助(ODA)の柔軟活用です。それまでは安全保障に関わるODA拠出は禁じられていましたが、これによってフィリピンやマレーシアへの練習機や哨戒機の供与に道が開かれ、東南アジア諸国の海上警察・洋上監視における能力構築を直接支援できるようになりました。

 さらに、第五に日米防衛協力のためのガイドラインの再改定、第六に集団的自衛権の(限定的)行使を容認する閣議決定、第七に安全保障関連法制の包括的な改正です。これらを通じて、日米は、少なくとも西太平洋においてはほぼ相互防衛の体制がとれるようになりました。最近でも、海上自衛隊の護衛艦等が、朝鮮半島をめぐる強制外交の一環で活動するカール・ヴィンソン空母戦闘群の護衛任務に就いたことが耳目を集めました。また、能力向上著しい北朝鮮のミサイルによる飽和攻撃に対しても、日米のミサイル防衛システムはリアルタイムでの情報共有・指揮統制リンクによって、渾然一体となった迎撃対処が可能となりました。

 今後の最大の課題は、いかにして日本の防衛費を増やせるかです。重点を置くべきは、第一列島線を死守するための日本版A2AD戦力の増強でしょう。それには、第一に地対艦ミサイルの能力向上、第二に潜水艦戦力の拡大、第三に敵基地への反撃能力を含む統合防空ミサイル防衛(Integrated Air and Missile Defense, IAMD)能力の増強が必要です。数字の上でも、日本は2004年に国防費で中国に抜かれ、2020年には6倍、2030年には10倍の差となる計算です。したがって、日本の防衛力整備についても、独自の努力を真剣に考える必要があります。少子高齢化に伴う社会保障経費が増大する中であっても、わが国として必要な防衛費を捻出する政治的覚悟を持たなければなりません。
(衆議院議員 長島昭久)
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【長島昭久プロフィール】
東京21区(立川市、昭島市、日野市)衆議院議員。元防衛副大臣。慶應義塾大学で修士号(憲法学)、米ジョンズ・ホプキンス大学SAISで修士号(国際関係論)取得。現在、衆議院文科委員会委員、子どもの貧困対策推進議連幹事長、日本スケート連盟副会長兼国際局長、本年6月より日本体育協会理事